第4話 転落(前編)
平日は4時に間に合わないので書き終わり次第投稿します
今回の話はあまり自分では納得がいってないと言うか……なんか違和感が……
「碧ー!そろそろ起きないと遅刻するよー!」
せっかく人が気持ちよく寝ていたのに起こされた……。それにしてもどうして大声を出しているのだろうか?少し眠気の残る頭で考える。駄目だ、さっぱり思いつかない……。
「お姉ちゃん……?どうしたの?」
「どうしたの、ってもう7時だよ!早く起きないと!」
あっ、そうだ!今日は平日だった!すっかり眠くて忘れていた……
「えっ!?本当!?早く出ないと!……お昼どうしよう……」
「お弁当私が作ったから持ってって!早くしないと電車なくなるよ!」
「でも、姉さんって料理したことあったの?」
「いや、初めて!本見て適当に作った!」
「流石……」
お姉ちゃんが相変わらず天才なのはとりあえずスルーして、このままだと始業前までに学校に着く電車に乗れないので急いで準備する。スルーして準備する……あまり面白くないな。
前世の記憶があることもあってつくづく女子は準備に時間がかかると実感する。だって男子は寝癖直すくらいしかしないじゃん!めっちゃ楽だったんだな……。中3にもなるとやっぱりおしゃれにも気を使わないといけないから結構大変だ。文明の機器(スマホに似てるけど前世と比べてめっちゃ高性能)を駆使してなんとか若者の流行について行けているが、正直自分でも流行になっているファッションのどこがいいのか分かっていない。それでいいのか……?
とりあえず準備が終わったので急いで家を出る。時間的には間に合いそうだが久々に朝食を抜いたせいであまり頭が働かない。既に何回も人とぶつかりそうになったり、転びそうになったりと色々やらかしている。
普段は1時間ほど早く電車に乗っているため人がとても少ないが、遅れてしまったため人がとても多い。特に自分のような学生が。そのため、おそらく満員電車になると思うが少し、いや、とても心配だ。それは……痴漢される可能性が高いからだ。この世界は技術が発達したためか防犯カメラが多い。その上カメラも高性能になっているので、今では「犯罪をすればどんなにちょっとしたことでも9割バレる」と言われている。例外の1割はトイレ、更衣室と言ったプライバシーの問題で防犯カメラを置くことができない場所だ。その例外の1割に満員電車も入っている。もちろん電車内に防犯カメラがあるのだが、人が密集するという性質上どうしても下半身が隠れてしまうのだ。そのため、「男性と女性で車両を分けるべきだ」という意見もあるのだが、未だ実現には至っていない。
そのため、痴漢は犯罪が大幅に減った現在でも存在している犯罪となっている。そして、容姿が優れている自分は痴漢にあう可能性がとても高いのだ。普段は早く電車に乗ることで回避している。しかし今日は寝坊してしまったため満員電車に乗ることになってしまった。まあなんとかなるか。
しばらく待っていると電車が到着した。到着予定時刻に1分のずれもない、完璧だ。なんとか電車に乗ることができたが、やはり人が多い。科学の技術を駆使して空間を広げることはできないのか……いや、できるわけないか。物理法則は偉大。
そんなどうでもいいことを考えていると、少し触られる感覚があった。これだけ混んでるし、もしかしたら偶然手が当たってしまった可能性がある。もう少し様子みよう。
うわ……スカートの中に手が入ってきた……。これは確定だな。どうしようか。「やめてください!」って大声出せば大丈夫かな……?それとも相手の方を睨んで「このっ、変態……」と言うべきか。いや、それは自分の趣味だった。
そこでふと考えた。この人が痴漢をしていることが周りに知れ渡ってしまったらどうなるのか。とりあえず、社会的地位が下がるのは確定だろう。それに、触ってきた相手は学生、しかも同じ学校の生徒(おそらく後輩)だった。もしかしたらクラスメイトから軽蔑されたりとかして最悪いじめに発展してしまうかもしれない。もちろんその人を許したわけではない。自分も中身は男とはいえ不快に感じたし、何よりも痴漢は悪だ。それに、1回許してしまうとこれから先も、さらに他の人にもやるかもしれない。
どうにか周りにバレないように済ませたい。写真撮って脅す感じでいいかな?1度痛い目に遭えば反省するよね。早速相手の顔と手が映るように写真を撮る。周りにたくさん人がいて大変だったが何とか撮ることができた。そして触ってきた男の子に写真を見せながら囁く。
「ねえ、次駅に着いたら一緒に来てくれる?来なかったら……分かるよね?」
すると男の子はこの世の終わりみたいな顔をして頷いた。後悔するなら始めから触らなければ良いのに……気持ちは分かるけど。
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「本当にすいませんでしたっ!もう2度としません!」
電車を降りる人の迷惑にならないように人通りの少ない場所に着くなり、男の子は土下座しながらそう言った。
「少ないですけど今自分が持っているお金の全てです。どうか許してもらえないでしょうか……?」
そう言って、彼はICカードを渡してきた。……いやいやいや!
「なんかちょっと勘違いしてない……?別にお金をむしり取ろうとしてるわけじゃないよ?」
「へ?そ、そうなんですか?」
「確かに君がしたことは悪いことだし、証拠も私が握ってるけど、私はこの立場を使って君から搾取しようなんて思ってないから安心して」
「で、でも……」
「それに、君、お金払えば許されると思ってるの?それとも、私がお金を払えば誰にでも体を触らせるような女だと思ってる?」
「そんなことはないです!」
「だったら、次からはもうしないって誓える?」
そういうと、男の子ははっきりとした口調でこう言った…
「はい!もう2度としないです!」
自分に、相手が嘘を付いているか見分ける能力を持っているわけではない。でも、彼は嘘を付いていないだろう。……脅すとか言っておきながら結構甘くなってしまったかもしれない。人を叱るって結構大変なんだな……。
「分かった、君の言うことを信じるよ。でも……次やったら……分かってるよね?」
そう言い残して駅の出口へ向かった。って時間やばい!急がないと!
それにしてもどうして今日は寝坊してしまったのだろう。いつもなら時間通りに起きれるはずなのに……。まあ、そのおかげでお姉ちゃんの手料理を食べれると思えばラッキーだけど。
この時の私はまだ知らなかった。まさかこの方法が最悪の手段だっとは……。
一体主人公に何があったのか……!
ちなみに主人公は姉のことを「姉さん」と呼んでいますが、心の中では「お姉ちゃん」と呼んでいます。