44.電撃侵攻
パドラさんから指示が来た。
「U歴351年4月15日、カルザン対神聖国侵攻軍は神聖国首都アミアンを急襲し、教皇アゾス、及び、大司教オルネーを捕縛することを命ずる」
命令書にはこれだけが書いてあった。
サランに言う。
「サラン、パドラさんから指示が来た。明日早朝8時に全軍集合ののち神聖国に進軍だ。全軍に伝えてくれ」
「わかったよ。コースケがんばってね」
さあいよいよだ。
―――U歴351年4月15日―――
基地に全軍が集結した。
「全軍出撃!」
号令と同時に動きだすおよそ500人の兵。
穂乃果さん達には、この街に残ってもらって、何かあればすぐにカルザンビルまで逃げれるように手配しておいた。
カルザン領のメンバーでは、ライコス将軍はラッシュビルに残っているが、それ以外のメンバー全員そろっている。
パドラさん、サキさん、ラスーンさん、カルメラさんは、ぎりぎりまで敵に動きを悟られないようにカルザンビルに待機していたが、現在、生命魔法をひたすらかけて、馬をつぶしながらこちらに向かっているので、少し遅れて到着するだろう。
ここからアミアンまでちょうど穂乃果さんたちがサナルまで来たルート逆に進み、行軍速度で約3日かかるが、サナルを出たら、フィムの森の中を進むので、発見されることはないはずだ。
俺は隊長として、一番前を走り、すぐ後ろには、サラン、リーリン先輩、ナレンダ師匠、ラウラーラ師匠、ケンブ、ノラさんが固め、その後ろにカルザンビルから招集した兵が続く。
「明日には、獣人国軍がおとりとして、神聖国と獣人国の国境付近に軍を集結させるからね。敵がそちらに気を取られている間にアミアンにできるだけ接近するよ」
特に敵に遭遇することもなく、俺たちは予定通り3日間走りきり、フィムの森の端から、首都アミアンを覗く位置に陣取った。
「今回の戦闘の目的は、神聖国が王国で行っている催眠による信者の獲得と、聖地への強制移動と、獣人国に対して行っている誘拐を止めさせることだ。神聖国にいる一般信者は他の連合国の国民が多いため、一般信者との戦闘は極力避ける必要がある。」
王家から派遣された軍官のドッケルさんが念を押すように言う。今回の侵攻に際して、王様から言われて連れてきたが、後々国際問題にならないようアドバイスをしてくれる人だ。
「一般信者、または神聖国軍とこちらの兵がにらみ合いをしている間に、少数精鋭にて神殿に乗り込み、教皇と幹部を捕らえるのが今回の作戦だ。隊長殿、人選を頼むぞ」
ドッケルさんに促され、俺は神殿に突入する部隊の発表をする。事前に皆で決めていたので問題ない。
「サラン、リーリン先輩、ナレンダ師匠、ラウラーラ師匠、ケンブ、シブレーで神殿に向かう。ノラさんにはここで軍の統括をお願いします」
皆が頷く。
「明日、パドラさん達が到着次第、作戦を開始する」
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「オルネー様、フィムの森に敵の軍隊が陣取っております」
7大聖人の筆頭、菖蒲色のアスティが落ち着いた声で報告してきた。
私は内心かなり驚いたが、アスティが落ち着いているので、慌てずに済んだ。
「敵って、やっぱり、カルザンなの?どうやって軍隊をここまで?」
アスティはゆっくりと答えた。
「おそらく、サナルを経由して少数で攻め込んできたのでしょう。森の中に目立たないように姿を隠していますが、恐らく数百の兵に過ぎません」
その報告に私はホッとする。少数であれば、何とかなるだろう。
「ただ、国境付近に展開する獣人国軍を警戒するために大軍を呼び戻すことはできません。森の敵には、1,000の兵を対面に配置して警戒するようにします」
「他にも敵がいるのね。いいわ、あなたに任せるわ、アスティ。私も神殿に移ることにするわ。暗殺部隊が神殿に攻めて来てもいいように、しっかり7大聖人に守らせてね」
「はい。オルネー様。かしこまりました」
凛々しく返事をするアスティ、私は、エベルネ、ララノア、ジュリエラの3人の娘と一緒に神殿に籠ることにした。
危険だけど、少し急いで、召喚を行うとしましょう。
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―――U歴351年4月19日―――
早朝から神聖国側に動きがあった。
アミアンと森の間に陣地が作られ、神聖国軍が配置された。
こちらの目的は、信者もしくは軍と対峙している間に別動隊が神殿を攻めることなので、当然発見されなければならなかったが、対峙したのが、信者じゃなくて、軍でよかった。
「何とかマシな方の想定になったな」
サカキさんが声をかけてきた。
「全くです。催眠にかかった信者と対峙することになったら、神殿への侵攻の人数を減らす必要がありましたから」
今日まで催眠を研究して対策はできつつあった。サカキさんの薬草とノラさんの呪術、それにリーリン先輩とラウラーラ師匠が新しく作った生命魔法『アローサル(覚醒)』を使うことで、催眠状態から1発で元に戻すことができるようになった。
「それに『アローサル』、は敵の魔道具による再催眠に対して、どこまで効果があるか、まだ検証できていない問題があったからな」
サカキさんの言うとおりだ。
昼を過ぎた頃、パドラさんたちが到着した。
「コースケ、よくやってくれたな」
「パドラさん、神殿への侵攻はこれからです。召喚魔法陣はどう対処しますか?」
「正直、誰を召喚しようとしているかわからんから、放っておいてもいいと思うがどうだろうな?」
確かに、昔、東王国で行われていたような大量殺人召喚魔法だったらすぐにでも止めるが、オルネーが誰か知り合いを召喚しようとしているのを慌てて止める意味はない。逆に召喚しようとしているところが突入のチャンスかもしれない。
「アゾス、オルネーの捕縛を優先しましょう。召喚の時が奴らのスキになるかもしれないっすね。今晩、神殿に潜り込みます」
「ああ、頼んだぞ」




