41.救世主
街の衛兵の制止を振り切って街の中に駆け込む。
私たちの意図を読んだのか、ショニーは街が見えるとスピードを上げて、迫ってきた。何とか振り切ったが、すぐ後ろにいた。
「もう、逃げられないっすよ~。鬼ごっこは終わりっす」
街の門を入ってすぐの、広場のような場所で私たちは対峙した。
山下君が特殊能力の爆弾を炸裂させると、数十発の爆発が連続でおき、街の人たちが大きな音に気付いて逃げ出した。
「無駄っすよ。あんたら攻撃が遅すぎっす」
ショニーは余裕にさえ見える動きで、爆弾を回避する
由紀、奈々とタイミングを合わせて、魔法を放つ。
私もさっきは逃走用の魔力を残すため使えなかった最大級の攻撃魔法『ハリケーンバースト』を唱える。
周りの建物を巻き込みながら荒れ狂い、3人の魔法がショニーを襲い、最後に私の魔法が爆発すると辺りに静けさが戻ってきた。
ショニーの姿が見えず、倒したかと思ったが
「ぐあっ!」
突然山下君が叫んだので、見ると、山下君の右手が切られて宙を舞っていた。
彼のそばで再び剣を振り上げるショニーの顔は笑っていた。
「山下君!」
思わず叫ぶが、どうしようもない。
続けざまに足を切られた山下君は、地面に崩れ落ちた。
「あんたら魔法の威力はすごいんすけどね。軍隊とか魔物相手じゃいけると思うっすけど、あたいみたいな戦士には効かないっすよ」
わざわざ話しながら、こちらに向かってくる。
とっさに風魔法を放つが、簡単に回避されて、目の前に立たれた。
「はい。残念っすが終わりっす」
((もうだめ。由紀、奈々逃げて))
最後に念話を飛ばしたが通じたかどうかわからない。
覚悟して目をつぶるが、一向に衝撃が来ないので不思議に思って目を開けると、何やら攻撃を受けて必死に回避するショニーが見えた。
突然のことで体が動かない私に声がかけられた。
「やっぱり穂乃果さんだ。大丈夫ですか?」
そこには私たちが東王国から逃がしたコースケ君が立っていた。
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やっぱり穂乃果さんだ。なんでこんなところにいるんだ?
相変わらず真っ赤な髪だな。
穂乃果さんたちを殺そうとしていた敵は、シブレーの服装によく似ていたし、教団の暗殺者で間違いないと思うが、唇ピアスなんかして、シブレーと雰囲気がかなり違う。
最初の攻撃を避けた動きをみるとかなり素早そうだ。
できれば、拘束して、シブレーみたいに改心させたいけど、あの速さだと無理かもしれない。
俺は、『ストーンキャノン』と『ホーミングファイアアロー』を連発して攻撃するが、奴はそれを回避する。
足場を崩すか。
俺が『アイス』と『泥沼』を広範囲に展開すると、奴は滑って転倒した。
すかさずストーンキャノンとアイススピアを連発し、奴の四肢を動かなくした。
「何者っすか?あたいにこんなことをしてただで済まないっすよ」
右手と右足がちぎれ、左手と左足は、ストーンキャノンに貫かれているにも関わらず口だけはよく動く。
とりあえず、放っておいて、穂乃果さんたちに事情を聴く。
「穂乃果さん、東王国から逃げてきたんですか?こいつは何者ですか?」
「コースケ君、まずは山下君を!」
穂乃果さんが指さす方を見ると、右手、両足がなくなった男が倒れていた。よく見ると転移して最初に俺の世話係をしてくれた山下さんだ。
慌てて、ちぎれた手足を集めて、生命魔法をかけると、一命は取り留めたようだ。
「ふー。危なかった」
再び穂乃果さんに向かうと、少し落ち着いたのか説明をしてくれた。
「東王国からみんなで逃げ出そうとしたんだけど、敵と魔物にみんなやられて国境も越えられず困っていたら、スラテリア教の人が、神聖国まで連れてきてくれたの。でも神聖国で生贄にされそうになったから、また逃げてきたのよ」
話していて耐えられなくなったのだろう穂乃果さんが泣き崩れたので、慌てて体を支えて抱きしめる。
「大丈夫です。ここには神聖国と戦う仲間がいますから」
緑と黄色の髪の女性も近くに来て、穂乃果さんに声をかけながら泣いていた。
その時背後から声がした。
「油断しすぎっすよ」
振り向くとさっきの敵の女が剣を振りかぶっていた。
ちぎれたはずの手足も元通りだ。
生命魔法使いか。しまったな。
穂乃果さんを抱きしめているので回避できない。
俺は収納空間から剣を出し右手で握って一閃する。
「ほえっ!」
変な声を出しながら、女は胴を真っ二つに立たれて死んだ。
しまった、捕らえられなかった。
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あまりのことに私は言葉が出なかった。
コースケ君が強すぎる。
私たちを追い詰め、力の差を見せつけていたショニーに対して、圧勝した。
呆然としている由紀と奈々を見て、慌てて、正気に戻る。
「コースケ君、助けてくれてありがとう。こちらは由紀と奈々。私の友達よ。ねえ、あなたはなぜここにいるの?」
「まずは休めるところに移動しましょう。そこには仲間もいますので、安心できると思いますよ」
山下君を背負ったコースケ君について行くと大きな宿に着いた。
建物に入り、奥の食堂のような場所まで来ると数人の男女が座っていた。
「コースケ、どこに行っていたの?」
声をかけた女性には犬耳があった。
「サラン!」
「穂乃果、どうしてこんなところにいるんだい?」
私たちは抱き合いながら再会を喜んだ。
「皆に今あったことを説明するけど、まずはサカキさん、この男の人を見てもらえませんか?山下さんという転移者なんですが、手足を切られて生命魔法でつなげたのに意識が戻らないんです」
「わかった。見てみよう」
ひょろっとした黒いロン毛の男、サカキさんが山下君を引き取って寝かせた。
「穂乃果さん、穂乃果さんたちに俺たちのことはちゃんと話すつもりですが、まずは、穂乃果さんたちのことを詳しく教えてくれませんか?敵に狙われていたことを考えると、まずは穂乃果さんたちのことを聞いて、安全を確保した方がいいと思うんです」
「コースケ君の言うとおりね。わかったわ。私たちのことを先に話すわ」
それから数時間、私たちは、話し合った。
私たちの話はカルザンの人々にとって、非常に興味深い話だったようで、話し合いの途中で、私たちの話の内容を書いた手紙を何度もどこかに送っているようだった。
コースケ君が東王国を脱出した後、どうやってカルザン領までたどり着いたかは、長くなるからまた今度話すと言われて、教えてくれなかったが、カルザン領の人たちが、神聖国と戦い、今も、神聖国を倒すための準備をしていることはよくわかった。
そして、最後にコースケ君が言ってくれた。
「穂乃果さん、由紀さん、奈々さん、そして、山下さんのことは、俺たちが守ります。安心してください」
それを聞いてまた涙が出てきて、私達3人は抱き合って慰めあった。




