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24.サカキ





 部屋には俺とパドラさんと容疑が晴れた男の3人だけになった

 師匠たちには休んでもらった。


「名前は何という?」

「サカキだ。東王国で召喚された異世界人だ」

 俺と同じ転移者だった。


「何で、東王国の転移者があんなところにいたんだ?」

「俺は10年ほど前、数人の仲間と共に東王国を脱走したんだ。各地を転々として、精霊森国で冒険者として生活を始めたんだが、ある日、東王国の追手に見つかってな、数年のうちに仲間がみんなやられて、最後に俺一人逃げ延びたんだ。山の国の奥地に年取った薬師の爺さんが住んでいてな。その爺さんに匿われて、いろいろ薬のことを教えてもらいながら生きていたんだ」

 俺と同じ東王国からの逃亡者だった。親近感が湧くが俺のことを話すのは話を全部聞いてからにしよう。


「数か月前、爺さんが亡くなって、俺は一人で旅に出たんだ。長く隠れ住んでいたから、街道に出るのは怖くてな。山と森の中を西に向かって進んできた」

 すごいな、あんな魔物がいるところを一人で歩いてくるなんて。

「俺は探知系の魔法が得意で、隠密の特技を持っている。薬師の爺さんに教えてもらった魔物除けの知識もあるし、山の奥地で長く暮らしていたからな、森の中でも魔物には見つからない自信はあった。さすがにあのトカゲにはかなわなかったけどな」


 バジリスクはかなり危険な魔物で、獣人国の東の山が縄張りのようだが、何故か首都の近くまで来ていたようだ。

 バジリスクのことを話すと、サキさんとサランが慌てて、バレンシアさんと話をするとか言って行ってしまった。大事のようだった。

 それを倒したパドラさんと師匠はやっぱりすごいな。

 パドラさんにバジリスクを倒した魔法のことを聞いたら、昔、ドラゴンも倒したことがあると言っていた。マジすげえ。


 そこでパドラさんが、サカキさんに、自らが転生者であることを告げた。

 俺にも話すように言ったので、俺も東王国に召喚された転移者で、逃亡していることを話した。


「転生者に転移者だって?それにしても、あの国では、まだ異世界人召喚なんて危険なことをしているのか。もう百人だって?それだけ転移させるのに、どれだけ犠牲者を出したことか」

「犠牲者って何のことですか?」

 俺はサカキさんの言う犠牲者がわからなくて質問した。

「1人の召喚を成功させるのに、何人もの召喚失敗があるってことさ。召喚の成功率は当時10%なかったが、今は違うのかな?」

「俺は向こうでトラックにひかれて、死にかけていたところを召喚されたんです。助けてやったんだと言われましたが、召喚されても助からない人間もいるということでしょうか?」

「死にかけをね……俺は普通に生活して、食堂で飯を食っていたら召喚されていた。他にもたくさんの人が一緒に召喚されていたが、俺以外は全員死んでいたんだ。遺体がまともに残っていた人も少なかった。召喚された時に生じる身体的変化に耐えられなかったからだと、召喚した神官たちは話していたな」

 なんだ、その召喚、怖い。


「そんな召喚だったからな、当時召喚されて生き残った奴は俺が知っているだけで20人ほどいたが、ほとんど王国外に逃亡したよ。召喚されたのも不満だが、強制的に騎馬民族と戦わされて、やってられるかってな」

「まあ、そうなるわな。残念ながら俺はこれまでコースケとサカキ以外の転移者を見たことが無いんだが、まだ連合国内に生き残りはいると思うか?」

 パドラさんの質問にサカキさんは少し考える。

「いるとは思う。転移者だと公表して生きている奴はいないだろうな。東王国のやつらはしつこいから」

 確かに俺も昨日襲撃を受けたばかりだ。


「俺、ここに来る途中、精霊森国で異世界の冒険者が使っていた家に案内されたことがあります。地下に蒸留器がありました」

 俺の言葉にサカキさんが反応する。

「それって首都のヌルメスにある家か?家主はなんていったっけな?」

「イロマンツィ卿ですか?」

「そうだ。イロマンツィ卿だ。あの家に行ったのか……俺たちが住んでいた家だ。蒸留器は仲間に詳しい奴がいてな、試行錯誤して作ったんだ。そうかまだあったのか。飲みたかったなあ」

「俺、あれをまねて蒸留器作りましたよ。ここにはないけど後で取りに行きましょうか?」

「本当か?それはすごい。ぜひ飲ませてくれ。つまみは俺が作るよ。俺は日本で料理人だったんだ」


 今度はパドラさんが反応した。

「何!料理人だとまさか日本料理が作れるのか?」

「材料を探す必要があるが、大体作れるさ」

「よし。お前を料理人として雇うことにした。俺たちと一緒に領地まで来てくれ」

「あんた何者だい?」

「転生者だと言っただろう。今は隣の国で領主をやっている」

「そいつはすごい人に拾われたな」

 サカキさんも異存はないようだ。


「俺の領地に来てもらえれば、安全は保障するが、俺にも敵がいることを覚えておいてほしい」

「ほー、敵とは誰だい?」

「スラテリア神聖国、いかれた宗教国家だよ。獣人国から何人ものケモミミを誘拐し、外国に売りさばいて、儲けた金で何やら企んでるとんでも集団だ。まあ、奴らから獣人を買い、ケモミミランドを作った奴は俺が倒したけどな」

「ほう。ケモミミランドが素晴らしい響きだな」

「やめておけ、オスしかいないランドだ」

「なんだ、それは?誰のどんな需要だ?」

「そういうニッチな需要があって大規模にやってたよ。俺が全部解放したけどな」

「うむ。神聖国は獣人の敵でもあるわけだ」

「ああ、獣人国とは同盟関係にあると思ってくれていい。俺の仲間になる以上、神聖国との戦争は避けられないと思ってくれ」

「ああ、ケモミミの敵は俺の敵。喜んで戦おう」

「東王国への対応も考えないといけないが、遠いからな。今は何ともしようがない。追手から逃れ、身を守ることを優先しよう。今後とも転移者を発見したら、積極的に保護する方針で行く」


 パドラさんの領地は獣人国よりもさらに西だ。どんな国か楽しみだな



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