表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

入れ替わった二つのバッグ

 座席に座った少年は、どこか落ち着きがなかった。座ったかと思えば急に立ち上がり、車内をきょろきょろと見回している。そして再び座ったかと思うと、今度は通路側の席に移動して、じっと車内の様子を眺めていた。

 扉の前に立っていた数人の乗客を眺めていたようだが、やがてスマホを操作し始めた。


 単に落ち着きのない少年なのかもしれない。私は膝の上に置いていた自分のボストンバッグを隣の空席に置いた。

 少年も落ち着いたのか乗車してきた時は大事そうに抱え込んでいたボストンバッグを隣の空席に置き、スマホでゲームをし始めたようだった。


 私は、自分のボストンバッグが少年のものと同じだということに気がついていたので注意していたが、少年はそれに全く気がついていないようだ。

 そして座席で両足を広げたかったのか、少年はなんと向かい合っている私の座席の横にボストンバックを放り投げたのだ。


――大事なものではなかったのか?

 

 私の横には自分のボストンバッグと少年のそれが二つ並んでいる状態になってしまった。奇妙な光景だった。

 少年はぶつぶつと独り言を言いながら、スマホゲームに夢中になっている。かなり熱中している様子だ。

 膝のすぐ横にあるのが私のバッグ。その隣に、少年のバッグが並んでいる。

 電車はしばらくは停車しないので誰も人が乗ってこない。間違えるようなことはないだろうと思っていた。


 ――と、その時、電車が急にスピードを緩めた。ブレーキがかかったのだ。そのため、進行方向に座っていた、私の横のボストンバッグが二つとも、ボトン、ボトンと音を立てて床に落ちてしまったのだ。

 

 ブレーキがかかる直前のタイミングで少年のスマホに着信があったようだ。少年は画面を確認するとすぐに床に落ちたボストンバッグを慌てて拾うと、そのまま隣の車両に移動していった。


 「えっ!」

 

 思わず声が出た。

 少年が持ち去ったのはどちらのボストンバッグだろう。

 ただ、私もわからなかった。()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ――なぜなら、こんな場所でジッパーを開けることはできないのだ。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ