83 ミスリルのアクセサリー
本日二話更新しています。82もあるのでご注意ください。
「さて、それじゃ行こうか」
「おう。ああ、そういやその銀細工師の人ってマルセルの彼女のお父さんだっけ?」
「そうそう。娘の彼氏の友達だからって快く引き受けてくれたんだ」
「そうか。マルセルにあとで礼言わねぇとな」
「そうだな」
お礼しにいって、マルセルに揶揄われるといい! 恋愛に関しては大先輩なマルセルにな……。
そんな暗い思いを抱きつつ、銀細工師さんの店についた。
「おはようございます」
「ああ、君か。いらっしゃい。できてるよ」
銀細工師さんがニコリと微笑む。
そしてチラリとミハエルを見た。
「彼は?」
「あ、ミハエルって言いまして、頼んでたイヤリングの方が彼の分なんです」
「ああ、なるほど。君一人で女性二人にあげるのかと思っていたよ。ははは」
実際この宝寿祭では、お世話になってる女性にプレゼントとなっているが、実際は彼女や奥さんにあげるというのが多い。
俺はあくまでもパーティメンバーに日頃の感謝を籠めてではあるが!
銀細工師さんに俺は苦笑いするしかない。
「さて、それじゃ持ってくるから待ってて」
「はい」
こうして銀細工師さんが奥へ行きしばらくして戻ってきた。
綺麗な箱を二つ持って戻ってきた。
「お待たせ」
そう言って箱を開けて机の上においた。
「こっちがピアスで、こっちがイヤリング。きっと君たちの彼女も喜んでくれる出来だと思うよ」
そう言ってニコリと微笑む。
違います! 彼女ではないです! 気になってはいますが!
チラリとミハエルを見ると、俺の視線を避けるようにミハエルがそっぽむいた。
自分にも被弾したが、ミハエルも被弾したようなのでヨシとする。
「ありがとうございます。ミハエルほら、すごく可愛くできてるぞ。きっとエルナは喜ぶはずだ」
「ああ、フィーネもな」
「ぐ」
やはり攻撃しても簡単にやり返される。不毛だ。
「ははは。確かに可愛く作れたと自信はあるが、結局は女の子は好きな人や気になる人に貰うこと自体が重要なんだよ。だから、あとは君たち次第だ。頑張れよ」
ぐぬぬ。
俺もミハエルも少し頬が赤くなる。
宝寿祭まであと二週間、俺とミハエルはそれぞれ自分でアクセサリーを保管することにした。
銀細工師さんの店を出た俺に、ミハエルが言った。
「ルカ、お前分かってて俺を連れてきただろ」
「俺だけ恥ずかしい思いをするのは不平等だ!」
「お前が言ったんじゃねぇか……」
「ミハエルも納得したんだから一緒に恥ずかしくなるべきだろ」
「はぁ。まぁ俺が任せたんだからそうだけどさ。でも結局お前も被弾してるじゃねぇか」
「死なばもろとも、一蓮托生だ」
「なんだそれ」
「俺も恥ずかしい思いをするが、ミハエルも一緒にって意味だよ」
「へーへー。俺も恥ずかしい思いしましたよ」
「今回の一回だけなんだからいいじゃないか。俺は前回も恥ずかしい思いしたんだからな」
「悪かったって」
そんな言い合いをしつつ、マルセルのところへ行くことになった。
ミハエルが、マルセルにお礼を言うためだ。
店に着くとちょうどマルセルが配達から戻ったところだった。
「あ、ルカ、ミハエル! どうしたの?」
「やあ、マルセル」
「よお、マルセル。いや、ちっと礼を言いにきたんだよ」
「お礼?」
なんの礼か分からないらしく、マルセルは首を傾げた。
「その、ほら、銀細工師、ルカに紹介してくれただろ。俺も一緒に頼んでてよ。まぁ、その礼だ」
「ああ! ううん、いいよ! いいのできた?」
「あー、まぁ、うん」
「? 微妙だった……?」
ミハエルの歯切れが悪かったためにマルセルがだめだったのかと不安気に眉を下げる。
「いや、ちげぇよ。すごいいい出来だったよ。そのまぁ、なんだ……」
慌てて否定しつつも、恥ずかしいのだろう、ミハエルはちょっと頬を赤くしてもごもごとしてしまう。
「そっか! 良かった! あ、そっか。恥ずかしかった? 気にしなくていいのに!」
ニコニコとそう言うマルセルにミハエルは、ぐぬぬという顔になっていた。
これですよ、これです。
俺にも精神的ダメージは来ているがミハエルには恋愛上級者のマルセルの言葉に被弾してもらいたかったのだ。
「ミハエルがあげる子は、この間一緒にいた可愛い子?」
「ぐぬ……。まぁ、そう、だな……」
「そっか。うまくいくといいね!」
「いや、別にそういうつもりじゃ……」
「大丈夫大丈夫! 言わないから!」
「お、おう……」
「ね、ルカはあの綺麗な子にあげるんでしょ?」
まさかの俺にまたくるとは思わなかった。
「ぐ、あ、ああ」
「ふふ、二人とも頑張ってね!」
俺もミハエルもしどろもどろになる。
「いや、だから、そういうつもりじゃ……」
「俺もそういうつもりじゃ……」
「ふぅん?」
だめだ、ミハエルも俺と同じ気持ちを味わえと思ったけど、そんな甘い相手じゃなかった。
マルセルさんやめてください。すいませんでした。
マルセルはニコニコと笑っているのに、なぜかこう高みから見下ろされている気持ちになる。
被害妄想だけど、だめだ。勝てない。
「ふふ、今はそういうことにしとくね! じゃあ僕、次の配達あるから、また遊びにきてね!」
「ああ……」
「おう……」
そうしてマルセルはニコニコしながら楽しそうに店の奥に消えていった。
俺とミハエルは店をあとにした。
「マルセル、あんなに強かったか……?」
「女の子関係はもう何十歩も俺たちの先を歩く先輩だからな……」
「それもそうか……。ものすごい精神ダメージ受けたな……」
「ああ。今ものすごく布団に潜り込んで引きこもりたい」
「そうだな、俺も引きこもりてぇわ……」
俺はミハエルと目を合わせ苦笑した。
「さて、帰ろうか」
「おう」
こうして俺たちはギーレンの宿屋へと戻った。
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