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40.脱出

 



 捕らえた魔物を焼いて昼食をとり、いつでも逃走できるよう最低限の荷物にして、合図を待つ。


「さあ、行こうか」

 ベルダンが出発を促した瞬間、少し離れたところで、大きな爆発が立て続けに起こった。山下君が爆弾の能力で仕掛けた時限爆弾だ。


「何かしら、見に行きましょう」

 8人で素早く爆発が起こった地点まで行くと、煙で姿が見えなくなった瞬間に、一斉に走り出し、しばらくしたら止まって様子をみた。

 私たちの行動に気がついたのだろう、メッスの叫ぶ声が聞こえた。

「おい、止まるんだ!」


 メッスとベルダンが元来た方向に走っていくのを確認して、反対方向に走り始める。奈々の幻覚魔法が聞いたようだ。


 このまま差をつけて、撒きたいと目論んでいたが、ショニーがすごいスピードで追いついて来た。

「あんたら、どこに行くっすか?」

『ストーンウォール』

 高田さんが唱えると、ショニーの前に巨大な土壁が現れた。

 軽々飛んで土壁を越えてくるショニーに対して、真田さんと三矢さんが、風魔法で妨害する。

 少し、バランスを崩したようだったので、皆で、一斉に攻撃魔法を放って足止めしてから、私が『クイック』を全員に唱えて、一気に距離を稼いだ。


 ここからは体力勝負だ。

 とにかく全力で走り、私が生命魔法を順番にかけ続ける。

 日が沈み、辺りが暗くなっても、奈々が火魔法の照明『ライト』を唱えて、視界を確保しながら走り続ける。

 ピーコとライガのおかげで、強い魔物を避けたルートをとれている。


 朝日が昇り、夜が明けた。

 皆の顔に疲労が見えるが、追手を引き離しているのか、夜の間に攻撃が無かったので、精神的にはまだ余裕がある。

 私は生命魔法を使い続けているが、魔力枯渇になるとめまいがして走れなくなるので、どこかで休憩は必要だ。


 太陽が真上に上り、そろそろ魔力がなくなるという時になって、とうとう森を抜けた。

 辺り一面にのどかな田園風景が広がる。

「よし、抜けたぞ。すぐに隠れて休憩できる場所を探すんだ」

 高田さんが、明るい声でいう。

 田園があるということは人が近くに人がいるはずだが、一応人目に付かないよう警戒して、小さな丘の上に目立たないよう高田さんが土魔法で陣地を作ってくれた。

 私の魔力と、皆の体力回復が急務だ。

 陣地に腰を下ろすと、私は残った魔力を体内に循環させながら、すぐに眠りに落ちた。



 目が覚めるとすでに日が落ち、夜になっていた。

 まだ、皆、寝ているのか物音もせず、静かだった。

 よく眠れたのか、体力も魔力も十分に回復していた。

 とりあえず、皆の姿を確かめようと辺りを探すと、近くに由紀が寝ていて、その向こうに奈々もいた。

 転移者施設では、赤、黄、緑の髪の色から信号機と陰口をたたかれたので、人目に付くところでは、できるだけ3人一緒にいるところを見られないようしていたが、一緒に旅に出ることは多かった。

 こうして、2人が近くにいると安心することができた。


 他の人たちを確認しようと起き上がると、後ろから声が聞こえた。

「あ、起きてしまいやがったです」

 一気に体が緊張し、冷や汗が流れる。

 すぐに振り返って確認するとショニーが高田さんの首に剣を刺していた。

 大量の血が流れ、飛び散り、ショニーの白い服を真っ赤に染めていた。


 由紀と奈々を守るため、2人を背後に隠すような位置に移動し、周りを確認すると、真田さんと三矢さんが血まみれで倒れていた。すでに息をしている様子はない。


「あんたたち足早いっすね。見つけるのに苦労しましたよ。でも、あたい、探知魔法使えるんで、あんたたちを見失うことはなかったすよ」

 しまった。探知魔法使いだったか。生命魔法の一つなので私も使えるが、あまり得意ではない。奈々が風魔法で同じような魔法を使えるので、必要な時はいつも奈々に頼んでいたし、一人の時はピーコやライガに任せていた。


 あと、生存確認できていないのは、山下君と市屋さんだが、私とショニー以外、動いている者がいる様子がない。

「皆さんよく寝ていたから戦闘力の高いやつから殺したのに、まいったっす。あんたが、私と同じ生命魔法が使いだったんすね。生命魔法使いは、魔力循環させながら寝ると回復が早いこと忘れていたっす」

 思ったよりもいろいろ話す人で、少し意外だったが、そんなことよりも今この状況をどう打開するか。


 念話を使って、由紀と奈々に話しかけ、敵がいるから寝たふりをしろと繰り返す。

(何?どういう状況?)

 由紀が念話で返してきた。

((敵ショニー、高田、真田、三矢はおそらく死亡))

 私の言葉に息をのむ感じが伝わってきた。

(他の2人は?)

 今度は奈々だ。

((わかんないわ。暗くて見えないし、近くにはいないみたい))

 2人とは私の念話で話すことも多く、念話に慣れている。


「いやー、まさか生命魔法かけっぱなしで走り続けるとは思わなかったっす。あんたすごい魔力っすね。転移者っていうのは皆そうなんすかね~」

 相変わらず、おしゃべりを続けてくれるので、私もそれに乗り、時間を稼ぎながら状況を掴むことにした。


「山下君と市屋さんは無事なの?」

「ああ~、一人は、向こうで刺し殺したっす。もう1人はまだ見つからないっす。どこかに隠れているんですかね?」

 探知魔法で探したいが、相手にばれるかもしれない。


「メッスとベルダンは追ってこなかったの?」

「あいつらあのまま走って行っちまいやがったっす。後で、お仕置きっすね~」

「ここはもうサナル国内でしょ?神聖国のあなたが勝手に入ってもいいの?」

「サナルが神聖国に文句を言うことはないっすよ。信仰心のないくそったれの異端者どもですが、弱っちくて、神聖国に歯向かったりしないっす。たとえ見つかっても問題はないっすよ」


 予想はしていたけれど、やっぱりサナルに入ったからと言って、安全になるわけではなかった。

「ショニーはどういう立場なの?私たちはオルネーさんから、神聖国が合わなかったら自由に外国に行ってもいいと言われていたの。それなのにどうしてあなたは私達を殺そうとするの?」


 ショニーは、私の言葉に特にたじろぐこともなく、答えた。

「あたいはスラテリア教団7大聖人の一人、紅梅色のショニーっす。私の使命は、神に敵対する異教徒を殲滅し、この世を清浄化することっす。あんたら、オルネー様が神聖国で、神の信徒として生きられるよう準備してくれてるのにそれを知りながら逃げ出したっす。万死に値するっす」


 そこまで聞いて、私は由紀と奈々に念話で合図を送る。

「人の記憶を勝手に消して、新しい記憶を植え付けるなんて、私達には、冗談じゃないのよ!」


 3人で一斉に魔法を放って攻撃する。

 由紀の『ダイヤモンドダスト』、奈々の『メガフレア』、そして私の『エアバースト』がさく裂する中、私たちは小山を下って、退避を始める。


 ショニーは私たちの魔法を回避して、追ってきた。

 強い。ショニーは魔法をまだ見せていないが、その動きは私達転移者よりも素早く、魔法で捉えきれない。


((走るわよ))

 由紀と奈々に念話で伝えて、また、逃走に入ろうとしたが、ショニーはそれを読んでいた。

「逃がさないっす」

 ショニーは私に狙いを定め、スピードを上げて追ってきた。


 追いつかれる!

 そう思った瞬間、ショニーの足元が爆発した。

 咄嗟に追うのを止めて、回避するショニー。

 右側から山下君が走って合流してきた。

「すまない。遅くなった。無事か?」

「どこに行ってたの?他の4人は死んじゃったわよ」

「ああ、トイレに行ってた時に奴の襲撃に気付いたが、瞬く間に4人が殺されて、助けることができなかった。本当にすまない」

 私たちは走りながら状況を確認した。

「とにかく、奴から逃げ切ることを考えましょう」


 サナルは小さな国だがそれでも東西に国を横断し、西の王国に入るには、徒歩で5日かかる距離だ。平地をこのペースで走り続ければ、2日とかからず走破できそうだが、私の魔力が持たない。

 ショニーもそれがわかっているのか私達との距離を保って追いかけてくる。最初に狙われるのは生命魔法を使える私だろう。私がいなくなれば、もう走ることができない。


「街の中に入って迎え撃とう。このままあと1時間ほど走れば、サラブーという街があったはずだ」

 サナルの人には申し訳ないけど、そうするしかない。

 もしかすると軍隊がいるかもしれないが、ショニーより強くはないだろう。

 サナルでは、何をやっても問題にならないようなことを言っていたが、さすがに街で暴れることはしないと思いたい。


 必死で走り続けると大きな街が見えてきた。





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