王国について
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この世界は、龍の地と人族がすむ王国とその外側に分かれていた。
王国の外とは、だれも行って戻ってきた者のいない土地、すなわち前人未到の地であり、だれも興味関心を持たない「外の世界」であった。
つまり王国の人間にとっては 存在しない土地と同じであった。
国が一つしかないので、王国にも特に名前はなかった。
だって ほかの国がないので よその国の人に対して名乗る必要もなければ
よその国と比較することもなかったから、国は「国」で充分だったのだ。
国の中には 伝説のエルフ(今は居ないけど 過去にはいたらしい。そして今もどこかにいるかもしれない存在)とドワーフと人間が住んでいた。
ドワーフ達は、町を作り、道を開き、今では物流を一手に引き受ける存在であった。
そのドワーフ達は、ドワーフギルドを通じてつながっており、各地に支部を持っていた。
一方人間達は 地方ごとに領主が居た。
領主と言っても 特に権力を持っているわけではなく、どちらかと言えばその地域の経営者=社長のような存在であった。
そして人間達の国の代表が国王である。
国王の役割は、領主会議を主催して、国全体の運営のバランスをとること
領主が経営者として芳しくないときは、罷免したり新たな領主を任命したり
経営者として未熟な領主を一人前になるように育てること
ドワーフギルドとの折衝役、の三つであった。
国王も領主も人間の営みは すべて法により統制され裁かれ運営された。
この国で 一番大切なことは、種族間の争いをおこさないこと!であった。
法と秩序を重視するこの国は 長らく平和であった。
国民は ひどく飢えることもなく、貧富の差はあっても人の命の重さは等しく
その処遇は各自が果たす役割と実績によって決まっていた。
権力争いを新芽のうちに摘み取る制度がいきわたり
不和は火種のうちに鎮火させる司法が徹底していた。




