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ペトリコールに融けるふたり  作者: 白い黒猫
世界の秘密を求めて旅に出る

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命華

 新幹線の中、マイちゃんは「除霊」や「悪霊退散」についての知識を得ようと、スマホ片手に一生懸命ネットで調べていた。

 その隣で私は、元イラストレーターの命華のことを改めて検索していた。

 本名は貢門命架くもん・めいか

 2000年11月11日生まれ。

 趣味で描いたイラストをネットで発表していたところ、出版社の目に留まり、私の作品の表紙を担当することになった。

 だが商業の仕事はそれ一件きりだったようで、それ以外に記録はない。


 進学した美術系の大学で、客員教授として来ていた男性に対して執拗なストーカー行為を繰り返し、最終的にはその秘書に暴行して怪我を負わせたことで逮捕された。

 ちょうどその頃、彼女のイラストに関するトレース疑惑が浮上し、ネット上で炎上。

 社会的にも、職業的にも、彼女は追い詰められていった。


 彼女は裁判で、その教授とは恋人同士だったと最後まで主張したことが余計に反省がないと印象を悪くしたようだ。

 悪質なストーカー行為で彼女は6年の実刑を受け、昨年の6月に出所。

 その一ヶ月後、事故で死亡した。

 ……あの騒動を知っていた人間にとっては、まさかという展開だった。


 彼女が出所後、複数の出版社に「無事戻って参りました。お仕事ありましたらご連絡ください」と連絡を寄越していた、という話は、私のデビュー作を担当した編集者から聞かされた。

 それを聞いて、私はゾッとした。

 また何かの形で、あの人が関わってくるのではないかと、漠然とした不安を覚えた。


 だからこそ、その後「彼女が亡くなった」と知らされた時、正直に言えば、ほっとしたのも事実だった。

 ネット上には彼女の問題行動にまつわる情報や画像が多数出回っていた。

 卒業アルバムの写真だけでなく、大学での言動や様子を捉えた動画も流出していた。

 メイクで小さな目を強調するように塗り込め、ふわふわしたワンピース姿で教授に執拗に話しかけていく姿。

 そこには「愛を一途に求める乙女」の可愛らしさようなものはいっさい感じられなかった。

 まるで何かに取り憑かれたように、若しくは獲物を狙う獣のように見えた。

 新幹線を降りると、雲はいっさいなく晴れていた。

 けれど、私の心のなかはどんよりと曇っていく。


「我が姫! そんな憂いた顔をなされませぬよう! この私めが、命に代えてお守りいたしますゆえ心配なされるな!」


 マイちゃんが急に芝居がかった口調でそう言ってくる。

 その滑稽さに、私は思わず吹き出した。


「……頼りにしておるぞ。だが私のために死ぬのではなく、私と共に生きることを考えろ、よいな?」


 そう返すと、マイちゃんは晴天のように明るく笑った。


「御意! 我は姫とともにあらん! いざ、魔の城へ〜!」


 腕を突き上げるマイちゃん。

 ほんと、こういうお馬鹿なノリができるのも、マイちゃん相手だからだ。

 私も笑いながら頷いた。


「で、ナオコお姉様。これからどういたしましょう? あの者の墓に大量の塩でも撒きに参りますか?」


「やめなさい。呪われそうだし、怒られる。そもそも墓の場所なんて知らないでしょ」


 私は苦笑する。


「……まずは、彼女が亡くなった場所に行ってみようかと思う」


「えっ? それって、怪しげな森とか洞窟ですか?」


「いや、住宅街だったらしいよ」


「なんですかその拍子抜け……じゃなかった、意外と現実的な感じは……」


「気になるだけ。強く関係があるって確信してるわけじゃないけど……なんとなく見ておきたくて」


「うん。……見に行ってみましょう」


 私の言葉に、マイちゃんは真剣な表情で小さく頷いた。

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