第五話・喜びと苦悩
遅くなりました;私生活でちょっとごたごたがあり、遅れてしまいました
大和より長門に力を入れて書いてしまっているような気がしないでもないです;
呉軍港、大和建造ドック
広島から戻った斎藤少佐は、呉鎮守府長官への報告を終えるとすぐに大和の下へ行った
「変わらず・・だな」
斎藤少佐がつぶやくと、目の前の『大和』の甲板から大和が降りてきた
「おかえりなさい」
「ああ、ただいま」
どこかそわそわしながら大和は斎藤少佐に聞いた
「あの・・・長門姉さんには・・」
「大和の気持ちを伝えたから心配するな。それと長門からの伝言だ」
そうして斎藤少佐は長門から大和への言葉をそのまま伝えた
「長門姉さんがそんなことを・・・」
大和は驚きの反面、嬉しさが表れた表情をした
「ああ、だからお前は何も心配することはないんだぞ」
「はい・・ありがとうございました・・・斎藤さん・・」
「礼を言われるほどじゃないさ。それと山本長官から連合艦隊司令部に来ないかと、誘われたよ」
「連合艦隊司令部に?」
「ああ。どうやら山本長官も艦魂が見えるらしく、それが理由かはわからないが気に入られてしまったよ」
「じゃあもし私が連合艦隊旗艦になったら・・・」
「司令部は大和に移る・・当然司令部要員である私も大和に乗艦するってことだな」
「ずっと一緒にいられるんですね」
頬を染めながら大和は呟いた
「ん?何か言ったか?」
何か聞こえたようで斎藤少佐は大和のほうを振り向いた
「いいえ、なんでもありません」
大和は笑顔で言って自分の甲板へ飛び移った
広島湾 戦艦『長門』甲板
長門は艦首から広島湾に停泊する艦隊を見ていた
「どうかしたか?」
「・・・長官」
長門を思い詰めた顔のまま山本長官に敬礼をした
「お前がそんな顔をしとる時は何か思い詰めている時だな」
「お見通しですか」
一呼吸おいて、長門は話し始めた
「真珠湾での一件です」
「ふむ、それで?」
「真珠湾の米太平洋艦隊を撃滅したのは、戦艦の大口径砲ではなく赤城たちの空母艦載機です」
山本長官は頷きながら聞き続けた
「長官は予てから航空機の優位性を軍令部首脳部に説いておられましたが、今尚軍令部の傾向は戦艦や水雷戦隊を主軸にした艦隊決戦です。戦艦である私にとってそれは願ってもないことですが・・・」
長門は戦艦である自分の役目と、時代の流れによって海戦の主役が戦艦などの大型艦から空母艦載機に移り始めていることを知っての苦悩に板挟みにされていた
「お前の言いたいことはわかっている。今回の攻撃で航空機の優位性が証明された。だがこれで大西少将や山口少将、そして私を含めた航空主戦論が軍令部の大半を占める大艦巨砲主義の将官や参謀たちを圧倒できるかもしれん」
「・・・・」
その言葉は戦艦である長門にとって自分の存在意義を問いたくなる言葉でもあった
山本長官はさらに続けた
「空母機動部隊を主軸にした戦略を用いていけば、艦隊決戦は必要最小限に抑えられる。それだけ艦を失わずに済むようになる」
「しかし・・・」
長門が言おうとすることを遮るように山本長官は続けた
「もちろん、一方が無傷で済むほど戦争が甘いものだとは思ってはおらんよ。航空機の攻撃力は侮れない、我が艦隊も損害を被るは必定だ。それでも私はできるだけ多くの艦を生かしてやりたい。それが連合艦隊司令長官として私のすべきことだと思っておるよ」
山本長官の言葉に長門は涙ぐんでしまった
「・・・長官。その御言葉は他のみんなにも言ってあげてください」
もちろんさと言いながら、山本長官は手を振りながら『長門』の艦内へ入っていった
「・・はあ、私ったらまた・・・」
長門はため息混じりに言ってまた海を眺めた
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