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ドラゴン・クラン(Ⅱ )よちよち編  作者: 木苺
     ドラゴンクランの日常的お仕事
53/92

食事当番

基本の食材は マジックバックの中に入っているのだが、

野菜類は クランの畑から採ってくるものが多い。


旬のものに関しては、「朝どりともろこし」のように早朝に収穫して 収穫後3時間以内に調理して食べることが推奨されるように、収穫と調理が一対になったものも多い。


それゆえ、ミューズは毎日せっせと畑を見回っては、野菜を収穫したり その予定をメモしてボードに掲示している。


一方 鶏の卵を集めたり、鶏や七面鳥の食べごろを見極めて捌くのは 家畜の世話同様ボロンが主に行なっていた。


毎日の献立は これら収穫予定・状況に合わせて考えている。


問題は キノコや木の実などの収穫時期の見定めである。


これまでは 館のそばの資源林の様子やコンラッドの鼻やスカイの勘を元にして、

適当に川向こうの森林に採取に出かけていた。

 が しかし これには当たりはずれがあった。

 やはり ある程度の収穫を確保しようと思えば、日ごろから森林を見回って 毎年微妙にかわる収穫時期にあわせて採取しに行った方がよい。


 さらに 確実に一定の収穫を上げようと思えば、年間を通した森林のお手入れが必要となってくるが、これは先々の課題として、今は とりあえず 森林の見回りのための人手を確保したいものだ。


・・・

デュランは 朝昼晩の食事の準備をしたり後片付けをしたりといった作業は、ミューズと一緒に2日ほどこなしたらあっさりと合格した。


ヒト族の中では長身の部類に入るスカイと清明、男性としては平均的(女性としてはすらりとした長身の部類)のミューズの背丈に合わせた館のキッチンは、人間男性の平均よりはやや低めのデュランにとって、棚の中のものをとるとき、足台を使わなければならないこともあったが、使いにくいというほどのことはなかった。


しかし ボロンと一緒に家畜の世話をしつつ、食べごろの家禽をさばく作業は初体験で、目を白黒させた。


「ここに来て、初めて町暮らしのありがたみを実感しました。

 お店に行けば、調理しやすいように下拵したごしらえされた食肉を買えることが どれだけありがたいことか。」デュラン


「僕もだよ」ボロン

「同感の意」ミューズ


「えっ お二人も もしかしてここに来てから肉の捌き方を覚えたのですか?」デュラン


「ぼくはそうだよ。一応 知識としては子供の頃に習ったけど」ミューズ


「実は 僕はエルフは菜食主義だと思っていました。すみません」デュラン


「菜食主義というよりも 家畜を育てたり捌くのが好きじゃないというだけ。

 それでも 他種族から下拵え済みの肉が購入できない時は、

 自分達で捕まえた魔獣を 魔法で解体して食べていたよ。

 でも ここでは 牛や鳥は 自分達で世話をしないといけないからなぁ」

ミューズ


「そうそう。いくら放牧していても やっぱり最低限の世話はしないと

 家畜も食用として育たない。

 まさか ドワーフ学校で習ったことを ここで実践することになるとは夢にも思わなかったよ」ボロンも相槌を打った。


「そういえば 確かに 副読本には細かく載っていましたね。

 授業では 『各自 自分で読んでおくように』で済まされましたけど」デュラン


「ふーん 君の通った学校では そうだったんだ」


「ボロンさんの居た学校ではどうだったんです?」デュラン


「『各自 副読本を読んで予習してから、村の専門家の所に見学に行ってレポートせよ』だった。

 それで 養鶏場とか 乳牛の飼育場 食肉加工場の見学と 牧場での下働き体験があったよ。

 見学時に 牧場の人から評定されて、合格したら実習体験ができて

 実習体験の時の評価が 採用試験の願書提出時の添付書類の一部に含まれていた」ボロン


「あー ぼくは家業の鍛冶屋に就職することが決まっていたから・・

 そういえば 一般就職する人は そんな風になっていましたね」デュラン


「一般就職組の中には そんな風に家業を継げる家の子をうらやましがるやつも多かったな。


 逆に言うと、鍛冶やそれにつながる職種一筋できた君が ここに来ると

 それ以外の雑多な仕事がメインになってしまって 大丈夫かな?という点が気になるんだよなぁ」ボロン


「その点に関しては微妙ですけど・・

 ほら 昔の職人達じゃないですけど、

 『昔は、心に決めた本業に集中する時間よりも 生活の為にこなす雑多な作業に費やす時間のほうがはるかに多かった。

 しかも 雑多な作業をおろそかにすると 生活が成り立たなくなるもんだ』ってことばもありますし。」デュラン


「そういえば 『日々の暮らしの中で 専門的視点を養うのが職人だ』ってセリフもあったな」ボロン


「そうそう 現実は 『一意専心の専門家でなければ評価されない(競争に負ける)』なのにねぇ」デュラン


「そのくせ、『総合的視野・関連領域との連携によって培われた複合的視点が重要だ』なんてお題目で人事に介入してくるやからが権力をふるいたがるし」ボロン


「アハハ もしかして それがドワーフ談義ってやつかい?」

ミューズは これまでたまに聞いたボロンのボヤキが、デュランとの弾んだ会話となっている様子を見て言った。


※ 土日休日は 朝8時 

  月~金は  朝7時の1回投稿です

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