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11話 話し合い

 十分後、僕たちは八匹のスターダストと戦う前の恰好をして近くの飲食店で二人話し合っていた。


 僕が身体能力を強化するためには大量のエネルギーを消費してしまい、戦いの後は何も話ができなくなってしまうほどお腹が減るので、自然と戦い後即食事という習慣がついてしまった。

 戦いで負った怪我についてはだんだんと慣れてきて、病院に行くよりも食事のほうが今では優先事項となっている。


「お疲れ、亜樹君。一週間毎日スターダストと戦うなんてなかなか体験できることじゃないよ。私自身初めて」


 僕がスターダストと戦うことはどんなものか体験させてくれるために出現した場所には県外でも走っていくようにしていたからか、僕はこれまでの人生で経験のしたことないレベルで体がガリガリに痩せこけてしまっていた。


 戦うことでただでさえエネルギーを消費するが、移動で消費するエネルギーについても馬鹿にはできない。


 いくら特殊体質の僕とは言え、今日みたいに身体能力を上げ続けていればこれまで蓄えていた筋肉まで分解するほどのエネルギーが消費されてしまう。


「僕もここまで肋骨が浮き出るようになるのは初めてですよ。もともと脂肪や筋肉が付きやすい体質でしたから……」


 僕たちがいるのは僕が最初スクーシムに飛び蹴りをした際に大きな被害をもたらしていた大人気ハンバーガーショップだ。

 こういったハンバーガーショップはセットメニューでもとても僕のお腹を満たすことができるようなものではないが、一度にたくさん注文できるし、繰り返し並べばさらにたくさん買い込むことができる。

 食べ放題店で大量に食べることもいいが、その場合は僕が出されている料理を根こそぎ食べてしまうからさすがにお店やほかのお客さんに対して罪悪感が沸く。

 問題は僕に大量の領収書が届くことだが、これに関しては今は優衣さんに遠慮なく立て替えてもらっているけど今後僕がコスモスに所属すれば経費として援助してもらえるらしい。


 これがあれば僕は今では不健康な食事でも量を優先しているが、健康的な食事を大量に摂取することができるようになる。


「それは羨ましい!私もこんな生活をしているからもっと筋肉をつけたいんだけど全く身にならないから最近諦めてるよ」


「羨ましいことないよ。優衣さんにはすでに完璧な外見があるんだから」


「完璧だなんて……それほどでも……ありますけど」


 この言葉のチョイス久々に聞いた気がする……


 そんなことを言うと優衣さんは照れたようにニコニコしながら恥ずかしがっている。

 そんな様子に僕の心が締め付けられているかのように心臓が高鳴る。


「それに筋肉がついてしまうと今ある最高のプロポーションが崩れて逆に弱くなってしまうかもしれないよ」


 これは……自虐か?


 困った……僕は学校では僕の会話下手を理解してくれている友人たちが、適当な相槌で何とかなるような話題を出しつ図けてくれるから何とか楽しい会話が継続するけど……自虐ネタが出された時の対処法なんて知らんて。




 僕も優衣さんも超能力が使える。

 だが、その力の由来は異なるものだ。

 僕の場合、僕は生まれつき超能力が使えた。


 生まれた時からしっかり栄養補給をしていたし、転んでしまいそうになった時には無意識に身体能力を強化して怪我を未然に防いでおり、特に注射を刺されるときには針が通らなくて大変だったらしい。

 僕のように生まれつき超能力を使える人間はコスモスという組織が誕生しているくらいには数がいる。


 しかし、能力の強度については幅広い。

 僕の力ぐらいになると統計学でいうところの外れ値に近い、圧倒的な力であり、多くの生まれつきの超能力者は僕よりもよっぽど力が弱いらしい。



 一方で優衣さんの場合、優衣さんは神様に力を貸してもらっているらしい。


 もちろんこれは比喩でもなんでもないし、優衣さんの頭がおかしいというわけでもない。

 僕も初めは頭に変な虫でも湧いてるのかと思ったけどどうやら本気らしい。

 そっちがその気なら僕もそれに沿った対応をしなければ失礼に当たるというもの。


 優衣さんが言うには優衣さんの一族は代々とんでもない美少女と美男子が生まれてくるようだ。

 優衣さんの一橋家に伝わる言い伝えでは戦乱の世にひときわ目立って心の美しい青年がいたらしい。

 体も弱く、とても優れているとは言えない容姿、両親の身分、すべてのスペックにおいて当時の平均を大きく下回り、毎日困窮した生活をそれ以下の水準に下げないよう努力していたが、そんなことも当時の戦乱の世は許さなかった。


 ある日優衣さんのご先祖様が森に山菜を取りに出向いた際、森の中に放置されていた狩りの罠に引っかかり歩けなくなったシカを見つけ、保護した。


 周囲の人間はそのシカを何とか食べようと画策したが、常日頃から心優しく、細々とした恩のあるその青年の懇願でシカの怪我が治った後、きっちり森の中に返したらしい。


 それからは元通り困窮した毎日を過ごしたが、ある日再び山菜を取りに森に入ろうとしたところ、その青年が治療したシカに再び会い、その際、とある神様から自分のペットを守ってくれたお礼としてその青年に大量の食糧とその美しい心に見合った美しい身体を贈った。


 大量に戴いた食料を村人全員に分け与えたり、顔が変わったりしてしまったことでその後は豊かな生活を送ることができるようになった。


 ――そんなわけでもなく、戦乱の世の激しい殺し合いは青年の村にまで波及していた。


 その戦乱の最中、友人たちの死に直面していくにつれて友を守ることができる力を求めるようになり、とある神社に訪れたそこで参拝をすると以前とは別の神様が彼の願いにこたえてくれた。


 その神様は彼の美しい容姿と引き換えに莫大な力を与えたのだった。


 しかし、その後彼の容姿はひどいものとなり、その後の戦争で莫大な戦果を挙げたものの周りから避けられるようにして古くから世界に訪れてたびたび大きな役債をもたらせていた地球外生命体、今でいうスターダストを狩る仕事が与えられたらしい。


 確かになんの面白味のない話だ。


 だからこそ、わざわざこんななんの教訓もない話が残っているという信憑性が生まれてしまう。


 世代が交代していくにつれていろいろなことがわかってきたが、とある儀式を経ることで神様に与えられた力とは引き継ぐことができ、一定期間その身に神様の力を宿すとほかの人に神様の力を移してもその力が残るようになるらしい。


 世代が進んでいって何百年も神様の力をその身に宿した一橋家は生まれつき容姿に関してはその本人の心の綺麗さによって決まるようになった。


 また、もう一つの神様の力である戦う力についてはその容姿がどれだけ優れているかによってどれだけ力を得られるかが変わるらしい。


 だから、心の持ち方ひとつで容姿と力、二つを手にすることができる。


 一橋家に関してはこれまた特別でほとんどの家は次の世代に神様の力を引き継がせることができず、たまたま才能を持った人が神様に見初められて力を与えられることがあるくらいらしい。


 このタイプの力は平均的に生まれ持った才能を持つ人よりは力が強くなるが、とびぬけて強い人はなかなか現れないらしい。


 優衣さんに関しては小さなブラックホールや隕石を落とすことができるくらいに強度と長い射程を兼ね備えており、僕のある程度しっかり目に身体能力を強化したときの力を兼ね備えている。


 正直勝てる気はしない。


 優衣さんという例があるように一橋家ではよくあることがあるらしいが、神様に特別寵愛を受けた人間はさらに大きな力が与えられる。


 しかも一橋家の場合二柱だ。


 だったとしても、次の世代に神様の力を引き継がせることについて、もちろんリスクというものは存在する。

 それはだんだん神の力を受け取るためのハードルが上がっていくというものだ。

 次の世代に神の力を引き継がせる場合、引き継がせる先の人の条件によって与えられる力が変化する。

 例えば優衣さんに力を与えた神様の場合、月9の主演女優並みの容姿でようやく力が強くなるレベルで、僕レベルの容姿の人間に神の力を引き継がせようとした場合逆に貧弱になる呪いと転じ、もしも性格の悪い子が一橋家に生まれたらとても醜い容姿で生まれることになるらしい。


 それでも周りは性格のいい人たちに囲まれて育つのでだんだんと垢ぬけていって普通くらいになるらしいが恐ろしいことだ。


「美しい、美しくないの評価は人それぞれですからね。僕は健康的な体つきの女性が好みです。具体的には胸と尻の大きい女性ですね」


 とりあえず真面目に返しとくか。


 この前に多様な会話をしてた時に僕の男友達が割り込んで話してた内容を参考に分を作ってみた。


 これなら大丈夫だろう。


 そいつ、クラスの人気者だし。


「……は、はぁ~」


 少し困ってる様子だ。


 もしかして優衣さんも会話があまり上手じゃないのかなぁ?


 それならあいつがその時、会話して他グループから追い出された後に僕に語ってくれた内容を話せば……


「尻と胸ってすごいですよね。僕、人見知りであんまり初対面の人とうまく話すことができないんですけど、尻と胸だけはしっかりと凝視できるんですよ。やっぱり引き寄せる不思議な引力が働いてますよね」


「……は、はぁ~……私もこれからはスクワットとベンチプレスを頑張ってみることにします……」

「いいですね!応援してます!」


 ポテトLサイズのセットを十個ほど食べ切ったころだろうか、僕のいつ死んでもおかしくない風貌は三日ぐらい断食した後のやせ型の人ぐらいのものとなった。

 あれから僕たちの会話は驚くほど発展しなかった。

 どうしてだろうか?



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