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闇バイト少年との出会い

 電車の窓から流れる景色をぼんやりと眺めながら、私はため息をついた。快晴にもかかわらず私の心はどんよりと曇っていた。


 私の名前は倉守愛海(あみ)。「愛」という字が入っているが特に誰にも愛された記憶がない。

 地方都市から大学進学をきっかけにこの街に引っ越してきた。現在、N**大学の2年生だ。国立の大学の学費は事前に調べていたものの、思った以上に生活は苦しい。


 両親はいるが父親は仕事で体を壊して以来、定職には就いていない。非正規職員である母親の収入が我が家の生活の支えだった。つまり貧しい家庭なのだ。

 そんな地方での生活から逃れたかった。だから両親の反対を押し切って関西の大学を受験した。

 

 ――色んな意味で私は「世間知らず」だったのだ。

 

 そっと膝の上に置いたボストンバッグに視線を落とす。地方から関西のこの街に来た時にはこのボストンバッグには夢と希望が詰まっていたのに――。

 

 再びため息が漏れる。

 電車のアナウンスを聞きながら私は再び窓の景色を眺める。


 通勤のピークが過ぎた時間帯のせいか、電車内は比較的空いていた。立っている人は数人ほどだった。

 だから、私の座っている4人掛けのボックス席には、私しかいなかった。




 電車が停車駅に止まった時、一人の少年が乗車してきた。そして私の席の真正面に座った。他にも空席があるので真正面には座ってほしくなったのだが、仕方がない。少年も私と同じように窓際に座りたかったのかもしれない。

 ボックス席で向かい合って座っている形なので、私は少年の顔を不躾なほど見てしまった。

 若いというより幼い印象だった。中学生か高校生くらいだろうか。灰色のパーカーとデニムのパンツという恰好だが、顔色はひどく悪かった。

 そして驚いたのは、少年が私と同じ大きさのボストンバッグを持っていたことだった。メーカー、サイズも同じだ。お揃いである。

 少年はボストンバッグを「手に持つ」というより、しっかりと胸に抱え込んでいた。

 


  

 



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