こうもりのように
かつて コンラッドに先導されて初めて地中世界に訪れたときは、ゴンの生誕の地である大洞窟から転移を繰り返して、地中の川が流れる細長いトンネルを抜けて、張り出し岩まで行った。
今日の飛行訓練は そのトンネルを使って 「狭くて曲がりくねった闇の中のトンネルを飛ぶこと」であった。
「蝙蝠のように 音波を発して その反響によってトンネルの形状と己の位置を確認し飛ぶのが最終目標だ」
コンラッドは ゴンの背中に上に載って重々しく言った。
そのために まずは準備体操代わりに 地中の川岸に座って 「ほうほう」と息を吐いては 音波が広がりゆくさま 反射してくる波を感じることから始めた。
「うー寒い」ゴンは 息を白く吐きながら身震いした。
「どうせ吐くなら もっと幅広く薄く吐いてみろ」コンラッド
「なんなら 息が見えやすいように もっと寒くしてやろうか?」
「鬼!」
ゴンは ちょっと悪態をついてみた。
「どうせなら もっと はっはっはっ とタンキングするように吐いてみろ」
コンラッドの無情な言葉を振り払うかのように ゴンはバサリと飛び立った
「わっ わつ わっ」短く声を叩きつけるように吐き出しながら トンネルを飛ぶ
すると 「うゎ うゎ うゎ」とこだまが返ってくる
「わーおもしろい!」
今はまだ コンラッドが 魔法の明かりを灯してくれているので 己の周囲だけは明るい。
「障害物が近いと 返ってくる来るこだまが早い!」
気づいたことを嬉しそうにコンラッド報告しながら 「わっ わっ わっ」と声を出しながら張り出し岩への出口と竪穴の下との間のトンネルを行き来するゴン
「自分の声が大きいと こだまが重なり合ってうるさいや」ゴン
「声の勢いが強すぎると いつまでもこだまが続いて重なり合って ややこしい
それに 声を出しすぎると のどが痛い><」ゴン
いろんなことに気づいて いろいろな発声を試すゴン
出し
「ねえ コンラッドも 声を出してみて」
コンラッドは 神獣やドラゴンにだけは聞こえる程度の声で ほーと長く息を出してやった。
音の反響に敏感になっていたゴンは 注意深く その声の広がりに耳を澄ました。
ゴンは コンラッドを背中に乗せて 静かにトンネルの中を行き来し始めた
自分の羽ばたきで コンラッドの声の響きを乱すことのないように気をつけながら
コンラッドもまた 人族には無音に聞こえる雄たけびをあげてやったり
「h h h」と短く息を切るタンキングで 障害物との距離と・己の飛行速度を ゴンが感じられるようにしてやったり
いろいろな 音波を発してみせた。
・・
その日 城での夕食の席で ゴンは 満足げにボロンに報告した
「きょうはね 蝙蝠さんごっこをして遊んだんだよ。
僕 もっと いろんな声が出せるようになって
暗闇でも飛び回るように 音であたりを見れるようになるまで 頑張るんだ♬」
「暗闇の中でも飛び回り 無灯火飛行ができるようになったら 隠密もできるね」ボロン
「そしたら ぼく 偵察任務もできるよ♡
服部半蔵みたいな しのびができるといいなぁ」
(ゴンは 忍者スタイルの服部半蔵のファンであった。
目とまゆと鼻筋だけを見せて 武器を構えてきゅっと敵を見据える姿がかっこいい~と。
ミューズは 最近、 多次元世界を放浪していたころに見ていた娯楽映画やTVドラマのワンシーンを、念写でゴンに見せながら いろいろな物語を語り聞かせていたのであった。)
その晩 ゴンは ぬいぐるみのキューちゃんを抱きしめながら 黒いスカーフをなびかせながら 銀色に光る川の流れるトンネルの中を飛び回る夢を見たのであった。
・・
「にしても なんで 最初にゴンを凍えさせてまで、吐く息を白く見せる必要があったんだい?」
ボロンは ゴンが寝入ってからコンラッドに尋ねた。
「息も声も音波も 口から吐くもんじゃから。
耳で聴く音を視覚化せよと言っても むつかしかろ。
しかし吐いた息を目で見ておれば なんとなく音波を肌で感じたときに目で見るようなイメージが広がるのではないかと思ってな。
音を判別するのは聴覚神経かもしれぬが、音波は 全身の肌感覚でもあるからな
というか わしが そうであったから、ゴンにも試してみた」コンラッド
「言われてみればそうだね。
せっかく 外界の変化を敏感に感じていても それを自分の周りの空間イメージとしてとらえるには かなり練習が居るものなぁ」ミューズが相槌を打った。
「そっかぁ。そのための薄着かぁ
今日は いつになく ゴンが薄着というより何も着ずに出かけていたから心配してたんだ」ボロン
「うむ 飛行のあとは 温泉でしっかりと体を温めてきたが、
今夜は ゴンの寝袋の中に暖かい空気を送り込んでおいてやろう」コンラッド
「よろしくお願いします」ボロン
※ 土日休日は 朝8時
月~金は 朝7時の1回投稿です
(おまけ)
大河ドラマ「黄金の日々」で服部半蔵をやっていた矢吹次郎さんは 千葉真一さんの弟さんでした!\(◎o◎)/!
柳生一族の陰謀の裏柳生衆の一人としても ちょいちょいインパクトのある表情が・・
印象的な端役さんとして気になって クレジットで名前を覚えた役者さんであります。
ただなぁ あの頃は 真田広之さんがとびぬけてかっこよかったから
同世代の時代劇・アクションの俳優さん達にとっては 厳しい時代だったかも・・
アクション個性派では 藤岡弘さんもいらっしゃったし。
1970年代は、多様なタイプのアクション派イケメン黄金期だったかも。