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ペトリコールに融けるふたり  作者: 白い黒猫
永遠の世界

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Break the Loop

新しいルーパーの出現を止める——。

正直に言えば、無謀としか思えない試みだ。

だが「新しい挑戦」にルーパーたちはむしろ張り切っているようだった。


わかっていることは二つ。

ひとつ、ループの核となる人の誕生日は11月11日であること。

もうひとつ、前年度の核ルーパーに関わる“キーアイテム”が存在する場所でループ現象が発生すること。

それが起こるのは——7月11日、11時11分11秒。


時間に関するこの情報にはさすがに驚かされた。


なぜ11月11日ではないのか、という疑問は残ったが。

次に判明したのは、佐藤(ひろし)土岐野(ときの)(めぐる)が調査した結果だ。

核同士を引き合わせるキーアイテムは、ただの私物では意味を持たない。

「核ルーパー自身が作り、なおかつ世間に公開されたもの」でなければならない。

視聴者がほとんどいなくても、Webラジオのように“発信されていること”が重要なのだ。

佐藤の場合、普段は企業システムに携わっていたため持ち歩けるアイテムがなかった。

しかし顧客に提示したプレゼン資料を持っていると土岐野廻に会えた。

とはいえ会社資料を私的に持ち出すのは憚られる。

そこで彼は、簡単なイラストを描いてTwitterに投稿し、原本を持ち歩くようにした。

「恥ずかしい」と一日晒すことを気にしていたが、それによりより自由に土岐野と接触できるようになった。


こうして見えてきたのは、核ルーパーとそうでないルーパーの間にはっきりとした差があるということ。

核ルーパーと通してしか他の年のルーパーと繋がれない。

会議は日廻永遠の作ったWeb会議室で行われる。

参加者は飛行機メンバーは日廻(ひまわり)永遠(とわ)とミラー、ウォーレンとキャシー、フランツとリンダ。

そしてこちら側は佐藤、土岐野、私とマイちゃんという画面分けで行われた。

仕事中のCAであるキャシーやリンダはPCを持っていないことで二人一組での参加となった。画面が増えすぎるとややこしい、という配慮もある。そしてマイちゃんはここでも会議室に入ることが出来なかったから。

会議を通して、ルーパーたちの人間関係も少しずつ見えてきた。

全体のリーダーは日廻。

精神科医のミラー、ウォーレン、フランツが対策班の中核を担い、その中でもフランツが主に調査・分析を担当している。

そして佐藤宙は分隊の隊長。部下は土岐野廻ひとりで、今は私とマイちゃんがそこに組み込まれている。

その分隊である私たちは同じカラオケボックスで参加している。私の左隣にマイちゃん、右隣に土岐野廻、向かいに佐藤宙。

ノートPCでリモート会議に繋ぎ、タブレットで調べ物をしながら参加していた。

資料は、時雨結としての私の情報や作品リスト、さらにコミカライズやアニメ化されたものを整理した一覧。

土岐野廻に手伝ってもらって英訳し、それを基に話し合いが進んでいく。


「キーアイテムが何か」を絞り込むことが今回の焦点だった。


 私の次年度ルーパーを見つけるには、大きな難題がある。


「小説だけで八作品。それぞれ巻数がある。さらにコミカライズやアニメ化も……」


と言ったところで、私は言葉を切った。

土岐野が苦笑し、フランツが眉間に皺を寄せる。


「要するに候補が多すぎる、ということですね」


「これがメグルだったらまだ予測しやすかったのに〜! 小説だけで八作品。それぞれ何巻もあって、しかもコミカライズやアニメ化もされてる。全部候補に入るなら、キリがないよ」


2018年のルーパーであるキャシーがため息まじりに言う。

土岐野(メグル)が苦笑しながら通訳してくれた。

キャシーの言う通りだ。

コミカライズやアニメ化されたものもキーアイテムになり得るのか……悩ましい。


「作品に関わるどこまでが“核”となり得るのでしょうか。

佐藤さんはシステムのどの作業を担当されていたのですか?」


私の問いかけに、佐藤は顎に手を添え、過去を思い返すように目を細めた。

彼にとっては、もう随分と昔のことなのだろう。


「プロジェクトマネージャーとして参加し、システムアーキテクチャ設計を担当していた」


システムアーキテクト。つまり、基盤の部分を作り上げた中心人物ということだ。


「なるほど……。つまり、メインの立場だったわけだね。

ただ、イラストレーターの貢門命架さんの場合は、表紙や挿絵を担当したとはいえ“メイン”とは言いにくい。けれど名前が表記されている以上、作品の一部とも言える……。

となると、単に“プロジェクトの一員”として参加したものもキーアイテムになり得るのか——そこを調べられないか?

その結果次第で、候補をかなり絞れるかもしれない」


日廻も同じ考えに至っていたらしい。

彼の日本語を、フランツが英語に訳して向こうのメンバーへ伝えていく。

こういう進行や指示は、リーダーである永遠に任せるのが一番だ。

新入りの私が出しゃばれば、せっかくの調和を乱しかねない。

それに、この“ゲーム”は彼らのためのもの。

私はあくまでオブザーバーとして、一歩引いた立場で参加するのがいい。そう自分に言い聞かせ冷静にこの会議に挑むように自分に言い聞かせた。

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