1話 出会い
いつも彼女は泣いていた。
なぜ泣く、なぜ君はいつも悲しい顔をしているんだ…。
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暖かい……心地いい…。
そっか、私死んじゃったんだ。
この暖かさはお母さんに会えたのかな?
でも何だか体が窮屈な気がする
「おい、大丈夫か?」
だれかが私を呼んでる……?
薄らと目を開けると、間近に茶色い目が2つ。
「ぎゃあ!!」
「おい暴れるなっ!落ちるぞ…!」
「そうだ、私っ体…あれ?どこも痛くない?どうして?」
「私が助けた。」
「え?」
「君が助けを求めたから助けたんだ。」
そう言って私の目を真っ直ぐに見つめて彼は言った。
「あ、あの。まずおろしてもらってもいいですか……」
「あぁ、まだどこか痛むところはないか?」
「はい、大丈夫です。その、ありがとうございます……私、死のうとしてたのに……。」
「君の声をいつも聞いていた。」
私がお礼を言うと彼はそう言った。
「私の声……?」
「そうだ。聞こうとしていないのに、なぜか君の声だけはいつも私に聞こえていた。しかし、君はいつも悲しそうに泣いていた。私は名前も知らない、どこにいるかもわからない君のことが気になって仕方なかった。君は誰なんだ、いつも私に悲しい話を聞かせてくる、なのに1度も助けを求めてはくれない君はいったい……と思っていたら、君が初めて助けを求めてくれた。なのに、助けを求めたと思ったら死のうとしてるし、本当になんなんだ君は…」
「すみません……」
「まあいい、私が間に合わなかったら本当に死んでいたぞ?満身創痍の君を治療してあげたんだ。感謝してくれよ?」
彼は少し困った顔をしてはにかみながらそう言った。
こんな顔で笑うんだ。
私は自分がギリギリのところで命を拾ったことも忘れ、そんな場違いなことを考えていた。
その後、彼に家まで送ってもらった。
自分の部屋へはいると、彼と去り際にしたやりとりを思い出していた。
『また助けが欲しくなったら私を呼ぶんだ。わかったな?もう死ぬなんて考えるんじゃないぞ。自己紹介が遅くなったが私はこの世を彷徨う鬼。またの名を鬼邪という。君は名をなんという?』
『私は……萌衣、奴月 萌衣。』
『萌衣か……綺麗な名前だ。やっと君に会えた、君を助けることが出来てよかった。それじゃあまたいつでも呼んでくれ。』
『はい……ありがとうございました、鬼邪さん。』
『鬼邪で良い、それじゃあおやすみ、萌衣。』
と言って彼は私の額にキスをし、闇の中へ消えていった。
あまりにも衝撃的で家に帰ったあと明らかに様子がおかしい私に、おば家族たちに気味悪がられ叱られることはなかった。そして、布団に入り、やっと私は我に返って思った。
「え……鬼?!?!」
その日は眠れなかった。