魔法使いの父子
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スカイが3歳になった時、コンラッドはスカイを連れて牧人の里を出た。
それは 王国の人間達から牧人を守るためであった。
いくら血が薄まったとはいえ、牧人には精霊の持つ力が潜在的に今も備わっている。
かつて その能力ゆえに、精霊や牧人達が人間社会から遠ざからずを得なかった事情を考えれば、
やがて王国の王となるスカイの記憶に牧人の存在を残すわけにはいかなかったからだ。
そこで 牧人の森の一部ではあるが、牧人の来ないところに、スカイとコンラッドの家を用意した。
そこで5年間、コンラッドはスカイに人間としてのマナーやスキル、それに魔法を教え訓練した。
王妃から取り寄せた書籍類で 座学もみっちりとおこなった。
ふだんはフェンリルの姿をしていたコンラッドであったが、マナーや読み書きを教えるときなど
必要に応じて人型に変身した。
スカイは8歳になった。
コンラッド達は 王妃が手配した王国の辺境地帯にある王の森に引っ越した。
そこでスカイは、農場主の息子として生活することになった。
コンラッドは必要に応じて人間の姿で 近くの村の人々に会った。
村人たちは、農場主になった魔法使いの父子として スカイとコンラッドの存在を受け入れた。
魔法使いだから コンラッドがあまり人前に姿を現さなくても不思議はないと、
父親が魔法使いだから 息子のスカイが魔法の練習をしているのは当たり前だと
村人たちは考えた。
そして 魔法の稽古と言うのは 時々 物が壊れたり、火を噴いたり、
息子が珍妙なことをやらかすことになるようだから、
片田舎に引っ込んで父子で暮らしているのだろう、
だから遠目にそっと見守ってやろうではないか、
なにしろ あの親子が時々魔法をかけてくれるおかげで、村を流れる川はきれいになったし、
村の子供が病気になっても 村人が大けがを負っても、すんなり治るようになったのだからと
村人たちは、スカイとコンラッドを好意的に受け入れた。
それゆえ、スカイたちが王都に帰ると伝えられた時
村人たちは 盛大に二人の送別会を開いた。
今までありがとう。
たとえ 今生の別れになろうとも、自分たちはあなたたちとの良き思い出を忘れないと言って。
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