コンコン会
国王の仕事の一つは、官僚や独身の地方領主達の愚痴の聞き役である。
なにしろ王国の礎は、身を粉にして働く領主と官僚達にありと言っても良い。
王国内の人々が 思想・信条・種族により対立もせず、各地の生産活動が分業化していても物流が円滑に回り、飢える者なく日々の生活がすぎていくのは、それらの調整役として官僚と領主達の献身があればこそなのだ。
そして 官僚と領主達に求められるのは、無私の心で公平に冷静に仕事をすること。
だから、善良すぎて、我欲のうずまく世情に弱いという側面を持つ独身官僚たちも多い。
(さすがに結婚して家庭を持てば、家族のために 面の皮も厚くなるのだが、独身時代は まだまだ潔癖で 個人的な事柄では行儀の良さが裏目にでることもあるのが良家の子女というもの)
というわけで、王様は直接あるいは影を使って、情報を集め 時には対策を講じることもある。
目下の懸案は、若手官僚達の婚活である。
「親族に良き仲人がいなかった場合、己に釣り合った異性との出会いの場を持つことそのものがむつかしい」と言う話は、清明だけでなく、自分の部下達からも 影の報告からも良くある話であった。
官僚達の出会いの場としてつくられた「xxxx」は風紀上の問題が
独身の貴族・元貴族たちの交流会が、清明の言うような商談会になってしまっている
ということなので、新しく 婚活のみを目的とする「コンコン会」を開くことにした。
参加資格は、「婚活を目的とする貴族・元貴族・官僚の独身者限定、商談禁止」である。
「コンコン会」では、プロフィールカードを首からかけて参加する。
カードには、
氏名・個人識別マーク
結婚希望時期を「半年 1年後 3年後くらい」の3択で明記
現在の生活拠点(地域名)、結婚の為の転居の可否、結婚後の転勤の可否orどちらともいえない
を記す。
この 首からカードをかけるのはダサいという意見も多いのだが
さりげなく話しかける相手を選ぶのに必要な情報は 最初から明示しておいた方が良いということで、首掛けカード式になっている。
氏名の横に個人識別マークをつけているのは、名前を覚えきれなくても、マークと言うのは案外記憶に残りやすいからである。
それゆえ あとで 「◇ごろに△に居たxマークの人の名前をこういう理由で知りたい」と受付に問い合わせれば
それが だれのことがかわるようになっている。
もっとも 回答がもらえるのは、受付からマークの人に対して「〇〇氏よりかくかく問い合わせがあったが お名前をお教えしてもいいですか?」と問い合わせがあってそれにOKがもらえた場合のみだが。
さらにその日の会合にグループで参加する者には、グループごとに同じアイコンを、カードの隅につけることにした。
これは 婚活会に参加した者達が、裏で変な噂話を広めるのを防ぐためである。
国王の肝いりで開かれることになった、参加者の身元明瞭な婚活目的のコンコン会。
最初の半年は、各部署長が協力して、コンコン会の開かれる日は残業なしとしたので、独身者たちは、集団で職場単位でまとまってコンコン会に参加した。
もちろん 受付を済ませれば、各自ばらけて会場内を回遊して回ることが推奨されている。
というか、グループメンバーが重なることのないように、別々の入り口を割り当てているのである。
それは せっかくの出会いのチャンスを有効活用するためでもあり、
さや当て・足の引っ張り合い・連れを引き立て役やおとり役にすることを減らすための工夫でもあった。
しかも スカイをはじめとする王家の影による 陰からの見張り付き
(良家の子女、将来有望な若者を守る為!)
そう スカイは 国王も務めながら、必要なら今でも影役も務めるのである。
なにしろ 影を務められる魔法使いは希少なので。
(はやく 後継者が育たないかなぁ と思うスカイではあったが
次世代が生まれてこないことにはどうにもならない><)
さらに、首からぶら下げるプラフィール欄には、自分が求める婚約者像も自由記載できるようになっていたので、結婚を目的とする男女の出会いの場として
コンコン会を大いに活用してほしい!と言うのが、スカイ国王の願いでもあり、
職場で独身者の愚痴に付き合わされる役職者の願いでもあった。
「ここまで 出会いの場をセッティングしたんだから
あとは自力で頑張ってくれ!」
「残業が問題なんじゃない
君たちの 対人スキルの貧弱さが問題なんだ! と言いたくても言えないこの辛さ」
「職場を婚活に利用するな!」
「変な異性にひっかからないでくれ・・(仕事の効率が落ちるから・せっかくの人材が無能になってしまうから)」
↑管理職の本音である。