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15.魔物討伐クエスト




 ―――U歴350年6月30日―――


 宿をチェックアウトしてから、冒険者ギルドに向かった。

 ヴェセルの街の冒険者ギルドは宿から船で10分ほどだった。歩いたら30分ほどかかるだろう。


 コースケ、18歳、魔法使いとして冒険者登録をした。

 冒険者ランクというものはなく、ただ、実績が記録され、依頼主に公開されるので、実績で指名依頼が受けられることはあるが、公開依頼については、基本的には自己責任で何でも受けられるようだ。

 それでもギルド職員は、ある程度アドバイスはしてくれるみたいだ。


「これにしよう。ここからそう遠くない、緑の河の支流、黒の河流域の魔物の退治だそうだ。特に討伐基準はなく、魔物討伐の証、牙、角、皮などを持ってくれば、一体いくらでお金を払ってくれるらしい。3泊くらい野営して集中的に狩ろう」

 ラウラーラ師匠の提案にみんな頷いた。


 依頼票をカウンターに持っていくとなかなか受ける人間がいない依頼だったようで、職員に喜ばれた。

「主にホーンベア、ホーンボア、アーススネークなどが出てきます。川の中からファングトラウトに襲われることもありますから、気を付けてください。どの魔物も大型なので討伐の証拠としては体の一部でいいですが、お肉を持ってきてもらえると高価買取間違いなしです」


 なるほど、昨日食べたファングトラウトも絶品だった。ホーンボアも本当に美味しかった。アーススネークはたぶん蛇だろうけど、うまいのだろうか?


「ギルドの船をお貸しすることができますよ。動力は魔力を使うので、魔法使いじゃないと大変ですが、操船も簡単に魔力でできる最新型が開いています。どうしますか?」

 早速、船を借りて、目的地まで操船してみたが、日本でやったゲームよりも簡単だった。


 緑の河を北に1時間ほどさかのぼったところで東側の支流に入る。

 川の幅が狭くなり、まるで木々が迫ってきたように感じられるが、空気もすがすがしく、とても気持ちがいい。


 まだ、魔物らしきものは発見できないが、ギルドで目印が記入された地図をもらってきたので間違いはないはずだ。


 さらに1時間ほど上流に遡ったところで船を岸に着けた。

「このあたりをベースキャンプにしようか。コースケ、探知魔法で探索開始。地図に反応を書き込みな。ケンブとサランは薪になりそうな枝を集めておいておくれ」


 探知魔法で周囲を探る。鍛錬のおかげで、半径1kmくらいの魔物を探知できるようになった。

 いくつかの反応を感じられたので、地図に書き込んでいく。

 6か所に魔物がいた。

「まずはこちらの岸の4か所を攻めよう。魔物も動くだろうから定期的に探索はわすれないようにしな。サランとケンブで先行しておくれ」


 一番近いしるしには、大体10分ほどで到着した。

 ホーンベアが2体、木の実を集めて食べていた。

「コースケ、早速ストーンキャノンをぶっ放しな。1体を集中して仕留め、もう一体に動きを鈍らせるけがを負わせれれば合格だ。やりな」


 俺は、右手をホーンベアに向けて、『ストーンキャノン』と唱えた。詠唱は1回だが、5連射させた。

 5発のストーンキャノンはまっすぐ飛んでホーンベアに突き刺さり、2体とも地面に倒れた。


 サランとケンブが近づいて確認すると2体とも絶命していた。

「ケンブ、魔物の死体を重ねてこの崖の脇においてくれ。コースケ、土魔法で遺体を隠しおくれ。他のポイントも討伐終わった後、ここに寄って素材を持って帰るよ。さあ急いで作業だ。さっさと次に行くよ」


 最初に探索した4か所を討伐し終えて、魔物の素材を回収しながら船に戻り、食事をとった。

 土魔法でテーブル、椅子、バーベキューコンロを作り、肉を美味しく焼いて見せると師匠に絶賛された。

「すごい品質だな。私は石の材質コントロールが苦手でね。こんなに頑丈なものは作れないよ。大したものだ」

 さらに皿やフライパンも作っておいた。


 食事後はもう一度探索して位置を確かめてから対岸へ渡り、順番にポイントを討伐して、素材を回収しながら船に戻ってきた。

「もうすぐ日も暮れるから、対岸に戻ってキャンプとしよう」


 船を操作して川の中ほどまで来ると突然サランが何かに反応した。

「何か来るよ」

 それと同時に川から何かがファングトラウトが飛び出してきた。

 操船で魔力を使っていた俺は攻撃が間に合わなかったが、ケンブが剣で一閃、魔物は真っ二つになって、水面に落ちて行った。


 しばらくすると血と一緒に半身が浮かんできた。

「今日の夕食に魚も増えたね。ケンブ、4人食べる分くらいを切り取っておくれ」


 対岸に戻ると火を焚いて、集めた素材を整理したり、夕飯を作ったり、各自仕事を始めた。

 サランが料理当番で、俺はその補助をしながら、土魔法でテントを作ったり、寝台を作ったりして、寝所を整えた。


 そして、俺は前から考えていた風呂を作成してみた。1m四方の穴を掘り、表面を滑らかな石にして、水が漏れないようにした。

 川から溝を掘って水を流し込み、反対側から川に流れ出るように水路を作った。


 後は火魔法でお湯にするだけだ。

 ファイアボールを投げ込むと水が激しい音を立てて蒸発してしまった。


 師匠が、俺がやっていることに気がついて手を貸してくれた。

「水とお湯の混合魔法で熱湯を入れて、それを川の水で薄めるようにした方がいいさ。風呂のお湯全量を魔法で生成するとかなりの魔力を消費するが、少量の熱湯であればそこまででもないからね。それにしてもお風呂とはいいものを作ったじゃないか。今日はゆっくり休めそうだね。お風呂は私がやっといてやるから、あんたは、この周りに土魔法で壁を作っておきな。ちゃんとした防御ができれば、この辺りは魔物も強くないから、寝ずの番も必要ないからね」


 俺は魔力切れ寸前でへとへとになりながら、高さ2mほどの壁を周囲に3重に張り巡らした。


 疲れ果てて座り込んでいると風呂の準備を終えた師匠がきた。

「う~ん。60点だね。まず、壁の高さはいいが、こちらから周りが見えないのも不安になるものだから、10cmほどの隙間を壁に開けて、周囲の様子がわかるようにする方がいい。あとは壁にボア系の魔物は壁に体当たりしてくるから、ぶつかるとけがをするようなでっぱりを作っておくか、壁の周囲を土と水の混合魔法で泥沼にしておくのも効果的だ。あとはやっといてやるから、あんたは休んでな」


 サランは、ヌルメスの街でいろいろ調味料をそろえていたようで、今日の食事はどれも本当に美味しかった。

 ラウラーラ師匠とケンブは当然のように蒸留酒を空けて飲んでいた。

「本当は野営するときは酒を控えるんだが、ここは魔物も少ないし、ほぼ完ぺきな防御陣が作れたから、今日はよしとしよう」


 休んで、食事をとったことで、少し魔力が回復した俺は、今日の魔物との戦いを思い出していた。

 全部で25体の魔物を倒したが、俺が倒した魔物は先制攻撃でストーンキャノンをぶっ放したものだけだった。

 一度こちらに気付いた魔物にもストーンキャノンは当たるし、ダメージも与えられるが、魔物が倒れないので、結局、サランかケンブがとどめを刺していた。

 明日は混合魔法を試そう。




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