第六話 眠猫と犬甘の休日。
マリンホーム襲撃事件から数日後。
眠猫部隊全員に、数日間の休息が訪れた。
東京秋葉原にて、
「いらっしゃいませ! ご主人様!」
「…相変わらず、似合ってませんねぇ~たーいちょ~」
「…ウルセ」
そういうと、メイド服姿をした眠猫が、烏丸と吉蛇の前にオムライスを置く。
「んー、いたって普通のオムライスだな。」
「五月蠅い!」
「そういえば、犬甘は?」
烏丸がそう聞くと、眠猫が親指で向こうを刺す。
そこには、複数人のおじさんと元気良くしゃべる、犬甘の姿があった。
「あいつ、接客の才能あるな…」
「この店で、一番人気あるからね…」
「たいちょーとちがってねえ」
「吉蛇…お前、来月から減給ね♡」
「は?!」
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ニュースをお伝えします。
午前11:00頃。
ライトニングとみられる、ギャング40名が新桜町の銀行にて、銃を乱射するという事件が発生しました。
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「あぁ…またライトニングか…」
テレビに映る、ニュースを見た烏丸が、そう呟く。
「らいとにんぐぅ? 最新ゲーム機の名前か?」
「アホか、吉蛇! 赤酒商会の傘下についている、ギャングの名前だよ。」
「あの赤酒の傘下か、これから敵対することになりそうだな…」
「そうだな…」
――数時間後――
都内某所、CEO東京支部本部にて、
「…」
レイが何かを見つめる。
「どうしたの?」
「…」
「うーん、チョコ食べる?」
レイが頷くと、その女性はポーチからチョコレートを取り出し、手渡した。
レイはチョコをおいしそうに食べながら、空を見上げる。
チョコを渡した、女性の名前は眠猫 舞。
レイをCEOにスカウトした人物であり
CEO 東京支部、副社長である。
「寂しいんでしょ?」
「お散歩行く?」
頷く…
レイにとって、彼女は母親のような存在である。
しかし、彼女はもう長くはないのだ。
「…」
街の中を歩きながら、携帯で文字を打つ。
「どうしたの?」
「病気の状態は大丈夫なんですか?」
携帯から自動音声が流れた。
眠猫舞は上品な笑みを浮かべた。
「元気よ!」
レイの手をぎゅっと握る。
「娘を助けてくれたそうね。ありがとう。」
照れる。
とても照れる。
絵に描いたように赤面した。
「私は…その…指示に…従っただけで…」
「ウフフ、それでもうれしいの。」
再び照れた。
そんな散歩は、三十分ほどで終わる。
それ以上歩けば、彼女の体にとても負担がかかるからだ。
レイは怖かった。
彼女の死が怖いのだ。
何もなかった自分に唯一あるものは、母親のように慕っている彼女と、今いるこの居場所。
失うこと自体が怖いのだ。
気を紛らわすべく、トレーニング場に向かう。
ついた先には、CEOの兵士たちがトレーニングをしている。
とりあえず、ランニングでもしようと思ったレイは、ランニングマシンの元に近寄る。
「…」
軽くは知っていると、誰かが横に立つ。
犬の耳を付けた、少女。
犬甘だ。
「レイさん! 修行ですか?」
そう、犬甘が問いかける。
頷くと、犬甘は満面の笑みで、走り出す。
彼女は、体力ある。
ここに来た時も、
120キロの荷物を背負って、秋田から歩いてきた。
「レイさん! レイさん! 」
「?」
「レイさんの―――すごくいいですよね?」
「…」
その言葉は、とてもうれしかった。
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地獄の再来まで、残り三日。
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最近、都内で猟奇殺人が続いている。
犯人は、20代後半の男性。
身長 172㎝
右目に、眼帯をつけている。
武器は、拳銃。日本刀。
銃の種類。 MP5? C96?