約束
なんとなく肌寒くて目が覚めた。
体のだるさが昨夜を思い出させて、乱れたシーツに包まったまま、まだ目を開けられない。
だんだんと覚醒してきた頭は周囲の音を拾い出す。
外からは少し強い雨の音がする。
雨は不思議だ。この空間だけを隔離しているような感覚を覚えるから。
少しでもこの時間をかみしめたくて、シーツに顔を埋める。
「・・・・昼過ぎには帰れるから。」
背にした窓から誰かと話す様子の声。
電話をする男の声が私の心を甘く冷やす。
私には向けられない声音と”帰る”という言葉。
チクチクと心臓を蝕む冷たいそれらが今にも全身に回ろうとした所で、電話は終えられたようだった。
隣が深く沈み、冷えた身体を温めたのは私か彼か。
「おはよう。」
電話の時とは違う、いつもの声で私を温める。
温められてから目を開けるまでたっぷり20秒。
「今日は雨だから、少しだけ長く居て。」
「あぁ。もちろん。」
それが私と彼と、彼女の約束だから。
初めて書きました。ありがちな話かもしれません。