表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/53

第8話:どうしてもジャンヌが欲しい~シャーロン視点~

 その日から、僕の事を気にかけてくれる様になったジャンヌ。強くて優しい彼女に、どんどん惹かれていった。


 でも、ジャンヌの周りにはいつも沢山の男たちがいた。ジャンヌはとにかく強くて、同じくらいの年齢の男たちの中で、ジャンヌに勝てる奴なんていないくらいだった。


 さらにジャンヌは、僕と同じように騎士団内で辛い思いをしている人たちを、かたっぱしから助けているらしい。


「せっかく騎士団に入団したのですもの。皆には、楽しく稽古に励んで欲しいの」


 それが彼女の口癖だった。元々騎士団内には、ほとんど女性はおらず、ただでさえ目立っていたジャンヌ。その上強くて誰にでも優しいジャンヌは、いつも人気者だ。


 僕はジャンヌが大好きだ、それなのに…どうしてジャンヌは、あんなにも楽しそうに他の男たちと話をしているのだろう。僕だけを見て欲しい。


 それにグラディオンの奴、いつもジャンヌと一緒にいて。


 ジャンヌの傍には、同じ歳のグラディオンという侯爵令息がいつも傍にいたのだ。彼はジャンヌの次に強い。きっとグラディオンも、ジャンヌが好きなんだ!


 現にグラディオンは


「俺もここに来たばかりの頃、ジャンヌに助けられたんだ。俺はジャンヌがいたから、今まで騎士団を続けてこられた」


 そう言って笑っていた。いやだ、グラディオンなんかにジャンヌを渡したくはない。ジャンヌは僕のものなのに!


 そんな日々を送っているうちに月日は流れ、僕たちは12歳になった。そろそろジャンヌと本格的に婚約を結びたい。婚約さえ結んでしまえば、ジャンヌは正真正銘僕のものだ。


 ただ、ジャンヌは


「私は自分より強い人じゃないと結婚したくないわ。私を守ってくれる人がいい」


 常々そう言っていた。


 ジャンヌの父でもある騎士団長も


「ジャンヌはあれでも令嬢だ。ジャンヌを守ってくれる強い男と、ジャンヌと婚約させたい」


 そう言っていたのだ。


 でも僕は、とてもじゃないけれどジャンヌに勝てない。このままだと一生ジャンヌを手に入れられない。そう思っていたある日。事件が起きたのだ。僕たちが所属している部隊の資金と機密書類が、何者かに盗まれてしまったのだ。



 なんとジャンヌが、大切なお金と機密書類を盗んだ犯人にされてしまったのだ。どうやら目撃情報があり、何人かの騎士団員が、ジャンヌが盗むところを見たと言い出した。


 ちょうど騎士団長が長期遠征に行っていて不在だったため、とりあえずジャンヌは謹慎となった。本人はそんな事をしていないと、泣いて訴えていたが、目撃情報が多いため、犯人にされたのだ。


 隊長は“機密書類を返してくれれば、今回の事は公にしない”と言っていたが、きっとジャンヌは犯人ではないため、書類を返す事なんて出来ない。目撃者として名乗りを上げた人物たちが、犯人なのだろう。あいつら、ジャンヌを嫌っていたものな。


 でも、これはチャンスだ。ここで犯人を捕まえてジャンヌの汚名を返上すれば、きっと僕はジャンヌと結婚できる。でも、どうやって…


 ふと隣にいたグラディオンを見ると、物凄い形相で、真犯人であろうあいつらを睨んでいた。


 “絶対に俺が真犯人を捕まえる”


 そんな闘志を感じたのだ。きっとグラディオンなら、真犯人たちを捕まえるだろう。でも、そんな事はさせない。


 僕は密かにグラディオンを見張らせた。すると


 “坊ちゃま、グラディオン様が奴らのアジトに潜入いたしました。すぐに来てください”


 どうやらグラディオンが動いた様だ。僕は急いでグラディオンの元へと向かう。すると、何人かの大柄の男たちが倒れていた。そこには、腰を抜かし震える真犯人と思われる団員たちと、血だらけでそれでもなんとか立っているグラディオンの姿が。


 どうやら真犯人たちは、悪い組織の人間に力を借りていた様だ。


「グラディオン、大丈夫かい?」


「シャーロン…どうしてお前が…ここに…まあいい…これを…あいつらが盗んだ…機密書類だ…この書類と一緒に…あいつらを…」


 そう言うと、意識を飛ばしたグラディオン。僕はすぐに近くにいた執事に、グラディオンを病院に連れて行くように指示を出した。


「シャーロン、どうか助けてくれ。俺たちはただ、ジャンヌを困らせたかっただけなんだ。悪の組織の人間を雇っていたうえ、グラディオンを瀕死に追いやったという事がバレたら、騎士団をやめるどころでは済まない。頼む」


 必死に頭を下げる団員達。


「それならさ、お願いがあるのだけれど、いいかな?君たちは悪の組織とは繋がっていない。ジャンヌを困らせるため、書類を盗んだが、僕に見つかってしまったという事にしたらどうかな?グラディオンの怪我は…そうだ。たまたまここにいる悪党ともめて、怪我をした。そう、今回の事件とは別の事件にしてしまえばいいのだよ」


「シャーロン、一体何を言っているのだい?そんな嘘、グラディオンの意識が戻ればすぐにばれるよ」


「たとえグラディオンが騒いだところで、僕たちがこうだと強く言い張ればいいだけだ。グラディオン1人の言い分よりも、僕たちの言い分の方が、数が多い分有利だろう?それに君たちだって、悪の組織と繋がっていたうえ、グラディオンをあんな目に合わせたなんてバレたら、どうなることやら」


 彼らに向かってニヤリと笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ