コンコーネ家の新商品
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話は少しさかのぼるが、清明がコンコーネ領主となって一息ついたころのこと
ドラゴンクランに指名依頼が入った。
依頼主はコンコーネ公爵清明
依頼内容は コンコーネ領の収入の安定化に向けた新機軸の提案
であった。
さっそくミューズが王都のクラン館に清明を迎えに行き、龍の草原に清明を連れて戻った。
互いの近況報告のあと、 いよいよ本題にとりかかったその内容をまとめると
①コンコーネ領の主要産業は食器の製造販売
得意先は 富裕な貴族と豪商
②上記の利点は 利幅が大きいこと
欠点は 収入(注文)の振れ幅が大きいこと
ブームが生じれば、注文から納入まで2年待ち3年待ちとなる一方で
顧客対象が限られているため、一渡りすると パタッと注文が途絶えてしまう
しかも プレミアム価格・希少性が重視されるため、新規顧客開発がむつかしい
③従来の「高貴な」ブランドイメージ 豊かさの象徴たる「プレミアム」性
限定品(希少性)を保持しつつ、新製品で新規顧客を獲得して、領内の収入の安定化を図りたい
④ドラゴンクラン・ドワーフギルドとタイアップすることにより、3者ともに利益を得ることができれば尚良し
であった。
そこから産み出されたのが、中産階級向けの「メモリアルシリーズ」
期間を定めて 毎月食器を定額購入して、統一感のある食器セットをご家庭に!である。
例1)ブライダルコース (新婚さん または結婚間近のカップルの為に)
ティーカップ・パン皿・スープ皿・・
など利用頻度の高いモノから 毎月1組2個セットづつ購入するコース
ご予算にあわせて、基本コースも4種類ある
その内容は初月のティーセットを例にとると
・芽生えコース(実用重視・配布期間半年):マグカップ
・バオバブコース(ゆっくりと育てて大きくなーれ):ティーカップ&受皿
1年かけて若葉コースと同じ内容のものをそろえる
・若葉コース(半年)ティーカップ&受皿・スプーン・ティーポット・茶こし
・デラックスコース(半年):下記のように1度で一式そろうもの
ティーカップ・受皿・ティースプーン
シュガーポット&専用スプーン
ミルクピッチャー&ミニクリーマー(カップに添えて受皿に乗せるタイプのミルク入れ)2個
※ティーポットと茶こし・レモン入れは別売りの製品リストからお好みのものをお選びください
と4コースある。
スプーン・フォークなどのカトラリーにはすべてドラゴンの刻印が施されている。この絵柄はドラゴンクランの意匠特許であり、コンコーネ領限定品である。
例2)ハローベイビーコース:(初孫や第一子を授かったご家庭向け)
出生時には 竜の刻印とお子様のお名前入り銀のスプーンをプレゼント♡
※ただしお一人様のみ、多産児だった場合は追加コースをお願いします
「銀のさじをくわえて生まれてきた子は生涯 食に恵まれる」と言う慣用句にちなんで、新生児の幸せを願って。
その後毎月 1点づつ 離乳食作成用具や幼児用スプーンなどが送られてくる。
これは3か月・半年と購入期間を選べ、シリーズ品の単品追加購入も可能
食器のセレクト監修はボロン。企画はドラゴンクラン
なので、購入した食器の裏側には もれなくドラゴンの刻印が押されている
例3)追加コース
例1はお二人様 例2はお一人様用となっているが、結婚生活が長くなれば
客用も含めて同じセットで皿やカップの個数を増やしたくなるのが人情。
また 双子・三つ子だった場合は、共用できるものと人数分追加が必要となるもの
がある。
そうした要望に応えるための追加コース
例4)単品補充コース
食器が割れたときの補充用に
あるいは 上得意様への特別サービスとして、バオバブ・若葉コースを完成された方に限り、デラックスコースの陶器を単品でご購入いただけます。
カトラリーの追加は、バオバブ・若葉コース専用品となります
その他)季節やデザイン別に短期コースもございます
セット数は2人用~8人用までの間でお選びいただけます
例5)積み立てコース
あらかじめ購入したい商品を予約して、その費用を月々定額で積み立て、商品代金満額になった時に 商品が送られてくる。
ただし 積み立ての中途解約はできないので ご利用は計画的に
・・
「ねえ どうしてセット数が8人用まであるの?」ゴン
「夫・妻・子供が二人・夫の両親・妻の両親を入れて8人」ボロン
「デザイン別短期コースって 具体的にどういうのを考えているんだい?」ミューズ
「カップ一つとっても、ふっくらとしたフォルムのティーカップ、細長いコーヒーカップ、小さめのデミタスカップ、大きめのモーニングカップ、どっしりとして割れにくいマグカップといろいろありますからね。
それにスープに関しても、スープカップを使いたい人、スープ皿を好む人といろいろあります。
こういうのを全部揃えたい人もいれば 必要な分だけ揃えたい人も
あるいは 気分にあわせていろいろな形やデザインのものを少しづつ買って使い分けしたい人もいます。
そういう方たち向けのコースです。」清明
「ぼくなら 同じフォルムでワンポイント柄、その柄が統一感のある異なる絵柄がいいな」ミューズ
「つまりはそういうことです」清明
「返金なしの代金一括前払い または毎月前払いで、配達と振込はドワーフギルド、ただし 毎月の運送量の上限と下限は守るってことでいいな」ボロン
「最低保証ってのは よく聞きますけど、上限つけるって初めて聞きましたよ。」清明
「運べないほどたくさんの注文が来たら 僕だって怒るよ」ゴン
「ゴンは賢い。つまりはそういうことだよ」ボロン
「運送量が増えたら 運ぶ人手を増やせばいいだけでは?」清明
「バカだねぇ。信頼できる運搬人を育てるには時間もかかる、費用もかかる。そっちの都合で今月は運搬人100人用意、来月は10人でいい なんて言われたら怒るよ!
君だって 収入の安定化を図りたいから 新コースをつくったんだろうが!
新コースだって ちゃんと毎回の募集人数を最初から決めておかないとだめだからね!」ボロン
うーんと考え込んだ声明は 「あっ わかりました。確かに」と気が付いて頭をかいた。
「食器って 大切に使えば一生ものだからね。
一気に売るんじゃなくて、10年20年とかけて ゆっくりと買い足していってもらえるようにした方が いいよ。
だから 同じシリーズの食器は20年30年と作り続けるくらいの気持ちで デザインの統一性を大事にね」ボロンは忠告した。
「いいな 人間って。
結婚したら子供ができて 2人 3人と家族の人数が増えていって・・」ミューズ
「君も人間と結婚してみる?」
ゴンがいたずらっぽく尋ねた。
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