記録2 "天使と酒"
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ファイル "ローゼン・アルゴース・ヴェルネント"
ドレスデン帝国初代皇帝にして建国の父である。
かつて魔王の"4大側近"と呼ばれる程優秀で強力な魔族であったが、3000年前の戦いで魔力を使い果たし
現在は寿命と持病で先が短いのを理解している為、アルンを次期皇帝にする準備を進めている。
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私はヴォルフさんのワイナリーに向かっていた。
シェルナーの店からそれ程遠くはないので、街の雰囲気を感じながら歩く。この街も所々建物の劣化が目立っている、あの家は半壊したまま放置され、あの店は火事で全焼してから放置…自警団の力だけではやはり限界がある。もっと彼女達が活動し易いようにお爺様へお願いしなければ、そう思っていると
ガラガラガラッ
大通りを何台もの馬車が大砲を引っ張りながら走っている
アルン「…あの大砲は確か」
アルンが馬車の方を見ていると
?「ふぁや?これはこれは、姫様ではありませんか?」
金髪のエルフが馬車から降りて、アルンに話しかける
アルン「あぁ、誰かと思ったらミミだったのね。また国内を一周して来たの?」
ミミ「ふぁい、自警団の砲兵隊は如何なる場所でも迅速に展開し味方を援護しなければいけませんから!」
この娘は"ミミ・ミューレンカンプ"
自警団唯一の砲兵隊を率いる
高身長金髪エルフであり、生真面目で砲兵全員と仲が良く連携も完璧…というか予算の都合で15門の大砲と60人の人員しかいないから支援砲撃は限定的な効果しかない。
ミミ「それでは私達はシェルナーに報告をするのでこれで失礼します!」
ミミは馬車に乗り急いでその場を後にする
アルン「相変わらず、真面目な娘ね…私より100歳年下だっけ…」
私は大通りを進み、酒場地区へ入る
ー帝都・酒場地区ー
アルン「えーと、ヴォルフさんのワイナリーは…っと」
私は何十軒と並ぶ飲み屋や酒屋を見ながら店を探す
?「あれ〜?、ヒック…姫様じゃありませんか〜?」
私を呼び止める声が聞こえる方を見ると、テラスで酒盛りをしている甲冑を着た男達がいた。
アルン「……また昼間から酒ですか、将軍様達は余程お暇なようですね」
男達は、フォークト将軍、ヘロルト将軍、ボーレ将軍、
そして、ディルレヴァンガー元帥
ドレスデン帝国軍の最高幹部達とその親玉
ここ最近の軍の不祥事や事件は全て彼等もしくはその指揮下の兵士によるもの…
分かりやすく言うと
"帝国の恥"と呼ぶべき悪名で軍の腐敗を急速に進ませた張本人達
ディルレヴァンガー「暇とは失礼な、私達はわざわざ自分達で街の見回りをしているのですよ。姫様こそ、あんな不穏分子達とつるんで
無いで今からでも元老院や有力貴族達に
その貧相な身体で媚びていた方が良いですよww」
相当飲んでいるのか顔が赤く、次期皇帝に対しての発言とは思えないセリフが飛んでくる
ヘロルト「いや、貧相なんて失礼な…私は姫様程の身長とパイが好みですよ。何ならこの後近くのホテルn」
本当に彼等は気持ちが悪い、私は聞き終わる前に走ってその場を後にした。
ー"ヴォルフ・ワイナリー"ー
私はようやくヴォルフさんのお店に到着した
ガチャ
扉を開けて店内に入って早々、お酒の臭いが充満していてその奥のカウンターに座っている
白髪のエルフがいた
ヴォルフ「いや〜、やっと来たねお姫様、ウッ!ヒック」
既に出来上がっているヴォルフさんが何故かバスローブだけを着ていた。
アルン「ヴォルフさん、また昼間から酔っ払って…彼等と同じですよ」
ヴォルフ「あー、あのろくでなし将軍達〜?私は彼等と違ってちゃんと仕事してるよ〜、ほら頼まれてたワインだってもう用意してるよ♪」
そう言って、手を叩くと
スタッフ「店長、私達は召し使いではありません。今度からはご自分で取りに来てください」
ヴォルフ「え〜、だって貴方達私のストーカーで警察に捕まりかけたのを私が従業員って誤魔化して助けたんだよ、
それくらいいいでしょ〜」
ヴォルフさんのストーk、いえ従業員は
"シルガイリス、フェーゲライン、
バンゲルスキス"
の3人で、木箱に入ったワインを持って来た
アルン「貴方達も大変ね、こんな酔っ払いの天使様を相手しながら仕事なんて」
3人「いえ姫様、そんな性格が我々が好きな理由なので!」
そう言って3人は、私が注文したワインを馬車に詰め込んで宮殿を目指して走って行った
ヴォルフ「あの3人が帰って来るまで時間がかかるから、私の愚痴を聞いてくれないかな〜?」
いつも酔っているヴォルフさんだけど、かつては
我らアグラス大陸の民が信仰する最高神アグラス様の
右腕として、エデン(天上の楽園)を統括していた熾天使/戦闘天使だったみたいで天使同士の内戦で味方した勢力が負けちゃって、罰として熾天使の地位を剥奪されて地上へ追放されこの大陸へ来たのが2万年前だって言ってて、この国で1番の年上になっている。
最初は、各地を彷徨っていたけど段々と飽きたのか3000年前辺りからこの帝都でお店を経営し始めたらしく、最初は農家、鍛冶屋、本屋と色んな職業に手を出していたけど最終的に酒造を選んで今こうなっている。
アルン「でもヴォルフさん、熾天使じゃなくなってもまだ戦闘天使ではあるんだからこの大陸で本気のヴォルフさんには誰も勝てないと思うのですが」
ヴォルフ「まぁ、私がその気になったらの話しだよ…基本的に地上の争いには関わりたく無いからねぇ〜。
でも、私の大切な人達を害したら……その時は容赦なく天使の名の下に、命で償って貰うだけだけど」
ギロっ
ヴォルフさんが一瞬とても怖い顔になって、私は身震いした。この人を敵に回したら確実に…
そう思ってヴォルフさんの愚痴を聞きながら、夕方まで店に残された。
次回 「記録3 "実り"」