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19話 力の証明

 前回のテスト期間以降、僕と優衣ぴょんは学校と寝るとき以外ほとんど一緒に過ごしているといっても過言ではないほど一緒に過ごしている。

 これってほとんど付き合ってるようなものじゃないのか?


 夏休みの朝、目を覚ますと顔を洗って、歯磨きをして、朝食を食べながらゆいぴょんとメッセージのやり取りをする。


 そのまま、その日はどこで待ち合わせをするのか決めて、図書館だったり、僕の家だったりで勉強する。

 勉強に疲れて集中力が続かなくなるとゆいぴょんに組み手の稽古をつけてもらう。


 スターダストが現れたらスターダストの目の前で、四十五分ほどスターダストからの攻撃を至近距離でよけ続ける特訓とか、街中をいくら壊しても問題なくなるので力の制御をするために体力測定に近しいことをやる。


 お昼ご飯も、晩御飯も優衣ぴょんと一緒に食べているし、僕の生活はゆいぴょんとともに歩むようになっていた。




「亜樹!違う!肩に力を籠めすぎてる。もっと力を抜いて体をしならせながら動くの」


「――はぁ、はぁ……はい、わかりました」


 ゆいぴょんが弱めのスターダストを軽くあしらっている傍らで僕は百メートルを決められた時間通りに走ったり、立ち幅跳びで優衣ぴょんが指示したちょうどの長さを飛んだり、ちょっと前、まだこの瀕死なスターダストがまだ元気だった時には僕とクターダストをひもで無理やり結んで、攻撃を最小限の動きで避けるという訓練までしていた。


 目的に合わせて最適の力を行使する。

 そのようなことは体で覚えなければ身に着けることができない。

 ただ、ひたすらに体を酷使し続けていた。


「ほら、休まない。周りを気にせず特訓できる時間は限られてるのよ」


 勉強を教えてくれる時のゆいぴょんはどんな基本的なことを聞いても優しく、決して怒らずに教えてくれるが、一度、教官になると話が変わった。

 質問することに関しては特に問題なく教えてはくれるものの、一度教えてくれたことに関してそのアドバイスを取り入れて行動することができなくては烈火のごとく怒りだすし、手も出る。

 僕の能力は燃費が悪く、こんなに長時間も補給をしないで動き続けてたら骨と皮だけになってしまう。


 常に一緒に行動をしているため気が休まるときがなく、僕は少しずつストレスをためていた。


「亜樹、今、不満に思ったでしょ?走り込み一セット追加ね。もちろん時間内に必ず終わらせなさいよ」


 ゆいぴょんは僕のことをよく見てくれていて、不満を抱えていることを表情に出したら表情には出さないようにしているのは伝わってくるがちょっと落ち込んでるっぽいので表情に出すこともできない。

僕が今、この段階で一人でも十分に戦うことができるって証明できたらこの辛い生活を終えて前みたいにただゆいぴょんと楽しく過ごせるのかな?




そんな日が続いた一週間ほど時間が経った頃、深夜一時や二時ぐらいの時間帯にスターダストが襲来したという見慣れてしまった通知が来た。


「……これは」


 規則正しい生活を心がけている僕は普段は寝ている時間帯ではあるが、ここ最近のストレスで夜にやけ食いすることが多くなった僕はたまたまその通知を目にした。


 ……この時間帯。


 ゆいぴょんは起きているだろうか?

 いや、それよりも今回のスターダストの災害危険レベルはB。



 災害危険レベルはSをカルナクスの螺旋として設定したスターダストの指標として用いられている。

 災害危険レベルAはドラゴンやソロモン王の七十二柱の悪魔の地獄の公爵以上、星座の大三角形を形成するものが襲来した際に表示される超危険なスターダストである。


カルナクスの螺旋の脅威に紛れて僕の印象には残っていないが、一時間以内に倒せなくても、確実に仕留めることが優先させるほどのもので、毎度、コスモスの階級が最も上である黒の御方が主導して討伐部隊を超特急で編成するらしい。


まぎれもない脅威だ。


僕はまだコスモスに入って一か月にも満たないが毎日のようにスターダストを狩っているのですでに階級が一つ上がって白コスモスから黄コスモスとなった。

災害危険レベルBのスターダストは最高位の黒コスモスから一個下のオレンジコスモスの人間が討伐することが推奨されている者であり、黒コスモスは一部の一族の人間にしか与えられることのない称号であり、一般的な僕たちのような人間の最高位はオレンジコスモスである。



僕がこれまで倒してきたスターダストの最高の災害危険レベルはCであり、僕はぎりぎりまでエネルギーが枯渇することはあってもスターダストに苦戦を強いられた経験はない。


……災害危険レベルB。


もしも僕が一人で倒すことができれば僕はオレンジコスモスの人たちと同格であることは間違えないことになる。

そうなればゆいぴょんも僕の力を認めざるを得なくなるだろう。

この地獄のような日々から解放されて、楽しく二人で協力し合う日々に戻ることができるかもしれない。

そのような思考に至ると僕は走って玄関に行き、スターダストの現在地を確認していた。


「こいつを倒せば……」


 ショートカットをするために住宅街の屋根を踏みしめながら目的地へと移動する。

 これまでゆいぴょんが僕の体を軽く操作してくれていたおかげで踏みしめる際に屋根が壊れることがなかったが、今の僕には屋根を壊さない力加減なんてわからず、屋根を踏み抜きながら移動しているので、後ろから悲鳴が聞こえてくる。

 僕の通った後はまるでゴジラでも通った痕かのような無残な姿が残されていた。


「――はぁ、はぁ……やっと着いた」


 普段は知ってる距離とはあまり違わないはずなのに、ゆいぴょんのサポートがないから普段よりも移動で使うエネルギーの量が多くて疲労を感じる。


 いや、疲労に関しては日々の疲れと今日とかはもう夜が遅いからっていうのが大きいのかな?

 だけど、夜食をやけ食いしてたばかりだったおかげか、むしろいつもよりもエネルギー的には余裕がありそうだ。


 この調子ならいくらBクラスでも――


「――っ!」


 ある程度遠巻きから様子を見て敵の戦力を確認しようとして近くにあったアパートの上に飛び乗った僕に対して開幕から巨大な岩が投げつけられる。

 とっさの判断で横に飛びのいたことで直撃は避けられたが……なるほど、僕の移動方法はあまりに目立ちやすかったのか。


 今後は気を付けなければ……

 最も、その今後があればの話であるが……

 今の岩を投げる速度……僕の全力かそれ以上のものだったぞ。

 つまりパワーは僕と互角以上である可能性が高い。


 今度はあまり音や土ぼこりが経たないように意識をしながら回り込んで、標的を確認する。

 周りに鳥類のような存在が飛び回り、その中心には五芒星のような形をした生命体。

 追撃の準備でもしているのか、辺りにはたくさんの岩が浮かんでいる。

 ……これは、ソロモン王の七十二柱の悪魔、地獄の大伯爵、デカラビアだ。


 巨大な岩が投げつけられたアパートから立ち上ってた砂埃が晴れ始めたころ、偵察のつもりかデカラビアの周りを飛び回っていたそのアパートへ向かっていった。

 これまでの相手とは異なり、こいつにはある程度の知性があるようだ。

 だが、偵察を出したということは僕がどこにいるのか見失ってしまっているはず。


「……よし。僕の力なら不意打ちで全力の一撃さえ決めれたら」


 そうつぶやくと、不意打ちを確実なものにするため、どれくらいの感度で偵察をするかわからないデカラビアにそっと近づく。


「……そろそろか」


 百メートルくらいだろうか?

 僕が全力で走ればそれ相応の音と地響きが鳴る。

 それでも見失ってる状態から僕の全力ダッシュでガードがおそらく間に合わないであろう距離。

 消火栓を踏みしめるための台にして一直線に突き進む。

 一歩目から姿を隠す気なしの全力ダッシュで後ろの消火栓がぶっ壊れる。


「――彗星爆発!」


 意図しなかった場所から聞こえてきた爆発音から飛び出してきた僕に対応することができなかったデカラビアの反応は遅い。

 僕の拳は鼓膜が破れるほどの爆発音とともに五芒星の中心を抉り取る。


「――っっっっっ!」


 五芒星の中心を抉り取られたデカラビアの声にならない頭が痛くなるような悲鳴が聞こえてくる。


「――ッグ!」


 一撃を加えてからの追撃をしようとしたが拳に感じた違和感に急いで距離をとる。


「まじか……」


 僕の全力のパンチに僕自身の拳が耐えられず、骨が皮膚を突き破ってしまっている。


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