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ペトリコールに融けるふたり  作者: 白い黒猫
鏡合わせの未来

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死の乾杯

【速報】アニメ『悪役令嬢と11人の詐欺師』コラボカフェで爆発事故 声優・月代零さんが死亡。

 7月11日午前11時11分ごろ、東京都渋谷区のコンセプトカフェ「Café des Mensongesカフェ・デ・モンソンジュ」で爆発事故が発生した。

 この事故で、アニメ『悪役令嬢と11人の詐欺師』のプロモーション撮影に参加していた声優・月代零つきしろ・れいさん(27)が死亡したことがわかった。

 警視庁によると、当時店内では、同アニメの人気キャラクター“ロザリア・スカーレット”の声を担当する月代さんと共演声優によるPR撮影が行われていたという。

 このお店では、作中で登場人物たちが詐欺の成功を祝って「乾杯!」と声を上げる名シーンを再現したもので、カフェでは毎時11分になるとキャラクターの音声で乾杯の合図が流れる趣向が人気を集めていた。

 当日は、最終シーズンのPRを兼ねた特別撮影が行われており、開店後にはサプライズとしてキャラクターの扮装をした月代さん本人による“生の乾杯パフォーマンス”が披露されていた。

 しかし午前11時11分、乾杯の音声が響いた直後、店内奥のスモークマシンが爆発。天井の一部が崩落し、複数のスタッフや来客が重軽傷を負った。


「乾杯の声が響いた直後、“ドン”という爆音がして、何かが弾け飛んだ」(来店客)


「演出の一部かと思った。まさか本当に事故だとは」(別の来場者)


 関係者によると、爆発の直前に照明機器の電圧が不安定になっていたとの証言もあり、警視庁は電源系統のトラブルの可能性も視野に調べを進めている。

「Café des Mensonges」は、故・天環そら・たまき氏原作の人気アニメ『悪役令嬢と11人の詐欺師』の世界観を再現した期間限定店で、SNS上でも話題を呼んでいた。

 だが皮肉にも、この事故が起きたのは――原作者・天環氏が亡くなったちょうど1年後、同じ“7月11日午前11時11分”だった。

 関係者の一人は静かにこう漏らした。


「まるで、彼女(天環)が誰かを呼び戻したみたいだ──」




 私はその記事を読んで、深く息を吐いた。

 そうだった。私たちがループから抜け出しただけで、この現象そのものが世界から消えたわけではない。

 マイちゃんも神妙な顔でスマホの画面を見つめている。

 私はLINEを開くと、そこには月代零とのやりとりが残っていた。

 昨年、あの日に死ななかった私は、彼女と交流を深めていたらしい。

「記扉(記憶の扉と11の鍵)」の収録スタジオに差し入れを持って挨拶に行ったのをきっかけに、時々お茶をするようになっていた。

 彼女が無邪気に作品やキャラクターへの愛を語る姿は、本当に可愛らしかった。フォルトゥナの声を演じるときの、あの嬉々とした表情を思い出す。


「『記扉』のアニメ、まだファーストシーズンなのに……」


 マイちゃんが眉を寄せ、ぽつりとつぶやく。

 そうか。もう一つの記憶では、マイちゃんと月代さんは面識がなかった。だから一般的なファンのような言葉が自然に出るのだろう。

 私もつい、「シリーズ途中で主演交代は痛いな」と思ってしまったから人のことを言えない。

 二人とも“月代零はルーパーとして生き続けている”ことを知っているからこそ、その死を悲しみきれないのかもしれない。




【続報】『悪詐欺』コラボカフェでの爆発事故 主演声優・月代零さん死亡か 演出装置の誤作動の可能性も

 2029年7月11日午前11時11分ごろ、東京都原宿の人気アニメ『悪役令嬢と11人の詐欺師』(通称:悪詐欺)のコンセプトカフェ「Café des Mensonges」で爆発事故が発生した。

 関係者によると、事故では主演声優・月代零つきしろ・れいさん(27)を含む複数名が巻き込まれ、店内の一部が焼損。少なくとも3名が負傷し、うち1名が心肺停止の状態だという。

 事故当時、店内では「11時11分に乾杯!」という定時演出が行われており、声優によるキャラクターボイスと連動して、照明とスモークが作動する予定だった。

 しかしこの日は、通常より強い光と煙が発生し、装飾の一部に引火した可能性があるという。


「いきなり“パーンッ”という音がして、白い煙が一面に広がった。


 乾杯の掛け声と同時に、光が爆ぜたように見えた」(来店していた20代女性)


「最初は演出の一部かと思った。みんなスマホを構えていたけど、すぐに悲鳴が上がって……。


 スタッフが“逃げてください!”と叫んでいた」(同席の男性)

 警視庁は、店内の電装系統および演出制御システムに不具合がなかったかを調べている。




 ■ 亡くなった原作者との“奇妙な符合”

 このアニメの原作者・天環そら・たまき氏も、ちょうど1年前の同日・同時刻に急逝している。

 偶然にも今回の事故は、その一周忌と完全に重なっており、SNSでは


「悪詐欺、また“11時11分”……」


「この時間に乾杯の演出は不謹慎では?」


「まるで天環先生の呪い?」


 などのコメントが相次いでいる。


 カフェ関係者は、「“毎時11分に乾杯”の演出は、天環氏の亡くなった時刻を揶揄したものではなく、物語世界を盛り上げるための企画だった」と説明している。



 ■ 関係者の証言


「月代さんは天環先生の作品とロザリアのキャラクターを心から愛していました。

 今回の撮影も“集大成としてロザリアを華々しく演じたい”と参加していたんです」(制作スタッフ)


「カフェのスモーク装置は新品で、先週点検したばかり。


 電源系統のトラブルか、外部要因か……現時点では原因不明です」(店舗関係者)




 ■ ファンの間で広がる動揺と祈り

 SNSでは「月代さん、無事でいて」「11という数字が怖い」「これは現実なのか」といった投稿が相次いでいる。

 天環氏の死から続く“11時11分の連鎖”に、不気味さを感じる声も少なくない。

 警視庁と消防は、現場検証を続けるとともに、発火源および安全管理体制に問題がなかったかを調べている。

 ネット上では、「人気者が2年連続で、同じ日・同じ時刻に亡くなった」という偶然に、7月11日11時11分という数字が異様な注目を集めていた。



 ふとテーブルの上に置いていた手を、マイちゃんがそっと握ってくる。

 予測していたとはいえ、ループ世界で何度も会った人の事故を目の当たりにして、ショックを受けているのだろう。


「ナオコさん、そんな顔をしないで。ナオコさんには私がいますから。私が横にいますから」


 まっすぐな視線でそう言うマイちゃんが、なんだか可愛くて、私は苦笑した。


「連続して起きている“7月11日11時11分”という現象が、思った以上に世間の注目を集めているなと思って」


 私が悩んでいるのは、彼女の死そのものじゃない。

 マイちゃんは目を見開き、私を見つめる。暗い感情は、もうその瞳にはなかった。


「つまり……騒がれれば騒がれるほど、この現象に関する情報も集まるってことですね?」


「そういうこと」


 感心したようにマイちゃんが頷く。


「ナオコさん、さすがです!」


 私は加留間遥のXを開いた。そこにはこう書かれていた。


【今日の11:11は、もともと“事故が起こりやすい時刻”。個人の呪いではなく、ただの現象にすぎない】


 私は短くDMを送った。


【加留間遥さま。初めまして。貴方のアドバイスのおかげで、私はループから抜け出しました。ありがとうございました。人生を取り戻せました。】


 本当はもっと聞きたいことがあった。

 でも、まだ正体の見えない相手にいきなり“会いたい”と言えば、警戒されるだろう。

 私はその想いをひとまず胸にしまい、スマホを置いた。

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