第五話 ALL NEED(鬼)
狂っている。
私も、みんなも
正しいんだ。
アタシは、わたし。
貴方は、あなた
いっそ…暴れて死ぬしかないか。
山中の草むらにて、少女が一人、空を眺めていた。
夕方の幻に、取りつかれたようなその目は、どこか悲しそうだ。
「AA-4271’7」
そう、少女が呟いていると、何らかの気配を感じた。
咄嗟に、刀を抜いた。
草むらの中から、軽装備の特殊隊員が現れた。
女性であり、30代くらいの外見だ。
「あ あぁ まって まって…今回は、戦わないから!」
「…うぅ…」
少女にとって、そんなことは信用できない。
確かに警戒心を解こうとしているのか、わざわざ猫耳
をつけて現れている。
だが、どう頑張ったって無駄な努力は無駄な努力だ。
むしろいい歳した大人が恥ずかしくないんだろうか。
「あっ、そうだ!」
少女が呆れかけていた頃、
女はポーチから何かを取り出そうとする。
武器か!?咄嗟の判断で刀を握る手に力が入る。
「はい!」
「?」
取り出されたのは、ナイフ…では、なく。
銀の堤にくるまった、チョコレートだった。
「板チョコ食べて、落ち着いて?」
「…」
奪うように、手に取った。
空腹だったのか、包みを開け勢い良く食べた。
「おいしい?」
そう聞かれたので、少女がうなずく。
女隊員が自己紹介を始めた。
「僕の名前は、眠猫…舞…君は?」
少女には、名前なんかない。
「…」
「もしかして、ないの?」
頷く…
「そっか、じゃあ僕がつけてあげる。」
「君の名前は…レイだ。」
「レイさん?」
だれかが私を呼んでいる。
ゆっくり、目を開けるとそこには、
眠猫隊長がいた。
人前で話すのが苦手な私は、起き上がって相手の顔を見つめる。
「本土に付きました。」
あぁ…もう着いたのか、どうやら疲れて眠っていたようだ。
あの一件は、いったい何だったのか、本土についてからわかった。
アメリカの元グリーンベレー隊員たちが結成してできた。
テロ組織だったことが分かった、アメリカで、数件のテロ行為に及んでおり、日本にやってきた理由は、日本の領土を奪い彼らの国を気づくためだったらしい。
私の読みは、外れた。
アメリカの自作自演かと思った。
しかし、この事件は、序章に過ぎない。
マリンホームのあの一件は、これからの戦いの序章だ。
これは、国内で起きる。
戦後最大最悪の小さな戦争の話だ。