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ドラゴン・クラン(Ⅱ )よちよち編  作者: 木苺
第2章 牧人の里とドラゴンと地中世界
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遠吠えとこだま

「結論からいうと」

牧人の里の視察から戻った、コンラッドとミューズが、ボロンとゴンに報告した。


「牧人の里の食糧難は 人口の増えすぎによるものであって

 自然環境の変化によるものではなかった!」ミューズ


「牧人と言うのは 人間よりも寿命が少しだけ長く、ドワーフよりは短い。

 それ故 独身時代が長い晩婚タイプだったのだが、

以前赤子だったスカイをつれて牧人の里に行ったことに刺激された村人たちの中で 

結婚・出産ブームが起きたらしい」コンラッド


「それで食糧難って ひきがねをひいたのがコンラッドだったってこと?!\(◎o◎)/!」ボロン


「そうなのだ。面目ない」コンラッド


「しかも 赤ん坊スカイの短期滞在の思い出を聞いて育った若者たちが、外から人が訪れるなら

 自分達も外に出たいと思うようになっちゃったんだよなー」ミューズ


「・・・」コンラッド


「伝説として外の世界を夢物語のように聞いて育つのと

 実際に起きた話として外の世界を聞いて育つのとでは

 感覚が異なるのは道理だよなぁ」ボロン


ますますうなだれるコンラッド


「しかも 牧人の能力なら、2・3世代頑張れば 簡単に人間の世界まで生活圏を広げられるんだよ」ミューズ


「あやつらが 宿場方式に気づけば一世代で成し遂げられるな」コンラッド


「わしは 人族の争いも殺し合いも奴隷もみたくはない!」

コンラッドは悲壮な顔で言った。


「でも 必ずしもそうなると限ったわけではないんでしょ?」

ゴン


「そんな楽観論の現状放置が通用しないことくらいがわかる程度には 俺は長生きしている!

 多くの悲劇を見すぎた!!」

コンラッドは 天に向かって吠えた。


そして感情が抑えられなくなったのか 長々と遠吠えをした。


その悲痛な鳴き声におどろいたゴンは震え、ボロンとミューズは ゴンの両側から抱き着いて、ゴンをなだめた。


フェンリルの息継ぎのために 鳴き声がいったんやんだ瞬間にボロンが言った。

「こういう時は 気持ちを静めるために温泉にはいろう!

 コンラッド、洞窟温泉に僕たち全員を連れて行ってよ!!」


コンラッドは一瞬きょとんとして 眼に涙を浮かべたまま言った。

「わしは今 感情が乱れておる。転移はミューズに任せた」


「了解 先に僕たち洞窟温泉に行くね

 コンラッドも自力で転移できるくらい気持ちが落ち着いたら来てね」

ミューズはそういって ボロンとゴンを連れて転移した。


コンラッドも 最後に一声「ワン! ワンワン!わん!ワワン! うぉ~~~~ん!」と吠えてから ミューズたちの後を追った。


フェンリルの鳴き声は内輪山・外輪山にぶつかりこだまとなって

龍の里に響いた。


その反響で魔獣たちは頭痛とめまいに襲われひっくり返った。


馬たちは 緊急避難用に以前スカイが作っておいた 防音・防御バリヤーつきの避難小屋に一斉に駆け込んだ。


ダーさん一族も そこに割り込んだ。

「私たちだって この騒音には耐えられません!」と言って


馬やダーさんが逃げ込む姿を見て、正門(あた)りの警護用に放し飼いされていた七面鳥たちも駆け込んできた。


 鶏たちは フェンリルの最初の遠吠えで 巣小屋の中で寄り集まって頭を羽の中に突っ込んで丸くなったまま気絶した。


馬たちは 足元の七面鳥を踏みつぶさないように立ちすくんだが、ダーさん一家の協力で、何とか自分達だけで固まって座り込むことに成功。


避難小屋の中で大騒ぎしたり、馬の足をつついて自分達の場所を広く取ろうしていた七面鳥たちは ダーさん一家に叱られ、仕方なくダーさん達の足元に固まって座り込んでその夜を過ごすことにした。


「まったく 最近のドラゴン一家はにぎやかだなぁ」オットット


「ほんとにもう! びっくりして あやうく卵詰まりを起こしそうになりましたわ」タマゴさん


「あれは命にかかわる。 だいじょうぶか?」オットー


「強引にタマゴを押し出したので、今日の分の無精卵は割れちゃいました」タマゴさん


「まったく しょうがない人達だこと」メリーはぼやいた。


「割れたタマゴのかけらでケガをしなかった?

 エルフがもどってきたら しっかりと診察と治療を頼みなさいね」

メモリーはタマゴさんに近づいて声をかけ 羽でそっと首筋をなでてやった。


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