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ドラゴン・クラン(Ⅱ )よちよち編  作者: 木苺
    牧人の里とゴン
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牧人の里:パパンパンとヤシの実

牧人の里に植えられたパパンノキは 日当たりと水はけの良い土地に植えればすくすくと育った。


しかし 枝や葉が込み合うと虫がつきやすくなるので、重なりあう葉をまびいたり、枝の剪定が必要だ。


さらに たくさんの木を植えようと欲張って密集させると たちまち虫に寄りつかれるので、ほどほどに間隔をあけて植える必要があった。


それゆえナット老人がパパン2号を持ち帰った時から10年くらいの間は、パパン2号・3号の観察と管理もかねて ミューズがちょくちょく牧人の里へ行って、栽培指導をおこなっていた。


5年くらいたって パパンパンが牧人の里に定着してからは 牧人たちはパパンパンの実を主食にして 小麦の植え付けをやめようと考えだした。


しかし コンラッドは、パパンパンは病気や虫で一斉に枯れる危険があるので、余分な実を備蓄するだけでなく、小麦や芋の生産も続けるようにと忠告した。

 実際 いにしえの時代にパパンパンの原種であるパパンノキと一緒に滅びた国もあったのだからと話して。


牧人たちは 神獣様の忠告に渋々従った。

一つには 休眠していた牧人達も村に戻ってきたので、お互い再会を喜び合うのに忙しくて 不平不満を言っている暇がなかったということもある。


さらにまた 神獣様にお供えするパパン2号とパパン3号の収穫の為の木登りの練習に忙しかったこともある。


棒のぼりでは 両手でしっかりと棒を握り、足の裏を棒にあてて歩くようにして登っていく。

まっすぐな木に登る時には ロープを幹に回し、ロープの両端をしっかりと握って、登っていく。腕を使って幹に抱き着く代わりに、ロープを使って幹に抱き着く感じだ。

 ヤシの実取りの人は そうやって木の(こずえ)近くまで上って行って てっぺん近くになっている実を収穫する。

 パパン2号や3号の場合も似たようなものだ。


パパンパンの実や葉は、主になる幹から飛び出していることもあれば、枝の先端についた実がたれさがってくることもある。


年経たパパンパンならば、枝を放射線状に広がらせて、まるで傘のようにしなった多くの枝先の実を収穫することができるが、そのように枝がしだれるように樹形を作り上げるにはコツがいる。


パパン3号の時は パパン2号の経験から ところどころ足台となりそうなしっかりとした枝を残して剪定して育てた。


しかしパパン2号は生育速度も速かったので、ほぼヤシの実取りのような要領で7・8m登って行ってから あれやこれやの方法での収穫である。


冒険心旺盛なローティーンにとっては 格好のチャレンジ素材・腕の競い合いの木であった。

 おかげで ナット老人やサンドラ夫婦は、パパン2号・3号の世話だけでなく、木登り挑戦の子供達の見守り役まで引き受ける羽目になった。


 もっとも子供達だって 自分の命は惜しいから無茶はしないが

たまに競争心に駆られて 夜中にこっそり木登り練習に来る子がいるから

夜番が必要になるというトホホな話。

 もちろん 夕方から朝食後までは木登り禁止である。


神獣様に献上されたパパン2号・3号の実は 魔素が多いので、コンラッド・ミューズ・スカイ・ゴンの健康食・非常食となった。


牧人達がパパンパンの栽培に慣れたころ、パパン2号・3号の実を毎年おそなえしてもらっているお礼もかねて、コンラッドは ココヤシの木の種を一つ渡した。


コンラッドの予想通り 牧人の里では ココヤシの木も良く育ち、夏の飲料としてヤシの実の汁が飲まれるようになった。


ただし ココヤシの木は豊富な水と欠かさぬ肥料を必要とするので、里で育てるココヤシは1本だけとなった。


「産児制限と 栽培制限で バランスをとるのが これからの牧人の里のおきてになのだな」と多くの牧人たちは苦笑いしつつ、それで 飢えることのない安定した生活が続くのなら まっいっかぁと 思うようになった。


パパン2号は7年目に枯れてしまった。

その翌年は牧人の里のパパンノキ全体が不作だった。


もともとパパン2号の側のパパンパンほど実りが豊かであることは牧人達も気づいていたので、たとえパパン2号の実を自分達が食べることができなくても、里全体の利益のためにはパパン2号の栽培を続けたいと牧人達はミューズとコンラッドにお願いした。


そこで、コンラッドは保存してあったパパン2号の種を地中の洞窟にまき、すくすく育ったパパン2号の苗を牧人の里に植えた。

その苗も牧人の里に移植後はぐんぐん伸びて10mを超えて育ち、里のパパンパン全体に実りをもたらすとともに しっかりと実をつけてコンラッド達の魔力補充に役立つ食品となった。

 それ以来 7・8年ごとに コンラッドかミューズがパパン2号の種を牧人の里に届けることになった。


牧人達は お供えと委託栽培を通して 神獣様と定期的にコンタクトする機会ができたと喜んだ。

 やはりなんやかんやと言っても 牧人の里建設と再建の力となった神獣様とちょくちょくコンタクトできるのは、安心だなぁと思ったのである。

 たとえ 難解な掟をちょこーっと課せられたとしても。


コンラッドとしては そのような付き合いの中で牧人の自主性がそこなわれることになりやしないかと気にはなったのであるが・・


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