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ペトリコールに融けるふたり  作者: 白い黒猫
未来を創る

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セカンドミッション

 時田からの連絡は11時38分。思いのほか早いタイミングで来た。


[あっ、あの……結さん、これはどういうことですか!?]


 礼儀正しく穏やかな時田らしくなく、挨拶もなく慌てたような声だった。


「時田さん。おはようございます。お電話いただけて嬉しいです」


 私は冷静に返し、オンラインで話したいと会議室に誘った。

 画面に映った時田はカジュアルだが、スーツ姿で、背後はグレーの無機質な壁だった。


「ご連絡ありがとうございます。……あら? もしかして出先ですか? 大丈夫ですか?」


 時田は落ち着きを欠き、こちらを縋るような表情をしている。動揺しているのだろう。


[今日は定例会議があったので会社に来ていました。ここはオンライン打ち合わせ用の部屋なので問題ありません! 大丈夫です!]


【時田氏 現在 株式会社undecim 東京都千代田区ーー】


 マイちゃんが情報をテキストで流してくれる。


[あの、結さんは何故事故のことを……]


 まあ、私のパソコンのカメラでは両隣にいる佐藤と土岐野は映らない。時田が疑問もなく私と会話できているということは、やはり見えていないのだろう。

 試しに土岐野が「こんにちは。私は土岐野廻と申します」と声をかけても、完全にスルーされた。ならば私が話を進めるしかない。


「メールでお伝えしたように、私はもう何度もこの日をループしていて……今日何が起こるのか分かっているんです」


 私は冷静に、やや声を低めに抑えて話す。散々接触した自称霊能者から学んだことは、とんでもない話をするときは、早口でまくしたてるより、静かに落ち着いて伝えた方が効果的だということだ。


[な、何故そんなことに……]


 動揺している相手ならなおさら。こちらが変にテンションを上げると、逆に冷めてしまうか、余計に動揺させて言葉が入らなくなりそうだ。


「実は、あのELEVENタワーの事故の時、4階の喫茶店にいて巻き込まれた後から、こうなっています」


 時田の眼鏡の奥の瞳が見開かれる。


[そ、そんな……と、ということは結さんは……どうすれば貴方を救え……]


 私はゆっくりと首を横に振った。いちばんに私の事を案じてくれるところは優しい人だと思う。


「それは分かりません。ただ、それより大事なのは、時田さんもこの現象に巻き込まれる可能性が高い、ということです」


 さらに衝撃を与えるような言葉。なんだか悪徳エセ霊能者のようで少し嫌になる。


「現象の仕組みなのか、呪いなのかは分かりません。ただ、この現象は毎年11月11日生まれの誰かが対象となって起こっているんです」


 時田は私の言葉に固まった。


「時田さんも、誕生日は11月11日ですよね」


 問いかけると、彼は慌てたように何度も頭を縦に振る。

 そして我に返ったのか、パソコンのキーボードを叩き始め、別ウィンドウで何か作業をする。


[た、確かに連鎖している……日廻永遠、佐藤宙、土岐野廻、十一残刻、不死原渉夢……彼らも?]


 AIで調べたのだろう。しかし余計なことを。こちらが隠していた名前まで提示してしまっている。

 土岐野が自分のパソコンに手を置いてくれたおかげで、ルーパーズ会議の様子も見える。新たな名前に、皆がざわついていた。


『君たちは、知っていたか?』


 永遠の問いに、マイちゃんは【え? お話ししてませんでしたっけ? 言ったと思うのですが】とうまく惚ける。


「ごめんなさい! 僕は聞いていました。ただ、前回はいろんな展開がありすぎて……報告を忘れてました!

 それに加えて、僕の次の年のルーパーも二人見つかっています。

 宙さん、ごめんなさい! いろいろな通信で話していたので、どこで何を言ったか曖昧になってて……」


 土岐野が冷静にフォローし、佐藤にも頭を下げる。


「彼らも対象者なのか?」


【そこまでは分かりません……皆さんとお会いする前に接触を試みましたが、メイカ以外には遭遇できなかったし】


 マイちゃんがテキストで報告を送る。


『新しい人の情報が欲しい。ルーパーとしての条件は合っているのか?』


「合っているようです。11月11日生まれで、7月11日の11時11分に事故で亡くなっており、連鎖するキーアイテムも確認されています」


 土岐野が淡々と答える。


[つ、次は俺?!]


 あちらは土岐野に任せて、私は話を進めることにする。


「断定はできません。ただ、可能性が高いとしか言えません」


 現象が発動する条件を伝え、一緒に回避策を探しましょうと話を締め、通話を終えた。

 大きく息を吐いた私に、ミラーが拍手を送る。


『ナオコさん、見事だったよ。この男はどちらかというと内向的で能動的。だから君が今のように主導権を取れば、うまく動かせる。よくここまで会話を運んだね』


 私は苦笑し、首を横に振る。


「実はループに巻き込まれた直後、超常現象の専門家として霊能者的な人たちに会いました。現象の解明には全く役立ちませんでしたが、とんでもない話を納得させるにはどうしたらいいか……彼らが反面教師となり、学ぶことはできました」


 ミラーが楽しそうに笑う。


「あと、新しいルーパー情報を報告し忘れていて申し訳ありません。最近バタバタしていたのと、それ以上に驚く情報が多くて」


 土岐野が謝罪すると、日廻は穏やかに首を振った。


『気にするな。こちらもあの時舞い上がっていて、そういった情報を聞くことを失念していた。

 あとで人物リストと情報を渡してくれないか?』


 私は頷いた。


「そちらへの接触も同時進行で進めますか?」


 佐藤が尋ねる。

 日廻は少し考えてから首を横に振った。


「いや、今はこのプロジェクトに集中すべきだ。ナオコさんとマイさんの負担も大きい。二人のフォローを優先してくれ」


「まあ、確定したルーパーは逃げないしな。それより未来を見るべきだ」


 ミラーの言葉に、飛行機メンバーの皆が頷いた。

コチラの会話交差しててわかりにくいので

(時代は違っていても)カラオケボックスにいる人は「」

飛行機メンバーは『』

ナオコが作った会議室にいる時田は[]

テキストでのやり取りは【】


のように表現しています。


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