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94 首都に到着

 翌日の昼過ぎ、適当に飯屋で昼ご飯を食べてからギルドへとやってきた。

 受付嬢さんに声をかけると、しばらく待っているように言われ、俺たちは受付の邪魔にならない場所まで移動して待った。


 数分ほどしたら奥の部屋からギルドマスターがやってきた。


「おう、来たか。裏手に馬車があるから行くぞ」

「はい」

「ああ、ルカ、ミハエル。お前ら御者しろよ」


 どうやらまたも俺たちは御者役になるようだ。


「わかりました」


 ギルドの裏手には前回も使ったような幌馬車があり、フィーネたちとギルドマスターは中へ、俺とミハエルは御者席についた。

 そのまま中へ声をかける。


「ギルドマスター、俺首都までの道知りませんよ」

「とりあえず北門から出て道なりに進めばいい」

「大雑把ですね。わかりました」


 ギルドマスターの適当な言い方にヤレヤレと苦笑しつつまずは俺が馬車を操作することにした。

 とりあえずは人が減るまでは馬車操作術の魔法をかけておく。

 手綱を軽くはじいて馬に移動を促し、北門へ向けて移動をはじめた。


 基本的に首都までは町を経由していく予定ではあるが、道中野営になる箇所もあるらしい。

 今回は地図もないので俺はまったく道を知らないのだが、前世ほど複雑な道は存在しないので、まぁ大体道なりに行っていれば問題はないらしく、分かれ道もあるにはあるのだが、そのときはギルドマスターに聞けばいいとこのことだった。

 ――ちなみにギルドマスターは御者はしてくれないそうだ。試験の一環だとなんだか理不尽な言いつけをされている気がしなくともない。


 こうしてシュルプの街を出て道なりに進み始めた。

 シュルプを出てしばらく、のんびりとした時間が流れる。


「そういやよ」

「うん?」

「俺らって暇がありゃダンジョン潜ってるよな」

「あーそうだな。別に酒も飲まないしなぁ。することが他にないともいうな」


 そう言って俺は思わず苦笑する。


「そーなんだよなー。それになんつーか、ダンジョン潜って体動かしてる方が楽しいっつーか」


 苦笑しつつミハエルはそう言った。


「それはあるな。この間ソロしたけど、あれはあれで楽しかった。俺は普段魔法だから、前衛として動くのは新鮮で発見があるよ」

「俺も魔法撃てればなぁ。とはいっても俺の場合は直接ぶったたく方が気持ちいいんだけどな」


 そんななんでもない会話をしつつ馬車が進んでいく。


 それから二週間と少し。

 昼になる少し前、やっと首都が見えてきた。


「お? あれが首都か。すげぇな」


 林を抜けた先、ミハエルが見ている方向にはまだ距離はあるものの、大きな壁が(そび)え立っていた。


「あれが首都か……。でかいな」


 俺がそう呟くと馬車内と区切っている布が開かれ、中からギルドマスターが顔を出した。


「でかいだろ。あれがこの国、リンデン王国の首都、ホルシュタインだ」


 巨大な壁の奥には城の尖塔が見えている。

 ホルシュタインは、国王の住む城があり、そして多くの貴族が住んでいる場所で、さらには各地からあらゆる物が集まる都市だ。

 シュルプも大きい街だと思っていたが、やはり首都となると違う。


「首都についたら宿をとるが、パーティまでは一日余裕があるから、ゆっくり観光しておけ」

「ギルドマスターはどうするんですか?」

「俺は首都の冒険者ギルドに挨拶と、今回の試験する貴族のとこに挨拶だとか色々だな。まぁ俺は別に首都は初めてってわけでもないから、お前らは楽しんでくるといい」

「そうですか。ありがとうございます」

「おう」


 馬車を進めると、どんどんと大きな壁が近づいてきた。

 シュルプの街よりもさらに高い壁である。

 シュルプの街の壁は大体五メートルくらいだがその倍はある気がする。

 壁の上には人が歩いているので厚さはきっと二メートルくらいはあるのだろう。

 どうやってこんな壁を作ったのか、本当に不思議だ。

 一体どれだけの時間がかかったんだろうか。


 首都の入り口まではまだ距離があるが、すでにズラリと馬車や人が門への道に並んでいる。

 シュルプも混雑してる時間帯というのはあるが、せいぜい数台が待っているくらいで、このように何十台も並んでいるのを見るのは初めてだ。


「すげぇ馬車と人の数だな」

「ほんとだな。門につくまで数時間かかりそうだ」

「だな」


 そんな会話をしていると、御者台と馬車内と繋がる布が少し開き、エルナが顔を覗かせた。

 ちょうど列が少し進んだので、俺は馬車の操作にうつり、ミハエルがエルナに対応した。


「わぁ、ほんとですね。すごく人がたくさんです」

「おう。エルナも首都は初めてか?」

「はいです。私のおうちはもっと田舎の方でしたから」

「そうか。まぁ、観光する時間はあるらしいから宿についたらゆっくり観光しようぜ」

「はい!」


 嬉しそうに笑みを浮かべるエルナの頭をミハエルがポンポンと叩いて言った。


「ほら、あぶねぇから中はいっとけ」

「はい」


 ちょっと頬を赤くしてエルナは中に引っ込んだ。

 ミハエルは本当に自然とエルナの頭を撫でるな。

 恐ろしいやつだ……。


 そうして二時間ほどしてやっと列が進み、俺たちの番となった。

 門にいる警備兵に俺とミハエルは冒険者タグを見せる。

 別の兵士が馬車内にいるギルドマスターたちにも身分証の提示を求めていた。


 軽く馬車内のチェックをされたあと、俺たちは門の通過を許可された。


「ようこそ、ホルシュタインへ」


 警備兵の人の言葉に俺は笑顔を浮かべてお礼を言った。


「ありがとうございます」


 俺たちはやっと門をくぐり、首都へと足を踏み入れた。

 ここはちょうどホルシュタインの南門らしい。

 ギルドマスターの指示で馬車を繰り、少し高級そうな宿屋へとついた。

 先にギルドマスターが下りて、宿屋に入り、しばらくして外に出てきたギルドマスターに促されて俺たちは馬車を宿屋の人に任せて、中へと入る。


「男女で部屋は分けてとっておいた。これがお前らの部屋の鍵で、こっちが嬢ちゃんたちの部屋だ。俺は別で部屋をとってるから、お前らは気にせず自由に過ごせばいい。ただ、明後日は昼過ぎにはここを出て屋敷に行くから遅れるなよ。そのときは行く前からちゃんと正装に着替えておくこと。用事がありゃここの受付に伝言残しとくから寝る前に確認だけしとけ」

「はい。分かりました」

「よし、そんじゃ俺は挨拶周りとかしてくるから、次は明後日の昼の三時にな」


 そう言ってギルドマスターは片手をあげると宿屋を出ていった。

 どうやらギルドマスターとはここで一旦別れることになるようだ。


「じゃあ、一旦部屋へ行ってから少し観光がてら外に出てみようか?」

「そうね」

「はいです」

「おう」


 そうして俺たちは一度宿屋のギルドマスターがとってくれた部屋へと移動した。

 従業員が案内を申し出たがすぐに部屋を出るので礼を言ってから断り、俺たちは二階に上がって、鍵についた木札に記された部屋へと移動する。


 一旦フィーネとエルナと別れ、俺とミハエルは部屋へと入った。

 部屋の中はベッドが二つと、ソファーとテーブルがあり、トイレと風呂と洗面所もあるようだ。

 中々に高級な部屋のようだ。


「結構広いな」


 そう言って内部の確認を終えた俺とミハエルはそのまま部屋を出た。

 少し遅れてフィーネたちも部屋から出てきたので、一緒にホルシュタインの観光に繰り出した。


 出がけに宿屋の従業員に、ある程度都市内の情報を聞いたので、それをもとに巡る。

 最初に向かったのは屋台通りである。

 昼飯がまだだったので、そこで昼をとったあと屋台通りからほど近い市場へ向かう予定なのだ。


 今回の旅で食材が減ったので補充するのと、あらゆる物が集まる地なので、珍しい食材などがないか見る為でもある。

 武器防具屋より、まずは食材というのが冒険者としてどうだろうかと思いはするが、ご飯は大事なのだ。


 しばらく歩くと屋台がずらっと並ぶ通りへやってきた。

 シュルプの屋台広場よりも多いのではないだろうか。

 色々な料理が用意されていて、様々な匂いがしてくる。

 昼飯がまだなので俺の腹の虫が鳴き声をあげた。


 とはいえ、味付けがそこまで豊ではないので、シュルプの屋台とそう変わり映えはしない。

 それでも香辛料などがそこそこあるようで刺激的な匂いも時々する。

 適当に購入して、行儀悪くはあるが食べ歩きしながら市場へと向かう。


 ここからそう遠くなかったのですぐに市場へとついた。

 市場には驚くほど様々な食材があった。

 シュルプでは見たことのない食材もある。


 特にシュルプではあまり見ない果物もあったので、味見をして甘くておいしいものはそれなりに買っておいた。

 やはり食後のデザートに果物は必要だろう。

 これまではリンゴやオレンジだったが、ナシやブドウも追加である。


 他にも前世では見たことのない野菜もあった。

 聞いた感じでは菜の花っぽい感じだ。

 おひたしにするのもよさそうだ。

 他にもほうれん草などがあったし、ゴボウなんかもあった。


 葉野菜はあまり見ないので少し嬉しい。

 せっかくなのであるだけ買っておいた。

 店主さんには驚かれたが大変喜ばれたので良しとしよう。


 市場を見て回るだけでも楽しかったが、いつのまにか夕方になったので先ほどの店主さんに聞いたおいしいと評判の飯屋へ行くことにした。


 そこそこ混んではいたが少し待っただけですぐに席につくことができた。

 この店のお勧めを頼み、俺たちは楽しみに待つことになった。


 しばらく待って出てきたのは野菜と肉がたくさん入ったビーフシチューだった。

 ただ少し酸味が強い気はするし、大根が入っていたのでちょっと違和感がある。

 それでもこの世界ではかなりおいしい部類に入るだろう。


 食事を楽しんだ俺たちはその後、宿屋へ戻って俺たちの部屋で今日買い込んだ果物を食べ、少し会話してから解散した。


 明日も観光予定である。

お読みいただきありがとうございます。

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闇の世界の住人達

前作になります。まだ連載中ですが、すでに最後まで書き終えています。

もし良かったら↑のリンクから見てみて下さい。

小説家になろう 勝手にランキング
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