第三話 おふれの反応と、挑戦・こたつ脱出①
「おふれだーっ! 王さまのおふれが出たぞーっ!」
「なになに……。『タツコ姫をこたつから出した者には望みのほうびを取らせる』だって! こりゃすごいねぇ!」
王さまが大臣に命令した次の日、北の王国のあらゆる町や村におふれが出されました。
ある力じまんの男は言いました。
「どうやら、おれさまのうでの見せどころみてえだな」
ある狩人は言いました。
「次のえものはお姫さまかな」
あるそうりょは言いました。
「ほう? 私のとんちが役に立ちそうですね」
ある魔法使いは言いました。
「姫を助けるのはこのボクだ! バーニング!」
ある高貴な女性は言いました。
「あら……? おかしなことになってるわね。ふふっ。早めに帰って、おどろかせてあげましょうか」
――こうして、国中から多くの人々がタツコ姫をこたつから出すために集まったのです。
†††
タツコ姫を、こたつから外へ出す。
その目的のため、お城にはたくさんの人々が集まりました。あまりに数が多かったので、事前に役人がテストをして何のとりえも持たない者は失格としました。
残った挑戦者の数は百人となりました。
おふれを出した日から数えて五日後。かれらのチャレンジの日がやって来ました。
†
お城の広間の前には百人のチャレンジャーたちが列をなしていました。
広間のおくには王さまと大臣、そしてこたつでぬくぬくと過ごすタツコ姫の姿がありました。
兵士が挑戦者を一人ずつ呼び出し、タツコ姫にいどませます。
「一番。吟遊詩人、ギルバート!」
「ら〜らら〜♪」
最初の挑戦者は、どこかはかない印象を感じさせる吟遊詩人でした。
「今をときめく人気の吟遊詩人ですな」
「おぉ、ギルバートか! 以前に城に招いたときの歌は見事であったな」
大臣と王さまは、ギルバートを見てそのようなやりとりをしました。
ギルバートはリュートをかなでながら、リズムよく歌い出しました。
「らら〜ら〜♪ お姫さまが外に出たくなるよう、明るく楽しい歌を歌いましょう〜♪」
軽快な8ビートの音楽がひびきわたり、気づけば王さまと大臣の体もこきざみに動き出していました。
「これは……体が浮き立つような歌じゃのう!」
「えぇ! 私も少しおどりたくなってきました!」
「姫の反応はどうじゃ?」
一同がタツコ姫に注目したところ、姫はこたつの中であくびを上げていました。
「…………うるさいわねぇ」
ギルバートの歌がサビの部分に達しても、姫は全く動く気配がありませんでした。
「……そ、そんな……! これを聞けばどんな子どもでもおどってはしゃいでいたのに……!」
ギルバートは歌い終えると、がっくりとうなだれました。
「……ダメじゃったな」
「期待していたのに、残念です」
ギルバートはとぼとぼと歩いて去って行きました。
†
「続いて二番。武器屋、トルネオ!」
「はい。ごめんください」
続いて現れたのは、太った商人の男でした。