顔合わせ
スカイ・ミューズ・ボロン・コンラッドによる面接を通過したデユランは
改めて忠誠と秘密保持の誓を建てて、3か月間の試験採用に臨むことになった。
スカイの転移魔法によって、龍の庭にある城に到着したデュランを迎えたのは、ゴンとダーさん達。
正真正銘のドラゴンを前にして パカンと口をあけたデュラン。
「ようこそ。はじめまして」
ゴンはにこやかに挨拶をした。
「ドラゴンがしゃべった!\(◎o◎)/!」のけぞるデュラン
「君の知っているドラゴンは しゃべらないの?」
不思議そうに首をかしげるゴン
「わ 私は ドラゴンとお会いしたことがなくて
失礼しました。」デュランは頭を下げた。
「じゃあ どうして ドラゴンがしゃべらないと思っていたの?
会ったこともないのに なぜそんな風に思い込んでいたのかな?」ゴン
「それは そのぅ 大変失礼ながら なんとなくドラゴンというのは
架空の魔獣だと思っていたものですから。
申し訳ありません」
「ショック!
ボロン、君も ドラゴンは魔獣で口もきけないと思っていたの?」
ゴンはボロンに問いかけた。
「とんでもない。
僕はずっと ドラゴンにあこがれていたんだ。
伝説になるくらい遠い昔に生きていた生き物だと思っていた。」ボロン
「だよね。
今まで 僕が出会った人たちは みんなぼくのことを話せる相手だと思って最初から付き合ってくれていたから、この人の反応には驚いたよ。」ゴン
「しかしゴンよ、ボロンのように龍にあこがれてわざわざ会いに来る者は
今の世ではボロンしかおらなんだように、
世間一般の人々は ドラゴンを言葉の通じぬ魔獣で凶暴だと恐れている者がほとんどだ。
それゆえ、ドラゴンの存在を知れば、襲われる前に殺してしまえという者と、
ドラゴンを殺してその体を金に換えたら大儲けできると考える輩しかおらぬのが
今の世だと思った方がよいぞ」
コンラッドが重々しく言った。
「えー うそー ショック~」ゴンがつぶやいた。
「人間たちは 自分達よりも大きな存在、力の強い存在をねたみ、憎み、おそれるんだ。
昔は人間も たくさんいる生き物の一部でしかなかったのに
人間たちが 徒党を組んで執拗に僕たちを狩り立て、
人間より弱い生き物を殺戮することを楽しみ、
自分よりも強い生き物たちを 姦計を用いて殺しては己が強くなったかのように錯覚してその死体を売りさばき、あるいはその死体を飾り物にして虚栄心を満足させ、人間以外の種族を滅ぼして言ったんだ。
ドラゴンが姿を消した理由は知らないけど、
どうせ 増えすぎた人間たちの所業による生態系の変化に嫌気を刺したかなんかの理由じゃないの?」
メリオが ちょっとぞんざいな口調で言った。
「これ、自分が知らないことについてまで、知った風な口を叩くんじゃありません」
メリーがたしなめた。
「と 鳥がしゃべってる!!!」
先ほどよりは音量を抑え気味に それでも驚きを隠せぬ口調のデュラン
「ここでは、生き物はみんなしゃべるのですか?」
「いや 食用の家畜たちは人語を話さぬよ。」コンラッド
「だって 友達を食べるわけにはいかないからね」ボロン
「私たちは 無精卵を提供し、運搬の手伝いをする代わりに
私たちの子供達や有精卵を食べないという約束をいただいてますの」
メモリーが少しだけ気取った口調で言った。
「俺たちは ドラゴンクラン・ダーさん部のメンバーなんだ」オットー
「デュランと申します。
計量・計測・鑑定などの技術員としてまいりました。
これから3か月間は試用期間ですが、本採用となりますよう頑張りますので、これからよろしくお願いします」
デュランは丁寧に ゴンのいる方にも ダーさん達が居る方にも向き直ってお辞儀をした。
「こちらこそよろしく。
ではまた」メリー
「またな」オットー
ダーさん達も口々に挨拶をして 自分達のエリアに引き上げていった。
「ちゃんと 僕たちの方にも 体の向きをなおしてお辞儀をしたのはポイント高いね」モリオ
「もう少し 様子を見ないとわからんさ」オットット
などと 話しながら。
「それじゃあ これから僕が館の中を案内するよ」
ボロン・コンラッドと一緒に先に館に戻っていたミューズが出てきて、デユランを館の中に誘った。
スカイはデユランに軽くうなずくと、ゴンのそばにより問いかけた。
「載せてくれるかい?」
「いいよ。君が僕の背中に乗りたがるなんて珍しいね」
ゴンはスカイを背に乗せて、龍の山ふもとの宿へと飛んだ。
フェンリル姿のコンラッドは 黙ってミューズと一緒に城の中から出てきて、スカイの顔をちらっとみたあとは、宿に向かって走り去った。
スカイを載せて空を飛ぶドラゴンとその下を走る白狼の姿を見送ったデュランは、ミューズに連れられて 城の中へと入った。