表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/53

第18話:ジャンヌは俺が守る~グラディオン視点~

 お節介で頑張り屋で、いつも周りの事を気にかけているジャンヌ。太陽の様な弾けんばかりの笑顔を振りまき、周りを明るくするジャンヌ。そんな彼女に、俺はいつしか惹かれていった。俺だけじゃない、騎士団員の中には、ジャンヌに恋するものは大勢いた。


 ただ、当のジャンヌは、色恋に全く興味がない様だ。俺は少しでも男としてジャンヌに意識して欲しい。そんな思いで、必死に稽古に励んだ。


 時には手が血だらけになるまで、竹刀を振った事もある。でも…


「グラディオン、なんて酷い手をしているの?グラディオンが稽古を頑張っているのは知っているけれど、自分の体も大切にしないと。本当にもう、しばらくは竹刀を握ったらだめだからね」


 俺の変化にいち早く気が付くジャンヌによって、治療されるのだ。ジャンヌは本当に、周りをよく見ている。俺もジャンヌに近づきたい、そんな思いから、さらに稽古に励んだ。


 そんなある日、ジャンヌの父、騎士団長が、“ジャンヌよりも強い男に、ジャンヌを嫁がせたい“と言っているのを聞いたのだ。さらにジャンヌ自身も、それを望んでいると…


 やっぱりジャンヌと結婚するためには、強くないといけないのか。そうだよな、自分より弱い男となんて、絶対に結婚したくないよな。


 俺は絶対ジャンヌより強くなって見せる。俄然やる気になった俺は、さらに稽古に励んだ。ジャンヌに少しでも近づきたくて、周りにも目を向ける様になった。もちろん、極力ジャンヌの傍にいた。


 俺はジャンヌの傍にいられるだけで、幸せなのだ。


 必死に頑張ったお陰で、俺は隊で、隊長の次に強いジャンヌの次に強くなった。でも、どうしてもジャンヌに勝つことが出来ないのだ。


 本当にジャンヌは、どこまで強いのだろう。それでもいつかジャンヌを超えたい、そんな思いで、引き続き稽古に励んだ。


 そんなある日、大事件が起きたのだ。


 何と隊の大切な資料とお金が盗まれたのだ。その上、なぜかジャンヌが犯人にされてしまったのだ。あり得ない、ジャンヌがそんな事をするはずがない。


 もちろんジャンヌは自分ではないと必死に訴えていた。ただ、目撃者が大勢いたため、結局ジャンヌが犯人にされてしまったのだ。


 違う、ジャンヌは絶対にそんな事をしない。きっとジャンヌを目撃したという奴らが、ジャンヌを陥れるためにやったんだ。あいつら、ずっとジャンヌ事を嫌っていたからな。


 ジャンヌは今回の事件で、かなりショックをうけ、食事も喉を通らない程憔悴していると聞く。頼りの騎士団長も、遠征に行っていていない。あんな辛そうなジャンヌの顔、見たくない。俺が絶対に、ジャンヌの無罪を晴らしてやる!


 俺は密かにあいつらを尾行した。あいつら、機密書類をどこに隠しているのだろう。絶対にあいつらが犯人で間違いないはずだ。


 密かに騎士団内のあいつらの持ち物も調べたが、それらしいものは見つからない。


 もしかしたら、別の場所に隠しているのか?早くジャンヌの無罪を証明して、苦しみから救い出してやらないと。


 ジャンヌの悲しそうな顔を思い浮かべただけで、胸が潰されそうなくらい苦しくなるのだ。絶対に俺は諦めない!


 そんなある日、あいつらが街に出ていくのを目撃した。何か手掛かりがつかめるかもしれない。そう思い、付いていく。すると、小さな家に入っていくあいつら。そこには…


「先日は本当にありがとうございました。あなた達のお陰で、生意気な女を懲らしめる事が出来ました」


「そうか、それはよかったな。また何かあれば、いつでも言ってくれ。それでこの書類はどうする?」


 あれは、隊の大切な機密書類。あの男たち、どう見ても悪い奴らだよな。どうして悪い奴らがあの書類を。もしかしてあいつら、裏の組織と繋がっていたのか?あり得ない、騎士団員が裏の組織と繋がているだなんて。


 その上、そんな組織を使って、ジャンヌを陥れるだなんて!


 俺は体中から怒りがこみ上げて来た。今すぐ乗り込んで、あの書類を取り返そう。でも、俺1人で勝てるのか?


 一瞬躊躇する。


 でも、俺の脳裏には憔悴しきったジャンヌの姿が…勝てるのか?じゃない。勝つんだ。俺はもう、ジャンヌに悲しい顔をして欲しくない。


 ゆっくり深呼吸をすると、バンとドアを開けた。


「お前たち、話しは聞いたぞ。まさか裏の組織の人間を使って、ジャンヌを陥れていたなんてな」


「どうしてグラディオンがここに。まずいぞ…」


 あいつらが真っ青な顔をして呟いている。


「何だ小僧じゃないか。俺たちが相手してやるよ」


 襲い掛かって来たのは、裏の組織の人間だ。俺は腰にさしてあった剣を抜き、応戦する。ただ、やはり裏の組織の人間、強すぎる。それでも、絶対に負ける訳にはいかない!ジャンヌの笑顔を取り戻すために。


 とにかく必死に戦った。何度も剣で刺されても、殴られても、絶対に負けない。そんな俺の執念が勝ち、何と裏の組織の人間を倒すことに成功したのだ。


 そして無事、機密書類も回収できた。ただ、俺も大けがを負って、今にも意識が飛びそうだ。どうしよう、このまま意識を飛ばしたら、きっとあいつらに書類を奪われる。


 その時だった。なんとシャーロンがやって来たのだ。よかった、これでジャンヌの無罪を晴らすことが出来る。


 俺はシャーロンにすべてを託し、意識を飛ばしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ