パートナー選びって?
清明が招待した女性達御一行は、コンコーネ領見学ツアーよろしく、領内のあちこちを見て回った。そのメンバーは
・理知的なキャラハン(30代)
最初に清明が気になった女性で、王都でのデートなしで、清明が招待した女性
・陽気なムービー(25歳)
コンコン会でも積極的に話しかけてきて、ついつい興が乗って王都デートに至った女性
清明にとって、女性としての魅力があったわけではないが、とにかく一緒にいると面白い話題がつきることなく、しかも気配り上手な彼女と一緒にいると疲れることなくむしろ気持ちが晴れ晴れとしてしまうので、コンコーネ領を見学したい!と言う彼女の希望を断り切れなかったのだ。
・かわいい系のチッチ(20歳)
15分スピーチの時の観衆の中にいた彼女を一目見たときから、そのキラキラとしたまなざしのとりこになってしまった清明
王都デートの時には、彼女の何気ないしぐさや表情にときめいてしまった!
もしかして これは鯉ではなくて恋?
もしかして これは一目ぼれ?
と心弾む清明であった。
・・
清明のデートに一切 口出ししなかったスカイだが、影からの報告を聞いて、スカイは内心あきれていた。
思わず クラン仲間にぼやいたら
「ようやく 清明にも春がきたのだ。良いではないか」コンラッド
「モテ期ですね。
この機会に 配偶者が決まるといいですね」デュラン
「こういうのを 男の夢っていうのかな??」ボロン
「へぇー 君もそういう夢を見るの?」ミューズ
「小説に良くある話だろ」ボロン
「しかし 3番目の娘は 完全に清明の理想の公爵夫人からは離れているのではないか?
結婚後に苦労するのは清明だろうに」スカイ
「恋のち結婚。
恋した人と結婚して同志としての絆も深める人と
恋のときめきと、仲睦まじく暮らせる相手は別って人もありますからねぇ」デュラン
「僕は ときめきと、安らぎと、同士愛が全部一人に集約されているのがいいな」ミューズ
「僕は どっちかというと 同士愛より同志である方がいいかな」スカイ
「うーん それらは かなりむつかしそうな気がしないでもない」ボロン
そんな クランメンバーの感想も知らず、清明は3人の女性達を連れて、コンコーネ領の案内をがんばった。
・・・
その結果
・チッチ
「とっても楽しかったです♡
でも 今すぐ結婚するのは無理かな。
それに 公爵夫人って 思ったよりもお仕事が多いですし
申し訳ないけど コンコーネ領って遊び場所が少ないから
私 婚約者候補おります!」
まさかのリタイア宣言に 崩れ落ちる清明
それを見ていたキャラハンがものすごく傷ついた表情をした。
「やっぱり 若い子がいいのですね、清明さんは」
「私は チッチさんの若さの輝きも
キャラハンさんの理知的で落ち着いた魅力も好きです」
清明はあわてて フォローに回った。
「じゃあ 私は?」ムービーが 珍しくまじめに問いかけた。
「ムービーさんには 断れない魅力ってのがありますね。
今まで 私が出会ったことのないタイプの方です。
それを申せば キャラハンさんもチッチさんも、初めてのタイプです」
清明。
「と言うわけで失礼しまーす」
とチッチはさっさと 荷物をもって帰ってしまった。
清明は思い切って言った。
「ムービーさんには申し訳ないのですが、
今は キャラハンさんにお時間を頂きたいのです。
ムービーさんとは 王都でも何度かデートをしましたが
キャラハンさんとは、今回のコンコーネ領の案内が、コンコン会を離れて過ごす初めての時間です。
私は もっとキャラハンさんのことを知りたいので、この後は、キャラハンさんさへ良ければ 彼女とともに過ごす時間が欲しいのです」
「だったら なんで チッチが辞退宣言を出した時に そんなショックを受けた顔をしたのですか?」キャラハン
「そりゃ あっさりと振られたらショックですよ。
それに、公爵夫人の仕事が多いとか うちの領に遊びが少ないって言われることは覚悟してましたけど、それを面と向かって言われたら やっぱりショックだったってだけです」清明
「わかっていても 面と言われるとショックなのは、私も同じですけどね。
次のデートがあるとすれば その時には 清明さんから誘ってくださいね。
ただし その時には 私が本命と決めてからにしてくださいね」
そういって、ムービーも去って行った。
「申し訳ありませんでした」
その後ろ姿に向かって 清明は深々と頭を下げた。
キャラハンは、
「今日は いろいろあったので これでお開きにしましょう。
私は あと2泊しますから、明日 気持ちを改めて デートに誘ってくださいね」
そう言って 宿に引き上げた。
・・・
その日キャラハンと別れた後、清明はすぐにスカイに泣きを入れて、クラン館に送ってもらった。
ちなみにスカイは 国王業務があるからと言って、清明だけを転移させて自分は知らん顔を決め込んだ。
清明から、コンコーネ領ご招待ツアー(前半)の顛末を聞かされたドラゴンクランの面々は・・・
「こうなることくらい あらかじめ予想できたのでは?」ボロン
「婚約者選びに夢中になりすぎて 選ばれる側の女性の気持ちにまでは思い至りませんでした」清明
「コンコン会は あくまでも出会いの場であって、男が複数の女性をえり好みする場じゃないだろうが!」ボロン
「だって あんなに多くの一般女性からプロポーズされて 一人に絞り切れなかったんです!
それに 1対1の交際をスタートしてから振られるのが怖かったですし。
最初に魅かれたキャラハンさんと なかなかデートできなかったので
彼女を待っている間に、他の女性からの興味を失ったらとか
結局彼女に振られたら その時にはもうほかの女性が別の相手を付き合始めていて 私の相手をしてくれる人が残ってなかったらとか考えてしまって・・」清明
「その気持ちは わからんでもないがのう。
オオカミの世界では 選ぶのは雌であって
雌は 求婚者たちが互いに競い合って一人に決まるのを観察しておるからな」コンラッド
「観察する意味あるんですか?」デュラン
「そりゃ 雌にも 雄の好みがあるから。
競いあう雄のうち 特に気に入った雄がいれば、その雄に加勢して
気に入らぬ雄を追い払うのさ。
もっとも 基本は 強い雄が選ばれるのだが」コンラッド
「そうなんですか。
ただ 待っているだけではないのですね」デュラン
「当然じゃ」コンラッド
「今は オオカミじゃなくて 人間の清明と女性の話に集中しようよ」ボロン
「なにを 熱くなっているのだ?」コンラッド
「そりゃ 清明のこれからがかかっているから 気になるよ」ボロン
「はぁ 素直に 私の気持ちを話して キャラハンさんに赦しを請うしかなさそうですね」清明
「うーんどうだろう。
少なくとも 明日の朝は、彼女が目覚めたときに 彼女の気分がよくなるような花束を彼女の宿に送っておくとか、彼女の好きな朝食とかお菓子を添えて贈るとかして 喜ばせたほうがいいと思うな」ミューズ
「誠意の押し売りよりも 彼女を喜ばせる努力かぁ」ボロン
「ていうか 誠意も喜ばせる努力も 彼女が受け止めやすいように示す配慮が必要だね。
どっちか片方だけではなくて。」ミューズ
「正しい意味で 相手の顔色を見ろってわけですね。
独りよがりはダメってことですね」清明
「そうそう。でも実際には それが一番むつかしいんだよね」ボロン
「へぇー君でもそうなの?」ミューズ
「俺 それが苦手だから 最初から恋愛あきらめて独身路線を走ってるのに」ボロン
「へぇー」デュラン・ミューズ・清明
「だからこそ 勇気を出して婚活している清明には幸せになって欲しいな」ボロン