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ドラゴン・クラン(Ⅱ )よちよち編  作者: 木苺
     ドワーフ女性とデュラン
74/92

クラン案件

(7/7)

とうとうカンカンの工房の立ち上げ援助依頼が 正式にドラゴン・クランに届いてしまった。


「カンカンの策略に乗せられているようで 面白くない」デュラン


「せっかく ゴンの飛行訓練に集中できるようにクランの人手不足解消しようと 新規雇用したデュランを 別件でとられちゃうと困るよ」ボロン


「あーゴンの飛行訓練については 計画を見直して、1か月程度なら わしとゴンの二人訓練に 時々ミューズが協力してくれる体制で行こうかと思っているのじゃが」コンラッド


「あれ? ゴンには 僕の付き添いによる精神的支えが必要という話はどうなったのですか?」ボロン


「なにも ボロンがべったりとその工房に張り付くわけではないのじゃろう?

 むしろ デュラン一人で対応できる案件ではないのか?」コンラッド


「何を根拠に?」デュラン


「カンカンがドワーフギルドに出した融資申請の添付書類の、営業計画を見れば、

 初級~中級の鍛冶レベル製品の画一的量産品の安定した品質製品の販売により

 公的機関からの受注の安定を図るってことになってるよね。


 これって 君や君のお父さんの鍛冶に関する研究と合致するテーマじゃないか。

 『画一的品質の製品の安定生産』をカンカンの工房は目指しているわけだし

 その実現に向けて協力することは 君の研究成果の実地発表・具体化でもあるんじゃないか?


 それに ボロンがドワーフギルドの支部長をやっていた時の実績として ドワーフギルド内で評価されているのは、

ボロンが研究して編み出した技法を、『一般の生産者に教えて商品販売につなげた』プロセスを報告書に明瞭に記したことにより、

当時の生産者が引退しても、後の世代やよその地域で、同じことをやろうとしたときの基礎資料となりうると評価されたことにあるんだからさ、

デユランが カンカンの工房を指導して実現させたことを きちんと報告書に記せば、今度は デュランに対するドワーフギルドの評価の高まりにつながるんじゃないか?」ミューズ


「しかし 私は 生産の組織化までは 指導できたとしても、経営とか人事管理は専門外です」デュラン


「だから クラン案件なら、その方面で定評のあるボロンに相談したり協力してもらえばいいじゃないか。」ミューズ 


「しかし この仕事と ドラゴンクランの本来の目的である「幼龍の生育」と、どう関係するのですか?」デュラン


「大人になったドラゴンが 龍の庭を拠点とするならば、人間やドワーフの居住地の上を飛び回ることになる。

 だから ドラゴンクランが 人間たちの組織の中心である王宮や、ドワーフの組織の代表であるドワーフギルドと良好な関係を保っておくことは、ドラゴンの立場を代弁するドラゴン・クランとしては望ましいことであると思うがの。


 それに デュランや、お前さんが ドワーフギルドやカンカンの工房からドラゴン・クランに対する謝礼をたっぷりともぎ取ってくれば それもまた お主によるクランへの貢献というものじゃ」コンラッド


「クランメンバーが いくら龍の庭での自給自足を目指しているとはいえ、

 やっぱり 外の世界で買い物をするし、君に対する給料も含めて

 クランにおける現金支出は これまで、ボロンとか清明が ドラゴン・クラン案件として外部からの依頼をこなしてきた謝礼金によって賄われているんだから

 君もまた クランメンバーである間に、現金収入を稼いできてくれたら

 それはクランに対する貢献になるんだよ」ミューズ


というわけで 

「ドワーフギルドは、カンカンの工房、正式名称「新工房」に対して

 融資を行うかどうかを決定するための評価依頼」をドラゴン・クランに出した件について、クランとしては依頼を受けることを決定した。


「じゃ その為のデュランの査察予定なんだけど」ボロン


「査察に行くまでもなく、この職人リストと、設備リストを見ただけで

 事業としては成り立たないことは明白です」

デュランはあっさりと言ってのけた。


「はぁ?」「\(◎o◎)/!」

見事なちゃぶ台返しのごとき デュランの発言にのけぞるミューズ達


・・

検品を繰り返しただけの一時的業績を、工房の実力と勘違いしたカンカンとカンカンの父の弟子


大風呂敷をひろげず 借金なしで 地道に工房経営をやるべしというデュランの忠告


・・

それを聞いてミューズは反省することしきり

 「うわべだけ見て判断しちゃだめってよくわかったよ。」


 「こういうことは、舌先三寸で成り上がろうとする役人根性によくあることさ

  というわけで、ドワーフギルドへの報告書を、デュラン、君が書いてね」ボロン


 「それをドワーフギルドに持っていて、『依頼を受けました。報告書です。謝礼くださいね』と交渉するのは僕がやるから。」とボロンは笑顔を向けながら続けた。


今度は ミューズとデュランがのけぞった。

 「がめつい商売をやっているって悪評が立ちませんかね?」デュラン


 「いやー 専門家の判断と それをドワーフギルドの面々が納得できる形の文書にしたてる技術に対する謝礼、これすなわち顧問料ってやつだよ」ボロン


「君 やっぱり そういう方面では凄腕の仕事人だねぇ」ミューズ


「それって 暗に クランの中では 一番役立たたずで ドラゴンの背中で泣いてるだけなのにって言ってるよね」ボロン


「いえいえ 魔力の強さや魔法の技量だけが 社会の基準じゃないってことをしっかり学ぶ機会に恵まれて うれしいって感想です」ミューズ


・・

その後、カンカンは融資を受けることなく、今の状況でいかに工房を経営していくかに関する助言を受ける為、ドラゴンクランに少額の顧問料を支払い、1年間、ボロンやデュランから助言を受けて、自分が経営する「カンカン工房」を軌道にのせた。


ドワーフ社会においては、「鍛冶工房の経営者が、鍛冶師としての知識・経験ゼロなのに!」と驚きをもってカンカン工房を迎えたが、

カンカンの鍛冶製品の鑑定眼の確かさが、工房製品の信頼性を担保し、職人達の腕を鍛える源泉となっている点に、新しい風を感じる者達も居た。


※ 土日休日は 朝8時 

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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