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ドラゴン・クラン(Ⅱ )よちよち編  作者: 木苺
    牧人の里とゴン
39/92

地中での稲作と牧人達のその後

(地中世界に移住した牧人達のその後)

  一部数年先までの話を含みます

地中の洞窟では、洞窟ごとに環境がことなり、それぞれ温度差や明るさの違いがあったが

個別に洞窟一つだけを取り出して見れば、その中は温度も明るさも一定であった。


それゆえ 水耕栽培の稲も 種まき後の生育日数によって 望ましい温度の部屋から部屋へと移動させて育てることになった。


その方が一つの洞窟の温度を変えるよりも簡単だったのだ。

これらの洞窟ごとの温度は 地熱や温泉水を利用してその違いを作り出した。


日照時間ならぬ光の当たる時間だけは 毎日覆いをかぶせたり外したりして調節した。


しかし 部屋から部屋へとポットを移動させるのも 毎日覆いをかぶせたり外したりするのも大変手間がかかった。


いくら 種まきの時期を1か月置きにずらして、作業の時期をずらしたとしても。


休眠中の牧人の中からナットさんと言うご老人を応援に呼んだが やっぱりきつい。


そこで ナットさんが言い出した。

手間のかかる稲作よりも 芋を作ろうと。


「しかし 芋は通気性がよく 肥料成分にもいろいろ制約があるから、ワームの作り出す土壌には合わぬ」コンラッドは うーんと考え込んだ。


「ふむ それなら『パパンノキ』はどうだ?」コンラッド


「パパンノキ?」皆が不思議そうに問うた。


「異世界から来たパンノキの変種じゃ」コンラッド


「暖かくて日当たりと風通しの良い所で育つ木でな、その実を輪切りにして焼くと

まるで白パンのようにフワフワとしてうまいのだ。

もともとのパンノキは10mくらいまで育つのだが、パパンノキは高さが1m~2mで 気温さへ保てば年中実をつけ、土壌もえらばぬ。」


「それで 肝心の日照時間は?」


「うむぅ わしが最後に見たパパンノキは 地底世界に生えておったから 光石の側で年中照らされていても 問題ないのではないかな??」

自信なさそうにコンラッドが言った。


「そういえば 私がまだ幼かったころ、私が生まれる前に枯れてしまったというパパンノキの話を聞いたことがあったような・・」

ポンポンも何かを思い出したように言った。


「どうして枯れちゃったの?」ゴン


「たしか パパンノキ全体に病気が広がって3年くらいの間に全部枯れたとかって話だったような。病気についての具体的な話とか 病気の原因は思い出せません。

もしかしたら あまりにも幼くて 質問しなかったのかも」ポンポン


「どうして 地中ですべての食糧を栽培しようとするんだ?

 地上で収穫した植物を送っちゃだめなのかい?」ボロン


「それだと 供給が途絶えた途端 以前のわしらの二の舞になる」大ちゃん


「長い目で見れば 地中部のみで自給自足できるようにしておかぬと

 千年万年たった時に、外部からの連絡が途絶えたときに困るであろう。

 ドワーフも人間も寿命は短いから。

 ドラゴンが農作業をする話はいまだ聞いたことがないし、転移魔法を使える者は限られておるから」コンラッド・大ちゃん


「じゃ 僕が 農業をする最初のドラゴンになろうかな」

ゴンが楽しそうに言った。


「その場合は 光の洞窟をひきはらって わしらノームは地底にもどらねばなるぬだろうな。

 なにしろ 今でもゴンは自分の体を小さくしないと洞窟の中に入ってこれぬのだから」大ちゃん


「そっかー そだね。

 いろいろせーやく(制約)があるんだねぇ」ゴン


「ふむう」コンラッドは 少し考え込んだ後、種を一つ取り出した。

「わしの収納庫の底をさらって見つけだぞ、パパンノキの種だ」


「すごーい! コンラッドってなんでも持っているんだぁ!」

尊敬のまなざしを向けるゴン


「まあその 種の保存の重要性を説く友が 昔昔おってな。

 それ以来 意識して 種の保存をこころがけておるのじゃよ。

 ただ 何を保管しているかを思い出すのが大変でのう」コンラッド


というわけで その一粒を牧人達は 地中で試験栽培した。


パパンノキの種をどこに植えるかあれこれ相談しながら、あちこちの洞窟を見て歩いた。

この時には 以前、ボロンが作った地中地図が大いに役立った。


そして 近くを温泉が流れているのであろう、洞窟の床や壁があたたかく、しかし床や壁が黒曜石でできていて、洞窟の中は からっと乾燥している部屋に、パパンノキの種をまいた大型ポット置くことにした。


どうしてポット植えにしたかと言えば、環境が合わなければ、ポットごと ほかの洞窟に移せるからだ。


大型ポットの上にはパーゴラをしつらえてそこに光石を乗せた。


1年後には パパンノキはしっかりと実をつけた。


パパンノキ1本で牧人5人が食べるのに十分な実が実った。


パパンノキの根の成長がすごかったので。ポットの10倍の木枠を作ってそこに植え替えた。


さらに パパンノキの寿命や地中世界で育ったパパンノキの発芽率が分からないので

地中で実ったパパンノキの実からとった種も植えてみた。


すると 地中で収穫したパパンノキの種から出た芽(以後パパン2号と呼ぶ)は あっという間に高さが2mを超えてしまった。

このままでは 洞窟の天井にぶつかるかもしれない。


ナットさんが パパンノキの洞窟の室温は牧人の里と同じくらいだといい

パパンノキのポットに入れた土壌は 牧人の森の土壌の成分とほぼ同じだとミューズが言ったので、パパン2号は牧人の里に持っていくことにした。


ナットさんは ドラゴンクランの秘密を守ると誓約して、ミューズといっしょに牧人の里にパパン2号を持ち帰り 栽培することにした。


ナットさんはほかの牧人達に、どこにあるかもわからない うーんと遠い場所にある地底世界に行って、パパンノキをみつけ、そこから苗(パパン2号)とパパンの種を待ちかえったのだと説明した。


数年後には、パパン2号は10mの大木となって、大量の実をつけた。

パパンの種は 高さ5mくらいまで成長して やっぱり実をたくさんつけた。


そして、パパン2号からとれた種も 高さ5mくらいまで成長して(以下略)


さらに高さ5mまで成長したパパンノキの種は どれも高さ2mまで成長した。


高さ2mのパパンノキからとれた種も以後 高さ2mくらいまで成長した。


つまり


  原種パンノキ(異世界由来 高さ10m)

   ↓

  パパンノキ:かつて地底世界で繁茂していた。高さ1~2m

   その種をコンラッドが保管していて、地中洞窟に植えた:1本で牧人5人が暮らせるほど実った

   ↓

  パパン2号

   地中で育ったパパンノキの実から取り出した種が発芽したもの、生育旺盛

    ↓

   牧人の里に持って行き育てた:数年で高さ10mの大木に。大量の実をつける

   ↓

  パパン3号(牧人の里):高さ5m 大量の実

   ↓

  パパンパン(牧人の里):高さ2m 大量の実

   パパン3号の種から発芽 パパンパンの種からも発芽


である。


「やっぱり 地中の洞窟で育てるといろいろ変化するねぇ

 魔素の影響かなぁ」ミューズ


「パパンパンのおかげで 牧人達の食糧問題は解決しそうだ。」コンラッド


牧人達は 神獣様へのお供え物としてパパン2号と3号になった実はすべて上納した。

かわりに 神獣様から下賜されたパパン3号の種から育てたパパンパンの実は自分達の食糧とした。


最初 ミューズの注意も聞かずにパパン2号の実を勝手に食べた若者の体がはじけて死んでしまったのを目の当たりに見た牧人達は、先の食糧難に至った経緯と合わせ、神獣様からの注意事項を守る必要を改めて痛感したのだ。


それゆえ パパン3号の実にも手を出そうとせず、ミューズが連れて来た牛(実は大牛)にパパン3号の実を食べさせたら、魔牛化したのを見て すっかりびびってしまったのであった。



 といういわけで、牧人の里では、神獣様のお国から帰ってきた、ナット老人とサンドラ・アレク夫婦が、パパン2号とパパン3号の木の世話と実の管理を行い、

村人たちは パパンパンを栽培して、その実を主食とすることになった。


地中世界に行った時にはまだ10代の仲良しカップルだったサンドラ達も、やがて互いに結婚して子供を作りたいと思うようになったので、パパン2・3号の管理人として牧人の里に帰すことにしたのであった。

 というのも 中年のセーラ達と違ってサンドラ達は地中世界で2・3年暮らしているうちにかなり大柄な体格に成長してしまったからである。


(やはり 魔素の影響は人間には強すぎるらしい)コンラッド


サンドラ達は 牧人の里にもどってから2年間は結婚しないようにと 強く忠告されて戻った。

そこで 里帰りして3年目に結婚してできた子供は 丈夫な双子であったが、その生育は ほかの牧人と大差がなくて ミューズもコンラッドもほっとした。


セーラ夫婦は 地中洞窟に残って、ノーム達と一緒に生活している。


(参考) 

パンノキの育て方

  https://lovegreen.net/library/house-plant/p92634/


注:作品中のパパンノキは想像の産物です

  ただ そのイメージづくりに 上記のサイトを利用しました。

  かつて 海洋冒険談では パンノキは必ず登場すると言っても良いくらい

  夢あふれる食料の木でありました。

  同じく サゴヤシも 難破した船乗りの救世主として よく出てきました。

  どちらも 私にとっては 憧れのこもった夢の木でありました。


(参考)

  https://www.olive-hitomawashi.com/column/2018/11/post-2438.html

   パンノキの画像も豊富で 読み物として楽しいサイトだと思います

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