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ドラゴン・クラン(Ⅱ )よちよち編  作者: 木苺
     ドラゴンクランの日常的お仕事
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3か月後

そうこうするうちに デュランの試用期間の3か月目が終わろうとしていた。


デュランは すっかり家畜たちとなじみ、農作業も調理も 森の手入れももできるようになった。


そして 今後のことを話し合う時がきた。


本採用への移行を希望するデュランに対して ボロンは尋ねた。


「ここでは ぜんぜん 鍛冶の機会がない暮らしだけど 本当にいいのかい?」


「確かに 金属に触れる機会は 全然なさそうですけど、生物関連の鑑定や観察の機会が増えて

 それはそれで刺激になります。


 少なくとも最初の1年は 本採用契約してもらってここで働きたいです。

 その契約を更新するかどうかは 1年後に決めたいと思います。


 守秘義務と 離職する際の忘却魔法のことは理解して受けて入れいますから

 僕が短期で退職しても 機密漏洩の心配はありません。」デュラン


「だけど 忘却魔法を使うと君の中に1年間の空白期間ができるよ。それって経歴的にどうなの?」

ボロン


「王宮をやめたあと、3か月間は国王の紹介でドラゴンクランのお手伝いをして その内容については守秘義務があるから話せない、そのあと 1年間のリフレッシュ休暇を取ってから ドワーフの鍛冶師にもどったということにすればいいと思います。

 リフレッシュ期間のことは 自分から話さない限り 人からはたずねられることはないという暗黙の了解があるから大丈夫なんじゃないかなぁ。」


「たしかに そういう風潮はあるよね。」ボロン


「もちろん 僕としては、仮に1年で退職することになっても、清明さんのように 外部協力者として御縁を続けて行ければいいなって思いますし、あるいは この先 ドラゴンクランで 鍛冶・錬金需要が出てきて あるいは僕の専門の鑑定・測定の仕事の需要が出てきて 仲間としてずっと一緒に活動していけるなら うれしいですが。」


「うーん その点については 現時点では何とも言えないなぁ。


 ドラゴンクランの本来の目的が ゴンの健やかな成長を手助けすることにあるから。

 そして ドラゴンの存在を秘密にするというのが 一番の最優先課題だから 採用時にそのことを言えなくてねゴメンね。」ボロン&ミューズ


「はぁ こればっかりは 入って\(◎o◎)/! 来てびっくりでした。


 だけど ドラゴンって 存在そのもが特別ですから、秘密にしなければならないこともわかりますし、その割に ゴンさんが あまりにもクランメンバーとして馴染みすぎていて 別の意味でもびっくりしています。


ほんとそういう意味では この先 なにがあるのか それとも何もなくて今までの3か月と同じ状態が続いていくのか 全然予想がつかないので・・

やっぱり1年後に更新の是非を考えるということが 現段階では一番いいかなぁというのが 僕の気持ちでもあり希望です。」


「その1年後に再考するポイントってなに?」突然ミューズが突っ込んだ。


「実はですね、王宮に努めていた時も、時々鍛冶場に出入りしていたんです。

 でも ここでは さきほどボロンさんがおっしゃったように鍛冶の機会が全くないという点に関してです」デュラン


「ほかの種族から『騒音だ』って言われるかもって思うと 趣味で鍛冶をやるのは気が引ける。

 僕自身 家を出てから鍛冶とは縁がなくなってさみしいなって感じることが 昔はずいぶんあったから。

 まして 君は元が鍛冶師だったみたいだから」ボロン


「館には 鍛冶場の設定もあるのに」ミューズ


「しかし 鍛冶には音と熱が必要だし、鍛冶をするとなれば継続的な鍛冶のメンテが必要だし

 今まで 鍛冶の必要性が出てくることなかったし

 クランはいつだって 時間と資源と人手確保がぎりぎりラインのやりくりだから

 個人の趣味で鍛冶をやるだけの余裕がないのは明らかじゃないか。

 たとえ それが有意義な実践的研究活動であったとしても」ボロン


「それは 私も理解しています。

 もともと町の中心に住んでいたドワーフたちが、町の発展に連れて人や家畜の居ない場所へと押し出されていった私たちドワーフの歴史といっしょに」デュラン


「周囲に対する遮音・遮熱と作業場の労働環境の快適さや効率とは両立としなかったしなぁ」ボロン


「対費用効果とも」デュラン


「そういうものなの?」ミューズ


「そういうものなんだ」ボロン

「はい」デュランもボロンと異口同音に答えた。



というわけで デュランの ドラゴンクランとのかかわりは 1年契約(更新検討会あり)の社員ということになった。



・・・・・

面談をした後の夜、デュランに気づかれないように、こっそりと集まったボロン・スカイ・ミューズ・コンラッド。


「ふー デュランって 察しがいいね。」ボロン


「だから 優秀だって言っただろ」スカイ


「確かに」ボロン


「君たちドワーフ同士もっと気が合うかもって思ったのに 案外 警戒心出しまくりだね」ミューズ


「ドワーフだから無条件に仲良くなれるわけじゃないよ。

 むしろ 魔法つながりで 君やスカイのほうがデュランと共通点が多いんじゃないか?」ボロン


「いあや 魔法にもいろいろあるからねぇ」スカイ&ミューズ


「しかし ダーさん達と一緒に仕事ができるという点では ボロンもデュランも共通しているぞ」コンラッド


「結局 彼を地底部の仲間に入れるかどうかによって今後のかかわりが変わるね」ボロン


「とりあえずは 新人募集の当初の目的通り、彼には 地上の留守番役をしっかりとやってもらおう」コンラッド


「そうそう。

 そもそも君たち 地底で何をやっているか 僕にまで秘密にしていたじゃないか!」スカイ


「いや 国王であるお主に 余分な心労をかけたくなくてだなぁ」コンラッド


「でも ゴンか 突然話を聞かされた僕の身にもなってくださいよ。みずくさい」スカイ


「すまん」コンラッド


「まあ 僕は ゴンの生まれた場所を知ってましたからね。

 冬ごもりの間に あなたたちが なんかやってるだろうとは思ってましたけど」スカイ


「しかし おぬしが ゴンに地底の話をしてはならんということをじっくりと説明しただけでなく

 ダーさんや牧人達に、口止め魔法をしっかりとほどこしてくれて助かったわい。

 わしは その手の魔法の扱いは苦手じゃから」コンラッド


「同じく」ミューズ


「それゃまあ 政治的配慮に基づく情報管理は 王の基本的心得の一つですから。

 心得そのものは コンラッド、あなたから学びましたが

 僕は それを 王宮の中で実地で鍛えましたから。

 師匠・スーパーバイザーとしてのあなたとは 立ち位置が違います」スカイ


「やれやれ 立派に育ったわが子に一本とられたわい!」コンラッドは笑った。


「ぼくは そういう腹芸なしの庶民なんで、秘密を抱えたつきあいってしんどいよ」

ボロンはぼやいた。


「あーそれで 君は はたから見てると過剰ではないかと思うくらい デュランに気を使ってたのか!」

合点(がってん)がいったとばかりにミューズはこぶしを反対の掌にをポンと軽くうちつけた。


「そうそう それで デュランにも微妙に距離を感じさせちゃっているような気がする」ボロン


「そこまでの距離を奴が感じているとは思わんな。

 単純に お主の気遣いに感謝しているように見えるがな」コンラッド


「だといいのですけど」ボロン


「にしても君とデュランの鍛冶に関する周りへの気遣いについての話は意外だったよ」ミューズ


「同じく」コンラッド


「ドワーフが街づくりの中心となっているにもかかわらず、町の発展とともにドワーフが自分達が建設し基盤を作り発展させた町から姿を消していくことに疑問を感じなかったのかい?」ボロン


「ぼくにとって 町とはすでにでき上っている場所であり 訪問先に過ぎなかったから

 歴史って 効能書きの一項目でしかなかったよ、ごめん」ミューズ


「鍛冶につきものの音と熱について、ドワーフが周囲のほかの種族と軋轢があったという歴史は知らなかった」

スカイ


「そりゃ 歴史に残るほどの問題が起きる前に 僕たちが引っ越しをしていたからだ」ボロン


「やはり ドワーフ族というのは 他者への気遣いに優れた一族だな」コンラッド


「僕たちにとっては 作業につきものの「音と振動と熱」との付き合いは、生活そのものでもありますから、自分達がそれに耐える・適応することの中には、それらに我慢できない人たちのかかわりの持ち方を工夫することも含まれていますから」ボロン


「うーん 今まで そういう感覚がなかった僕としては びっくりするやら、自分の無神経が申し訳ないやらだよ。ごめん」ミューズ


「だからこそ 金属製品を作るときには耐久性を重視するんだよ、僕たちは。


 でも 耐久性のある商品を生み出すと、その製品が一巡した後は新規需要が激減して、僕たちの存在意義についての消費者側からの相対的価値=評価が下がることでもあるのは身に染みて知っているというから、ドワーフ側の共通理解でもあるから、

政治的圧力集団・利権屋になって勢力維持を図る道を選ばなかった僕たちは

生きるためのサバイバルを いろいろとしてるんです」ボロン


「一大消費者集団である人間たちの王として そのあたりへの認識・継続的意識化についても

 教育課程に反映させるべきなんだろうなぁ。

 しかし 利権屋どもが好き勝手に吹聴するイデオロギーを振りかざした教育への介入=宣伝活動と

 人として安定した社会生活を維持するための理の伝授としての教育内容との区別のつかない輩が多いのが厄介だよ」スカイ


「その集団が築き上げた富だけを欲しがって、その集団の文化・歴史を認める気のない難民を拒むことの重要性・必要性がそこにあるのだ。

 歴史を ただの能書きと思わせないことと共にな!」コンラッド


「価値観を共有する集団内における、個人的な意見・わがままを押し通すためのテクニック(メンバーの感情を揺さぶる手管)に関する観察に基づいた『同調的圧力』技法に、政治的意味付けをして

他者の生活基盤を脅かす外部侵入者の移入を正当化する護符に変貌させるような輩のテクニック(=論理のすりかえ)を許さない、そういう断固とした姿勢を 集団の責任者は身に着けるべきというコンラッドの教えを 僕はいつも心に留めていますよ。」スカイ


「この国には 『外国』がないのにぃ?」ミューズ


「外国ができないように 僕たちドワーフ一族も気を配っているんだから」ボロンが笑いながら言った。


「その点に関しては 僕たち人間と魔法使いは ドワーフ哲学に感謝すべきなんだろうなぁと

 思います。人間の中には ドワーフを頑固者よばわりする輩が居てすみません」

スカイも笑いながら言った。


「だったら 酒飲もうよ。酒!」ボロン



というわけで、デュランと清明もよんで、ワインと白樺ジュースで宴会を開いたとさ。


題して「デュラン君の社員契約おめでとう会!」

 ワイン提供 コンコーネ領主清明

 資金提供  スカイ


 主催 ドラゴン・クラン


 演目 ボロンによる歌と踊り


今回は ドワーフ民謡にはデュランによる合いの手が入ったり、

ボロンによる民謡踊りには デュランが伴奏をつけたりで 大いに盛り上がったそうな。


もちろん 前半は ゴンゴンちゃんも参加して 演目をしっかりと鑑賞してから、

スカイと一緒に引き上げました。王様と子供には 睡眠が大切なので。






※ 土日休日は 朝8時 

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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