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22.パドラさんの秘密




「実は、俺は日本からの転生者なんだ」

 パドラさんの突然の告白に驚く。

「日本で死んで、神様に会って、この世界に赤ん坊として転生したんだ。赤ん坊の時から前世の日本の記憶を持って生活してきた」

 パドラさんはお母さんと一緒で金髪、緑の目で、肌も浅黒くとても日本人には見えない。

 転移ではなく、転生だから外見は全く変わってしまったのだろうか?


「転移のことをもう少し教えてほしい」

 俺は自分が転移された状況をできるだけ詳しく話す。

「日本でトラックにひかれて、死にかけたところを召喚され、生命魔法で傷を癒されました。召喚される際にこの世界に適応されるよう少し肉体に変化が起こったようです。他の転移者では髪が真っ赤になっている人もいました。その変化で魔法が使えるようになる人や、特殊能力を持つ人も多いそうです。俺には土魔法、生命魔法、空間魔法という能力が発現していました」

 パドラさんは、俺の説明に頷く。

「東王国では俺は101人目の転移者だそうです。東王国は騎馬民族と長く戦争をやっているので、転移者は教育施設のようなところで訓練を受けていて、戦争で役立つことを期待すると言われました」


 しばらく思案するように俺を見ていたパドラさんは質問をしてきた。

「空間魔法というのはどんな魔法だい?テレポートとかアイテムボックスとかが使えるのかい?」

 おー、パドラさんも異世界小説好きなのか?

「テレポートは使えません。空間収納魔法が使えます。ラウラーラ師匠と訓練したんですが、師匠も空間魔法は知らないので、基礎的な魔力操作でできることだけです」

「収納魔法かうらやましいな。俺は、4大魔法と生命魔法が使えるがそれだけだな。ただ、健康体という特殊能力があって、基礎体力、身体能力が高めになっている」

「でもさっき助けてもらったときの魔法すごかったです。スピードとか威力とか。ラウラーラ師匠も褒めてました」

「まあ、6歳からずっと訓練していたからね。ところで転移するときに神様に会ったかい?」

「いえ。神様に会った記憶はありません。死にかけた記憶はありますが、次に目が覚めた時はベッドの上で、すでに傷も治り、体も変化した後でした。信じられます?俺、日本で25歳だったんですよ」

「はは。それは信じられないね。高校生くらいにしか見えないよ」

 高校生という単語が出てくるなんてやはり転生者なんだろう。


「言葉はどうやって勉強したんだい?」

「えっ、最初から話せましたけど、最初は普通に日本語を話しているつもりでしたが、旅の途中で文字が違うことに気付きました。よくある転移者特典のようなものだと思っていました」


「俺はこちらで生まれた時、言葉がわからなかったよ。転移者と違って、転生者には特典が無いのか。それとも赤ん坊だから理解ができなかっただけなのか。おそらく転移の影響でコースケ君には言語理解能力があるのだろうね」


「パドラさん、コースケでいいですよ」

「ああ、じゃ、コースケ。これからのことを話そう。俺の領地に来ないか?今後も君は狙われる可能性があるから、俺の近くにいた方が安全だ。俺たちも敵がいて戦っているから、それなりに戦闘能力を持っているからね」


 パドラさんの申し出は嬉しかった。

「ありがとうございます。皆と相談してもいいですか?」

「ああ、相談して決めてくれ。そろそろ戻ろう。それと俺が転生者ということは誰にも話していない。家族には前世の違う世界の記憶が少しあるとは言ってあるけど、話は合わせてくれ」


 部屋に戻るとサランとサキさん、リーリンさんや師匠たちも部屋にいた。

「パドラ、ありがとう。両親も安心して帰って行ったよ。家が直るまでは親戚の家に泊まるそうだよ」

 サランの両親には俺のせいで申し訳ない。


「パドラ~、あいつ等東王国の軍の特殊部隊と魔法省の捜査官だってさ。ニル魔導国でコースケが獣人と逃げていることが分かったから、いつか獣人国に来ると思って、獣人国内でずっと見張っていたみたい。あ、コースケって私の弟弟子だから呼び捨てするよ」

「どうぞよろしくお願いします。先輩」

 リーリンさんに挨拶をすると満足げに頷いてくれた。


「奴らは宰相暗殺犯としてコースケを始末するように言われているそうだねえ。他にもまだ、追手がいるようだから、この国から出た方がいいかもねえ」


 ラウラーラ師匠が言うので、いい機会だからパドラさんからの提案を相談する。

「パドラさんが領地に来るように言ってくれているんだけど、どうでしょうか?」

「うちには戦える奴らが多いから安全は保障しますよ。ぜひ来てください。大師匠」

 パドラさんが大師匠と呼ぶとラウラーラ師匠はずいぶん機嫌がよくなった。

「孫弟子のお願いなら仕方がないねえ。お邪魔しようか?ケンブとサランはどうだい?」

 頷くケンブ。サランは少し考えたが、サキさんが両親の安全は獣人国が保証すると言ってくれると一緒に行くと言ってくれた。


「じゃあ、出発は一週間後で、それまではこの王宮の離れに住んでくれ。実はバレンシアさんに頼まれたことがあって、すぐには帰れないんだ」

 バレンシアさんは第一皇女だったか、頼まれごとって何だろう?


 皆でサランの家に荷物を取りに行き、王宮の離れに引っ越した。

 離れで休んでいるとパドラさんがやってきた。

 サキさんともう一人女の人が一緒だった。誰だろう」


 サランが立ち上がり頭を下げる。

「第一皇女バレンシアと申します。ご不便が無いよう手配いたしますので、何なりと申し付けください」

「こちらこそ世話になる。よろしく頼むよ」

 ラウラーラさんも挨拶を返す。


「大師匠、バレンシアさんと相談したんだけど、もしよかったら、俺の領地に行くまでの間、俺と一緒にバレンシアさんの依頼を手伝ってもらえませんか?冒険者としての経験もあるし、人手がいる依頼なんですよ」

「構わないよ。ちょうど退屈して、何するか考えていたところだ」


 依頼は1月ほど前に新たに発生した獣人行方不明事件の捜査だった。


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