第四話 眠猫
真っ白な病室でなびくカーテン。
セキレイと眠猫隊長が眠猫舞の姿を見つめる。
「エマ…来てくれたのね?」
「母さん…」
治療の影響か、数か月前より老いている気がする。
二人の脳裏に、彼女の死が現実味を帯びていく。
セキレイにとっては、
親代わりの恩人を亡くし、
数少ない理解者が一人減ること…
眠猫隊長にとっては、
実の親が死んでしまう事…
覚悟はしているつもりだが…いくらしても足りない…
親しい人物の死など、幾らしても慣れないものだ。
慣れたはずの二人にとっても、彼女の姿を見れば見るほど…怖くなった。
「あなたは、よく頑張ったわ…」
か細い声を聞いて、少し涙をこぼした。
セキレイは、眠猫隊長の背中をゆっくりと優しくさすった。
「私が死んだら…エマを頼んだよ? セキ…」
「…はい…」
そういうと、彼女は眠りにつく…
医療麻薬がなければ、彼女はしゃべることもできない…
この病気は、それくらい恐ろしいのだ…
「ねえ…レイさん」
「…何?」
「母さんが死んだら…私…どうしよう…」
「…」
2027年 3月1日 江ノ島事件から一か月後…
CEO社長 三野 幸太郎 と共に眠猫部隊、そしてセキレイが呼ばれた。
「総理…急に呼び出して、どうかなさいましたか?」
「君たちはまだ、表舞台に出すわけにはいかんのだがね…今回の1件もあって、極秘裏に進めたい事があってね…」
「はあ…と言われますと?」
「君たちCEOは、政府公認のPMCであり、あくまでも民間企業であったが…本日より君たちを正式部隊として迎え入れたいと思う。」
「!」
前々から聞いていた…今年中に正式な特殊部隊として、CEOは新たな名前になると…
「SCSそれが君たちの新たな名前だ。」
「SCS…」
SCS、それは特殊犯罪対策隊 Special Crime Squadの頭文字をとったもの…
今年中には、制服のPOLICEと言う文字が、SCSに代わるらしい。
その日が楽しみである。
3月17日
SCS 新居住基地 ハク・セキレイの部屋。
街の景色を風呂場の窓から見つめながら、シャワーを浴びる彼女の姿がそこにある。
「よぉ…セキレイ…」
その声に、セキレイは驚き、近くに置いてあった拳銃を取り出す。
「今日は戦いに来たわけじゃない…久しぶりだな…」
窓の外を見ると…あの時戦った、男の背中がそこにある。
「お前…あの時の…メトロと名乗ったかな?」
「…あぁ…あんたら…ライトニングと戦っているんだってな…」
「…」
「知ってる情報を吐け…」
「…」
「大事な人がガンらしいな…」
「!」
「情報次第で、彼女の痛みを和らげてやる。」
眠猫隊長と舞さんとの記憶がフラッシュバックする。
「信じれるものか」
「そうか…」
そういうと男は煙のようにどこかに消えていった。