その後の魔ウサギと仲良しの木
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スカイの魔力のこもったはじき豆を食べた魔ウサギたち。
もともとは 小型犬から中型犬程度の大きさだった魔ウサギたちであった。
ジャンプ力も せいぜい人間の肩~目の高さくらい。
もっとも ふだんは そのジャンプ力を披露することもなく暮らしていた。
なにしろ そこまで高く飛び跳ねる必要がなかったから。
むしろ 地面に生える草を食べるために いつも体を低くして生活していた。
ところが ポンポン飛び跳ねる「はじき豆」欲しさに 高く高く飛び上がってその跳躍力を披露した魔ウサギたちは、豆に込められたスカイの魔力のおかげで
巨大カンガルー並みの体格を手に入れてしまった。
そこまで体が大きくなってしまうと、荒地に生える草だけでは栄養が足りない。
もともと気性が荒く、草だけでなく土中のミミズなどを食べることもあった魔ウサギたちであったので、巨大化した魔ウサギどうしで縄張り争いをしたり、
はじき豆を食べることができず小さいままだった魔ウサギを襲って食べたりし始めた。
肉食魔ウサギの誕生である。
ミューズはいち早く魔ウサギの変化をキャッチして、コンラッドとともに肉食魔ウサギをすべて捕獲して空間収納してしまった。
「やれやれ これもまた 魔法による人為的変化というのかの?」コンラッド
「どうだろ? 魔法事故の一つではあるね」ミューズ
「肉食魔ウサギに毒性はないから、これは将来 ゴンの狩の特訓に使えるな。
その時まで この肉食魔ウサギどもは収納空間で眠っていてもらおう」
コンラッド。
「君って ほんと合理的というか容赦ないね」ミューズ
「何事も 割り切らざるを得ないことはあるさ」コンラッド
・・
ゴンの練習小屋の中から飛び出した スカイ特製「はじき豆」のうち 魔ウサギたちに食われなかった分はミューズがすべて回収していたが、そのうちの二粒を
荒れ地のまだ緑のない場所(魔ウサギの居ない場所)に、ミューズがお試しで蒔いた。
もちろん コンラッドの承認のもとで。
大豆由来のはじき豆も エンドウ由来のはじき豆も、荒れ地ですくすく育ち
巨大な「豆の木」になった。
豆の木が伸びる過程で つるが巻き付く支えがなかったので、
豆の木本体から出たわき芽と互いにからまりあって上へ上へと伸びて行ったのだ。
「ジャックと豆の木ならぬ、「スカイの豆の木」誕生だな」コンラッド
「ゴンのために作られたはじき豆でもあるから、元大豆を「スカイの豆の木」
元エンドウを「ゴンの豆の木」と呼ぼうよ」ミューズ
「わーい 僕とスカイの仲良しの木ができたよ♡」ゴンは喜んだ。
「だったら この2本の木をまとめて「仲良しの木」と呼んでもいいな」ボロン
仲良しの木々は毎年 実をつけた。
さやや豆の外見は、もともとの大豆やエンドウ豆のさやが巨大化した感じであった。
毎年、豆がさやからとび出す前に、コンラッドとミューズはきっちりと収穫した。
手で一つ一つもぎ取るのは大変なので、魔法収納を応用しての収穫である。
さやは、魔牛の餌に 豆はじんわり煮込んでゴン専用の豆料理にした。
やはりスーパーボール大の煮豆は 人族の口に入れるには大きすぎたから。
かといって調理前に豆を切るのは 手間がかかりすぎる。
ちなみに 仲良しの木になった豆をそのまま魔ウサギが食べると、肉食にはならずとも 体が大きく気性の粗いカンガルーもどきに変化した。
とうぜん このカンガルーモドキ?ジャンボ魔ウサギをいち早く発見して収納してしまうのもミューズの仕事となった。
「将来的には ゴンが自分でジャンボ魔ウサギどもを見つけて 駆除方々自分の食糧として備蓄できれば良いのだが、そこまでゴンが成長するまでは、わしらでジャンボ魔ウサギの管理をしなくてはなるまい」コンラッド
「そもそも 魔ウサギに食べられないように、魔ウサギの居ない場所を選んで
はじき豆を植えたのになぁ・・」ミューズ
「どうやら 魔ウサギどもにとっては この「仲良しの木」そのものが魅惑的なのではないか?
はじき豆の存在にいち早く気が付いて 飛び上がってかじりついておったし、
仲良しの木の成長にあわせて 生息地や活動範囲を変えよったからなぁ」コンラッド
「やはり 自然はすごいなぁ。
そこに介入すると 予想外のことが起きるなぁ」
ミューズはいたずらっぽく笑った。
「まったくだ。お前さんだけでなく スカイまで何気なくこういう結果を招くのだから 人族とは自然に介入するのが習い性になっているのかもしれん」
コンラッドはぼやいた。
※ このページも 各話を予約掲載した後に挿入したので、本日午後5時にもう1話公開します