第4話 Broken everyday
俺は、普通という枠に入れたのかもしれない。
俺は、鬼に化ける必要がなかったかもしれない。
20^^年
「よう…会えてうれしいよ」
一人の男を路地裏で拘束した。
隅には、小さな子供がいる。
「お前!」
「あの後…お前らはリオの金でたらふく儲けたそうじゃないか?」
「頼む!許してくれ!アース!」
「さぁて、質問に…答えてもらおうか?お・と・う・さ・ん」
第一話 Collapse
路地裏に恐怖に怯える一人の男とその子供。
そして狂気に満ちた男の姿。
この場を支配しているのは誰か。
そんなものは誰が見ても一目で分かるだろう。
「さぁて...」
ナイフを取り出し、男の首にそっと添える。
この男は、リオを殺して稼いだ金で生きてきた。
「このガキは、アイツの金で太ったのか?」
「すまない!」
「答えろ!」
そう叫びながら、醜い顔を思いきり蹴り飛ばす。
男の顔は前歯がかけて、かなり間抜け面になった…
「その顔のほうがよく似合っているぞ?
次の質問だ。お前らは赤酒の手下か?」
「赤酒の傘下だ!お願いだ!…許してくれ!」
「ライトニングあたりってところか?」
「パパぁ~うえぇーん!」
子供が泣き出した。
とても甲高く、耳障りだ。
小学二年生くらい…だろうな。
「僕~ごめんねぇ?」
「パパをいじめないでぇ~グスンおまえなんかしんぢゃええ」
「そっかぁ…ところで、君の姿はまるで豚のようだね? パパにたくさん愛情を注いでもらっているんだね?」
そっと、頭をなでてやったが…さらに大きな声で泣き叫んだ。
「でもね…君のその肥えた体は、命は…パパのおかげじゃないんだ…」
「パパぁ~」
「俺の恋人の命と、人間としての尊厳を奪って得た金のおかげだ…何かいう事はあるんじゃないのかな?」
「お前なんて、パパが!パパの仲間がぶっ殺すんだぁぁぁ」
あぁ…そうか…
ため息を吐きながらゆっくりと立ち上がり…片足を軽く上げる…
「やめてくれ! 息子は、息子だけは!」
「感謝の言葉も言えねぇのか!」
まだ、骨も柔らかい少年の頭は、ブーツとアスファルトの間に挟まれ、つぶれていく。
グチャっと、汚い音を立てながら、つぶれていく。
「ありがとうございます。だろ!? 私のこの肥えた体もあなた様の彼女様のおかげです!だろ?オイ! 何とか言えよ?このクソガキァ!」
「あ、あ、あああああ!」
「…あぁ…逝っちまったから、何も言えないか…」
男が泡を吹いて倒れていた…
「っは!」
男が次に目覚めたのは、暗い部屋の中だった。
手足を椅子に縛り付けられている。
「やぁ…パパ?」
「ヒぃ!」
失禁する男の前に、木でできた安物の机を置いた。
「ディナーだ…」
「ごめんなさい!ゆ、許して!」
俺は、そっと…彼の目の前に、盛りつけたステーキを置いた。
「食べろ。」
「も、もう許し…」
「食え。」
男は怯えた犬の食事のようにステーキを頬張る。
なぜ自分が肉を食わされているのか疑問に思い始めた頃、
「その肉は、お前の息子の肉だ…」
彼が放った言葉で、男は思わずステーキを吐き出す。
「おいおい吐くなよ…もったいねぇだろ?」
「リオのおかげでぶくぶく太れたんだ…感謝して食えよ?」
男は気が狂ったのか、
「ありがとうございます ありがとうございます」
と叫びながら食べ始める。
哀れだ。
男が食べ終わりぐったりしたころ…
テープレコーダーを置き、音声を流す。
「実はあのガキ、まだ生きてたんだ…」
録音された音声を大音量で流すと…部屋の外へと向かう…
「これから、最後の声を聞かせてやるよ」
そう言って、ドアを閉めた。
ドアの向こうから、耳障りな雑音が聞こえる。
「ぱぱあああああたぢげでええええあああああああ」
「あああああああああああああああああああああああああああ」
こんなもの、俺が食らった毒に比べれば…
なんともちっぽけなものだ。
次は誰からいこうか。
まだ相手はたくさんいる。
これは、俺の壊れた日々だ。
俺の死後の物語・・・