見解の相違
前述のように、スカイからカンカン側の事情と主張を聞いたデュランと、
デュランからカンカンの主張とデュランの記憶との齟齬を聞かされたスカイとボロンの3人。
ちなみに ボロンもドワーフの鍛冶工房の話とあって、ドワーフギルドを通してそのあたりの情報収集に協力し、デュランの記憶の正しさを確認していた。
さらにミューズが野次馬として参加しての相談会。
「一応 クラン仲間に関わる話だからね」と。
「それで この話 どうしよう?」スカイ
「うっちゃといたらどうです?」デュラン
「王宮窓口まで彼女が来ちゃった以上、君の口から引導をわたしてもらわないと
王宮のイメージや王の名に傷がつくよ」スカイ
「あのさ、とりあえず彼女と話をして、なんならお見合いみたいな感じで結婚相手とするに足りるかどうか考えてみたら?」ミューズ
「はぁ? なんでそうなるのです。
自称婚約者なんて 怖いじゃないですか!」デュラン
「自称というよりは とりあえず婚約者っぽく名乗りを上げて、君にまで話を持っていこうという策略のように思う。
言ってみれば 彼女は自分の半生かけた事業を乗っ取られるのを阻止しようと必死なわけだし、
その辺でさぁ 彼女の手口のいやらしさを彼女が素直に悪いと認めて謝れるかどうか、
そして 君自身が 彼女の置かれた立場を考慮して、彼女を受け入れられるかどうかを吟味して
折り合いがつけば、君にとっても、やり手の工房運営者と結婚できるチャンスじゃない?
つまり 君としたら、タダで鍛冶場が手に入って、経済的な不安なく鍛冶に関する自分の研究の実践ができる後半生が手に入るかもしれない話でしょ。
もちろん そのあたりで 君が彼女と結婚した場合の 君の立場とか君の経済的利益とかをしっかりと確保して結婚契約しないといけないし、その契約案を彼女が認めればの話だけど。」ミューズ
「ドワーフにとって 結婚とは 互いの愛情が前提にあるの!」ボロン&デュラン
「でも 人間たちって 割と『お見合い』という名の契約結婚もあるよ。
もちろん お見合いの時に、相手に対する誠意とか結婚生活における愛情の深まりを期待できる相手かどうかの見極めを重視する人もいれば、全然そういうことを話し合おうともしないし気にもしない人もいるけど」ミューズ
「ちょっと 二人で相談してきていいですか?」
ボロンとデュランは互いに顔を見合わせた後、言った。
「どうぞ」スカイ&ボロン
(中座するボロンとデュラン)
しばらくして二人は戻って来た。
そしておもむろにボロンが言った。
「王宮のイメージと王の名を気にするスカイに対するぼくとデュランの個人的貸しとして、その女性と会ってもいいとデュランは言っている」
「ただし それはあくまでも、彼女がこのような騒ぎを起こして、僕と無理に会おうとしたことへの抗議の為です」デュラン
「一応ドラゴンクランの責任者としては、クランメンバーを守るべき立場の王宮と国王が、このようなやっかいごとをクランに対して持ち込んだことを厳重に抗議します。今後 2度とこのようなことがないように。
しかし、デュランがスカイ国王への気遣いから 問題の女性と会っても良いというのならば、ぼくとしても黙認せざる得ないかなぁと これまたスカイへの個人的気遣いとして」ボロン
「いや そんなややこしいことを言うなら きっぱりと断ってくれていいよ。
後々のことを考えれば、この話は クラン長であるボロンの厳重抗議で終わったということにしよう。
ただ そのあと 僕が個人的にデュランに話を持って行って、デュランがそれに応じたということにしてくれたらいい。
つまり 僕の個人的な借りはデュランに対してのみってことで」スカイ
「いいですよ。それで。」ボロン
ボロンとスカイの間で クルクル目を回すミューズ。
ため息をついたボロンが、ミューズにこそっとささやいた。
「別に僕とスカイがけんかしているわけではないから。
ただね 「国王とドラゴンクランとの関係」と「クランメンバーであるスカイが国王でもあること」との話が 最近錯綜していて収集が付かなくなると困るから。」
「その点は 僕にとっても悩みの種だよ。
帳尻あわせばかりしていたら だんだん こんがらがって なぁーなぁーになりつつあるような・・・」スカイ
「だよねぇ」ボロン
「それじゃぁ 僕のお見合い提案は却下ってことかな?」ミューズ
「うーん その点に関しては なんとも言えませんねぇ。
ただ そういう考え方もあるという指摘があったということは 心にとめておきます」デュラン
「早い話が 今のデュランには不快感と立腹しかないけど
別の出会い方をしていたら 確かにミューズのような考え方もありかなと思ったってこと」ボロンが解説した。
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