第8話 虎
遅れました……
プロセカのリセマラが地獄だった……
一瞬意識が途切れたと思ったら、あたりに真っ白な空間が広がっていた。すごいな……まるで本当に自分の体があるかのようだった。指先だって自由に動かせるし体の感覚だってしっかりある。
それにしても真っ白な空間か……関係ないけど転生して神様に会った時のことを思い出す。そういえば最初は、前世の知識を生かして中学生くらいまでは勉強量減らしてゲームやってようと思ってたんだよな……教育水準高くて諦めたけど。それはそうとして、神様と会った場所もこんな感じだった。……つまり自分の経験(一回だけ)から推測すると……
「『ミーティア』へようこそ、私は管理AI、No.3、『虎』と申します」
やっぱり!めっちゃ可愛い女の子だ!真っ白な空間に自分1人という状況は可愛い女の子が現れる伏線だった……?つまり、真っ白な空間に自分1人だけいれば可愛い女の子を無限に増やすことができる……?
※できません
とりあえず、可愛い女の子が現れたのだ。ここは何としてでもお近づきにならねば(使命感)。そう思ったので勇気を振り絞って声をかける。
「君、可愛いね。どこ住み?ってかLI……
「ではまず、あなたのお名前を入力してください」
話を遮られてしまった……。でも可愛い女の子に名前を聞かれた。……つまり脈アリなのでは……?まあAIに血は流れてないけど。
そんな軽い冗談を考えていると、目の前に少し小さめの名前を入力する画面が表示されているウィンドウとキーボードが現れた。やっぱこのゲームのUIかっこいいよな……このほんのちょっとしたことでも感動してしまう。だって空中にキーボードとウィンドウが表示されてるんだよ?やっぱり、こういういかにも近未来な感じがたまらない。男のロマンだよね、まあ今は女だけど。
ってか名前どうしよう……。ゲームの名前ってソシャゲやる時はいつも適当に小説の登場人物とかの名前にしてるけど、これはオンラインゲームだからね……。しかもお姉ちゃんがくれたやつだししっかりした名前にしないと……。本名はダメだし、英語にしてグリーンとかエメラルドとかもなんかダサいし……。
そうだ、フルスにしよう。オンラインゲーム名前に困った時はドイツ語にすれば良いって誰かが言ってた。ここは先人の知恵にあやかるべきだろう。目の前に浮かんでいるキーボードを使い「FULSS」と入力する。
入力が終わった瞬間、あたりの景色が広い草原のような場所に変わった。地面には芝生が敷き詰められている上に、一枚一枚しっかりと描写されているため、まるで本当に自分が草原にいるかのようだった。ただ少し違和感が……何でだろう……?分かった、五感が全部再現されていないからだ。普通は草の匂いだったり自然が豊かな場所特有の匂いがするはずだ。しかしこの世界では匂いが全くしない。流石にそこまでは再現できなかったのだろうか。
それと、空気がある感じがしないのだ。呼吸はしっかりと出来ているし息苦しさも全くない。でも、腕を振ったりした時に空気がまとわりつく感じがしなかったり、さっきから全く風を感じなかったりする。重大な障害ではないがほんのわずかに現実世界と違うことで少し不快に思ってしまう。しばらくやれば慣れるだろうか……少し不安になってしまう。
「キャラクターメイキングに移ります。あなたの体をベースにキャラを作りますか?」
迷わず「はい」を選ぶ。当たり前だろう、この体は神様がくれたものなのだ。1から自分を超える美少女を作り出すことはほぼ不可能だろう。とりあえず、目と髪と肌の色だけ設定する。ゲームの中なんだし多少は変えないと勿体無いだろう。とりあえず髪の色を白、目の色を青、肌は薄めの色にした。いかにも病弱そうな美少女、まじで可愛い、結婚したい。……自分と結婚ってどういうこと……?
「完了」のボタンを押した瞬間、まるでアニメのキャラが変身する時のように自分の体が光に包まれた。光が弱まり周りを見渡せるようになると、目の前に鏡があることに気付いた。そこには、病弱っぽく今にも倒れてしまいそうな美少女が立っていた。
「これが……私……?」
「いや、元の姿と対して変わっていないですよね?どうしてそんな『美容院に行って見た目が180度変わった地味だった女の子』みたいな反応してるんですか?」
AIにツッコまれてしまった……。でも正直本当にそんな感じだ。今まで黒髪ロング至上主義だったけど思わず白髪も良いかもって考えてしまった。しかもその美少女が自分なのだ。なんか惜しいというか……。まあ良いけど。
「……変わった方ですね……」
「失礼なっ!?」
AIに変わってると言われてしまった……。AIに変わってるって言われるのって相当じゃない?そんなに変かな……いや、よく考えると中身が男の前世の記憶を持っている美少女ってだけでも相当か。
「では次に招待コードを入力してください。お持ちでない方はそのままお進みください」
おっ、ここでやっと招待コードの出番か。でも、招待コードって一体何なのだろう。質問してみるか……
「えっと……虎ちゃんで良いのかな?質問しても大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよ。何でしょうか」
「招待コードって入力したらどうなるんですか……?」
すると虎ちゃんは少し困った表情を見せて
「招待コードはお持ちでしょうか?」
「持ってるよ。ゲームに誘ってくれた人に貰ったんだけど、「何?」って聞いても「やればわかるよ」って言って教えてくれなくて……」
「なるほど……分かりました。では説明しますね」
「ありがとう」
「いいえ、お気になさらず、私の仕事ですので。招待コードと言うのは、一部の上位プレイヤーだけが発行できるコードで、そのコードを教えられた人が入力すると、チュートリアルをそのプレイヤーが代わりに行うという機能です。つまり、本来なら私たちAIがチュートリアルを行うのですが、招待コードを持っているあなたのチュートリアルはコードを教えた人が代わりに行う、ということです」
なるほど……そんなシステムが……。つまりお姉ちゃんに手取り足取り(意味深)教えてもらうということか。
「他に何か聞きたいことはありますか?」
「いや、大丈夫かな」
「では引き続き『ミーティア』をお楽しみください」
そう言い残し、彼女は去っていった。これって待ってれば良いのかな……?なんで大事なところを説明しないの!?
個人的にはナイトコードが1番好きです
全員何かしら闇抱えてるって最高じゃねえか