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ペトリコールに融けるふたり  作者: 白い黒猫
ペトリコールに融ける二人

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58/60

融ける二人

 私は泣きながら謝り続けるマイちゃんに手を伸ばし抱きしめる。

 幼い子供を宥めるように。窓の外からは、土砂降りの雨の音がする。


「マイちゃん困った子だね。泣いてたら分からないよ。何故こんな事をしたの? 教えて。

 何か理由あるんだよね?」


 私は優しくマイちゃんに聞く。

 離れて、マイちゃんは私の顔を恐る恐る見上げる。そして覚悟を決めたように口を開く。


「あの男は、多分今日、新たなるルーパーとサブルーパーを生み出すつもりだと思ったの……」


 私は相槌を打つ。

 眞光は私達に言った事を間違いなく本当に実行するだろう。


「多分今日の検証は……複数の核候補をそれぞれ少しづつ異なる条件の場所に配置することで、現象はどの条件の人物に引き寄せられるか……」


 その実験にマイちゃんは協力したという事だろうか? 


「その条件は核候補の立場、場所、それに加えてサブルーパの条件を確定……」


 そこまで言ってマイちゃんは顔を上げ私をまっすぐ見つめてくる。


「アイツはサブルーパーの条件をもう気づいているし」


 サブルーパーの条件? 私はリストを見てもそれは見つけられなかった。でもマイちゃんはそれに気がついていたというのだろうか?


「ちょっと待って、サブルーパーの条件って?」


 マイちゃんは、離れて自分の鞄から眞光が渡してきた資料を示す。

 私はその資料に違和感を覚える。前にマイちゃんが清書してテキストとして入力して送ってきた資料と何か違うような気がした。

 そうだ、ある部分の数字が私に送られてきたものと違っているんだ。


「ずっと気になっていたんです。何故月代さんの年、近くに11日生まれが二人もいたのに巻き込まれなかった。それでこの資料を見たら……」


 この資料の一番の謎は2026年の事故に巻き込まれた人の存在。性別と大まかな年齢しかわかっていない筈なのに、7月11日生まれと明記してある。

 何故眞光は謎の人物の誕生日だけを記してきたのか。

 この資料をサブルーパーだけ見ているとその繋がりが簡単に見える。同時に何故2026年のルーパーの誕生日だけ分かったのか。

 眞光が何故マイちゃんが事故に巻き込まれなかったのかと執拗に聞いてきた理由も。

 2025年のサブルーパーと思われる佐竹愛花は6月11日生まれ。謎の人物の誕生日は7月11日、そしてマイちゃんは8月11日。それ以前の巻き込まれた11日生まれを見てみても月が順番に繋がっていた。


「そういうことか……」


 マイちゃんが恐れた理由が見えてくる。


「次のサブルーパーが生まれてしまうと、私はサブルーパーの資格をしばらく失ってしまう。その状態であの男が何か仕掛けてナオコさんが現象に巻き込まれてしまったら一人で行かせてしまうことになる……だから……」


 そう言ってから私の顔をチラッとっみる。


「怒ってますよね。やっぱり」


 私はその言葉に頷く。


「もちろん怒っているよ」


 私はそこで一旦言葉を切り、マイちゃんをまっすぐ見つめる。


「一つは私に隠し事をしたこと。

 もう一つは、私を信じてくれなかったこと。

 この二点に関してだけ物凄くムカついている」


 マイちゃんは驚いた顔をする。


「え。 だって私ナオコさんを危険な目に……」


 私はまいちゃんの頬を包むように手のひらを当てる。


「私もそこまで悩んでいたマイちゃんに気付いてあげれなかったのは申し訳ないと思うよ。

 でも、相談して欲しかった、それで一緒に悩んであげたかった」


 私たちは二人はギリギリのところまで来てしまっている気がする。

 マイちゃんは【私を一人にしないため】と表向きの言葉を言っているが、それはマイちゃんの深く強い欲望によるもの。

 現実世界では、マイちゃんはいつも不安に揺れていた。

 現象に囚われてしまう危険だけでなく、私が彼女以外の人間と交流していると、心をざわめかしていた。

 そして私だけをひたすら求めている。

 こんなことされても、そこまで私を求めるマイちゃんの行動にゾクゾクと心が震え興奮している自分もいる。

 狂って廃人になったルーパーは、おそらく何だかの心の逃げ道を失い、満たされない心と感情を爆発した結果なのだろう。

 だったら、マイちゃんの心は、私が愛で満たしてあげれば良い。それで守れるだろう。


「ナオコさん……」


「もう、隠し事はダメだからね。ここだと二人きりなんだから、秘密は必要ないよね?」


「はい! もちろんです!」


 マイちゃんはさっきまでと違って安堵の涙を流し、私に抱きついてきた。

 マイちゃんを抱きしめ、その頭を撫でながら思う。

 現実世界において、7月11日11:11:11の謎を世界に問いかけた作家が、7月11日11:11:11に謎多き死を遂げた。

 これはこれで面白い物語なのではないかと。

 “時雨結という作家の人生“という物語を、最高のエンターテーメントとして世界に放つことができた。

 私は単なるラノベ作家ではなく、ある意味伝説を残した作家になれた気もする。


「まず、何しようか?

 とりあえず今回の事故について調べようか?」


「はい! でも巻き込まれないようには気をつけないとダメですよ!」

 二人でこれからの事について楽しく話し合った。


 これから、二人だけの物語を描き上げるために。



挿絵(By みてみん)

あと一話で、この物語は完結します。

明日の17時に更新になります。

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