寝相
翌朝、ゴンが自分のテントから ヌッと首だけ出して言った。
「ねえ どうして みんな別テントに行っちゃったんだよ。僕一人残して」
「すまんの。お前さんの寝返りにつぶされそうになったので よけたんだ」コンラッド
「もう! 僕が寝返りを打ちそうになったら留めてくれたらいいのに!」ゴン
「ごめんよ。でも子供って小さいうちは寝返りを打つもんだからさ。
大人になるまでは 添い寝はキューちゃんにお任せするよ。
その分 起きてるときに仲良くしよう」ボロン
「だって 昨夜はキューちゃんじゃなく君たちと寝たかったのにぃ」ゴン
「ごめんね。でも僕たちの代わりに キューちゃんが朝までついてくれるように頼んだら いいよって言ってくれたんだけどなぁ」ミューズ
「えっ?」ゴンは 慌てて首を引っ込め、しばらく自分のテントの中をごそごそして
それから 今度は テントの外に出てきて、首だけテントの中に突っ込んだ。
「あつ いたいた。
ぼくね ちゃんとキューちゃんを抱っこしておかないと、寝ている間にどっかにいっちゃって見つからなくなるんだよね」ゴン
「どっかに行く?」ボロン
「やだなぁ 背中の下に敷いてたなんて言わせないでよ」ゴン
「じゃあ お主 キューちゃんを抱っこして寝たら 寝返りを打たないのか?」コンラッド
「コンの意地悪! そんなこと聞くなんて!」ゴン
「あ すまん。しかし」コンラッド
「抱っこしてると、寝返りを打つときに キューちゃんが飛んでいくから たいてい離れたところに朝までいるんだよ」ゴン
「なるほど」ボロンは複雑な顔で相槌をうった。
「そういえば 昨夜 ゴンが寝返り撃った時に ボロンもゴンの背中から飛ばされて、テントの壁にぶつかっていたね。」ミューズ
「ごめん。ボロン けがしなかった?」ゴン
「だいじょうぶ ちゃんと僕がテントの外に引っ張り寄せたから」ミューズ
「残念だなぁ
大きくなると 一緒に寝れないなんて。」ゴン
「ドワーフも乳離れするころには 一人で寝ているから。
一人で寝ると 寝相の悪さなどで人に気を使わなくてよいからいいぞ。
眼が覚めたとき 自分の頭の位置がどこになっているか ちょっと楽しみだったりしたな」ボロン
「わぁ ボロンも 子供のころ寝相が悪かったの?」
ゴンがちょっと生き生きした目で質問した。
「ああ 枕がどっかに行ってたり、布団からはみ出していたり
朝目覚めると 自分がどんな風になっているか 眼を開けるのが楽しみな時期があった。」ボロン
「そっかぁ 寝相の悪さも 楽しみにすればいいのかぁ。
確かに 一人で寝たら 気を遣う必要ないから そういう愉しみもできるね」
ゴンはうれし気にしっぽを立てた。