1/6
第一話 はじまり〜タツコ姫、こたつと出会う〜
これは、むかしむかしに北の王国で起こったできごとのお話です。
北の王国の冬はひどい寒さで、国中が雪におおわれてまっしろになります。また、そんな寒い冬がとても長く続くのです。
「寒い……寒いわ……」
そんな北国で生まれ育ったタツコ姫は、寒いのが大の苦手でした。
大きくなれば、そのうち体がなれるだろう。父親の王さまはそう思っていましたが、タツコ姫が十才になっても、彼女の寒がりは全くおさまるようすがありませんでした。
「かわいそうにのう……。そうじゃ！ だれか姫の寒がりを解消できる者がおらぬか、ふれを出してたずねてみよう」
王さまはそんな思いつきから、国中におふれを出すことにしました。
数日後、おふれを見てやって来たのは、ちまたで人気の魔道具職人です。
魔道具とは、魔法のしかけによって色々な効果を表す道具のことです。
「私の画期的な発明品をごらんあれ！ これがあれば、姫さまの寒さもやわらぎましょう！」
「ほう……。これはめずらしいテーブルじゃのう」
その職人が、最近開発したという魔道具。
それが「こたつ」というものでした。
四角いテーブルにふとんを取りつけたようなその魔道具は、たしかにそれまで王さまが見たこともないような物でした。
「あたたかいわ……。まるで日だまりの中にいるみたい」
こたつの温かさを体験したタツコ姫は、たちまちそのとりこになりました。
「パパ。わたし、これ気に入ったわ！」
「おぉ、そうか！ 良かったのう」
王さまはそれを喜び、その場で姫にこたつを買いあたえました。
「ありがとう、パパ！」
こたつの中で顔をほくほくとさせる姫を見て、王さまも顔をほころばせました。
これにて一件落着――……とは行きませんでした。
