表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/50

17.冒険者ギルド




 冒険者ギルドに行き、受付のお姉さんに相談する。前回、討伐依頼を受付けしてくれた人だ。

「魔物の素材、死体を大量に保管しているんだが、あまり公にしたくない特殊な能力でね。解体と素材の買取をお願いしたいのだが、何かいい方法はないかい?」

 ラウラーラが冒険者証を提示しながら、小声で話しかける。

 冒険者証からラウラーラの履歴を確認し、ある程度信頼のある冒険者だと判断したようだ。


「大量と言いますと、いかほどですか?」

「ホーンベア、ホーンボアを中心に約100体」

 お姉さんの眉がピクリと動く。

「わかりました。冷凍倉庫を用意しますので、そちらに素材を置いてください。倉庫まで私が一緒に行きますので、しばらくそちらでお待ちください」

 俺たちがカウンターを離れると受付の彼女は奥に消えた。


 約10分後、受付の女性が現れたので、ギルドの裏から外に出た。

 職員はリスタといい、ギルドの依頼管理の責任者だそうだ。

 5分ほど歩いて、大きな倉庫に到着する。


「中にお入りください」

 入り口から入ると50m四方くらいあるのなかなか大きな倉庫だった。

「こちらに魔物の死体を出してください」

 師匠が俺を見て頷いたので、収納空間からまずは20体ほど出してみる。

 リスタは驚いて声を出す。

「まさか、空間魔法ですか。うわさで聞いたことはありましたが、初めて見ました。なるほど公にする能力ではないですね」

 リスタの指示のもと、魔物の種類別に順番に収納空間から外に出していく。

 ホーンベアが50体、ホーンボアが42体、アーススネークが11体、ファングトラウトが2体、合計105体の魔物の死体を並べた。


「こちらで解体職人を派遣して、数日掛けて解体査定を行います。討伐報酬と素材買取金は後日一括にてお渡しでいいでしょうか?」

「私らは、2日後に獣人国に行きたいんだが、それまでに受け取ることは可能かい?」

「査定と解体に最低1週間はいただきたいです。査定金額には私が責任を持ちますので、ギルドの口座に振り込みならどうでしょうか?連合国内の冒険者ギルドならどこでも冒険者証を提示されればお金を引き出すことが可能です。もし可能であれば、1日に4、5体ずつ解体して、市場に流せれば、値崩れさせないことが可能です。入金は一週間ごとに行いますので、全額振り込まれるのに1月ほどかかりますが、総額は1週間で査定するよりも倍以上になると思います」

「そうだね。どうせ今すぐ必要な金でもないからね。みんなそれでいいかい?」

 師匠の言葉にみんな頷く。

「ありがとうございます。続けてお願いして申し訳ありませんが、もし魔力に余裕があるようでしたら、ここの冷凍魔道具に魔力を注入していただけませんか?1か月間魔道具を維持するための魔力を手配する費用が浮かせられれば、手数料を割引いたしますので」

「構わないよ。振り込みは4人の口座に均等に入れておくれ。じゃあ、魔力を入れようか」

 4基の魔道具に師匠と俺とサランで魔力を注入していく。今日は半日で討伐を切り上げたのでまだまだ魔力に余裕があった。

 魔力切れを起こす前に4基の魔道具の魔力がいっぱいになった。

「すごい魔力量ですね……これで1か月間魔力補充は必要ないでしょう。後は私の方で手配しておきます」


 倉庫を出て先日チェックアウトした宿に向かった。

 幸いに4人部屋が空いていたので、すぐに部屋に入れた。

 まだ、夕方だが、疲れたので、風呂に入って休むことにした。


 風呂から出てくつろいでいると、ケンブが船のチケットを購入してきてくれた。2日後、7月5日発の便だった

「明日は一日街を見てゆっくりしよう」

 宿で夕食をとってから、日課の魔法鍛錬を行い、魔力を杖に魔力を放出してからぐっすりと寝た。



 ―――U歴350年7月5日―――


 昨日は4人でゆっくりと街を見て回った。

 ヴェセルは、水路が網の目のように張り巡らされ、どこに行くのも船で行けるとても便利で美しい街だった。

 師匠がいくつか度に役立つ魔道具をそろえてくれた。


 今日は獣人国に向かう日だ。

 しばらく運休していたせいか、船は獣人でいっぱいだった。

 ヌルメスからヴェセルに来るときに乗った船よりも少し小ぶりの船だったが、船体は新しく、新造船だった。


「青の河は流れがゆっくりだが、河を下るので、3日目の昼にはラクーンシティに到着するそうだ。獣人国はなかなか入国の許可が下りないから、私も久しぶりだねえ」

 師匠はニナ魔導国の生まれだで、長く、北の帝国で冒険者として活動したり、弟子を取って育てたりしていたそうだが、十数年前に実家に戻って、それ以降は、ニナ魔導国、精霊森国、デキラノ国を中心に冒険者として活動していたそうだ。

 獣人国は数年前まで獣人誘拐が頻発していたらしく、入国が厳しくなり、国内で呼び止められ、身分や目的をよく聞かれるようになったので、面倒くさくてあまり近づかなくなったらしい。


「そうだね。数年前にようやく誘拐事件も解決して最近は獣人以外の入国も増えてきたよ。僕は成人してから、東王国に行くまでは、獣人国内で冒険者をやっていたんだ。誘拐事件の解決の時は大騒ぎで、確か第2皇女が見つかったのもその時だったよ」

 サランは獣人国から依頼を受けて、外交特権を持って東王国に滞在していた。


「実は誘拐された獣人たちが見つかったのは王国内だったんだけど、子供の時、父の仕事の都合で、王国に住んでいたことがあったんだ。でも、仲のいい友達が行方不明になったりしてあまりいい思い出が残ってないけど、その友達が生きていて、しかも領主になったといううわさを聞いて、会って無事を確かめたいと思っているんだよ」

 以前、サランは、獣人国に戻って両親に会ったら、王国に行きたいと言っていたが、まだ、その気持ちはあるようだ。

 師匠とケンブがいいと言ったら、4人で一緒に王国まで行きたいな。


 船はヴェセルを出港し、ラクーンシティに向けて、順調に航行を始めた。


 俺は、この時はまだ、この話に聞いたサランの幼馴染との出会いが、今後の俺の人生に大きな影響を及ぼすとは思ってもいなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ