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71 フォレストウルフ

二話更新しています。70もあるのでお気を付けください。

 あれから二週間ほどが経ち、今は黒い森の近くにある町へ着いている。

 町へついた俺たちは一日だけ宿に泊まって疲れをとったあと、黒い森へ向けて移動を開始した。


 近いと言っても歩いて一日の距離があるので黒い森につく前に一度野営をしなければならない。

 結局最初の野営からずっと夜ご飯は俺担当になっている。

 みんなおいしいと言ってくれるので作り甲斐はあるのだが、毎日違うレシピを考えるのが実は結構大変だ。

 世の奥様方は実に凄いと思う。

 調味料がほとんどないのに、工夫をして味を変えているのだから。


 まぁそれでも豚汁以降はフィーネやエルナが料理を覚えたいと手伝ってくれたので、レシピを考えるのは大変だけど、料理を作ること自体は実に楽しかった。

 さて、今日は何をしようか? と、俺が今日の晩御飯のレシピを考えているとミハエルが話しかけてきた。


「なー、ルカ」

「ん?」

「今日の晩飯さ、ほら、初日に作ったトンジルだっけ? 俺あれが食いてぇ」

「俺は別にいいけど、みんなはかまわないか?」

「私はいいわよ。というか、私も食べたいわ」

「はい! 私も食べたいので嬉しいです!」

「おう、あれか。ありゃ美味かったな。俺もいいぞ」

「じゃあ、今日は豚汁にしようか」

「よっしゃ」


 ミハエルの喜びように少しだけ苦笑する。

 でもやっぱり食べたいとか言われると嬉しいものだ。


「ルカ、今回も手伝わせてね」


 そう言って笑うフィーネに俺は笑顔で頷く。

 もう薄切り肉も簡単に作れるのでここ最近は町や村によるたびに少なくなった野菜や肉を購入している。

 その材料費に関しては全員が出資してくれている。

 ――ちなみにギルドマスターは小瓶ではあるが、俺からマヨネーズだけ購入している。

 かなり気に入ったようだ。

 当然取り過ぎはよくないので消費が早い場合は二度と売らないとは伝えてあるが。


 そうしてその日は野営をして翌日を待った。

 目が覚めるとふわりと優しい味噌の匂いがした。

 どうやらフィーネたちが朝ご飯を作ってくれているようだ。

 調味料は彼女たちも少し持っているのでそれで作ったのだろう。


「おはよう」


 俺が声をかけると、フィーネとエルナがこちらを向いて笑みを浮かべた。


「おはよう、ルカ」

「おはようございます」

「もうすぐ朝ご飯ができるわよ」

「ああ、ありがとう」


 俺が起きだしたと同時に、ミハエルも目が覚めたようだ。

 大きく欠伸をしながら、アイテムボックスから俺が作った浄化魔法を付与してある石を取り出している。

 実に手慣れた動きだ。

 俺も自分に浄化魔法をかけて寝床の処理をする。


 ギルドマスターは少し前に起きてトイレに行っているようだ。

 実はこの試験の旅をはじめた初日の晩御飯を食べている時に、旅は楽しいけどお風呂に入れないのが辛いわねと、フィーネが零していたので、それならばと俺はフィーネたちに説明して浄化魔法を付与した石を渡したのだ。

 大変喜ばれたので俺としては満足している。

 フィーネたちにはなくなったらまた渡すから気にせず使っていいと伝えてある。


 まぁその時にギルドマスターがフィーネたちもアイテムボックスを持っているのを目ざとく見つけ、くれくれうるさいので翌日に浄化魔法を付与した石と共に進呈している。

 ギルドマスターのは適当な指輪型のアイテムボックスだ。

 それでも喜んでいたのでよしとしよう。


 実際こうして試験もギルドマスターが監督官としてついてきてくれるので俺たちは自由にできているという部分はあるのだ。



「よし、それじゃあそろそろ行くか、嬢ちゃんたち準備はいいか?」

「はい、大丈夫です」

「俺は基本的にここから先は見ているだけだ、何も言わない。ルカとミハエルも黙って見てろよ」

「分かってますよ」

「あいよ」

「危ない時はこいつらがどうせ飛び出すと思うが、俺も助けるからそこは安心しろ」

「はい」

「はい!」


 俺とミハエルはギルドマスターの言葉に苦笑するしかなかった。

 俺たちはそのためについてきてると言っても過言ではないのだ。

 なんせ、俺たちの時はSランクモンスターが出たのだから。

 ダンジョンの様に、ある意味管理された場所ではないので、いつだってどこだってSランクが出てもおかしくはない。


 こうしてフィーネを先頭に俺たちは黒い森へ向かって移動をはじめた。

 俺とミハエルとギルドマスターはいざという時のために通話魔法を繋いでいる。


『しっかしなんだな、これ。頭の中で会話っていうのも変な感じだな』

『そうですね。慣れるまでは考え事すら駄々洩れになりますよ』

『はん、なるほどな。――しかし、この嬢ちゃんはいいな。森の中でも苦もなく歩いている。それにあちこちに神経張ってるな。こっちのお嬢ちゃんはちょっと不慣れか』


 フィーネたちに関するこの言葉はきっと心の声だな。スルーしておこう。


『お、フォレストウルフがいるな、さて、嬢ちゃんたちはどう動く?』


 俺の視界には何も見えないが、マップには確かに赤い光点がある。

 さすがギルドマスターだな、見えてるのか。

 チラリとミハエルを見ると、ミハエルも何かを目で追っている。

 どうやらミハエルにも見えているようだ。うぬぬ、俺は少しマップに頼り過ぎだな。


 ギルドマスターの心の声のあと、少ししてフィーネの動きが変わった。

 どうやら気づいたようだ。

 エルナに何かを耳打ちしている。

 エルナは頷き、フィーネが先行する形で動きはじめた。


 フィーネはジグザグに動きながら木の上に向けて弓を放っている。

 弓を撃つたびに木の上から狼が落ちてくる。

 狼は大体が眉間を貫かれて死んでいる。

 胴体に当たった狼は落ちたところをエルナのアースバレットが狙い撃ちしている。


 フォレストウルフに何もさせることなく、フィーネたちは見事に全てを倒し終えた。


『ほー、見事なもんだな。なるほど、嬢ちゃんが前衛であり全ての動きをフォローしているわけか。お嬢ちゃんは最近冒険者なったばかりだったな。そのカバーもしているわけか。だがまぁ、お嬢ちゃんの方も魔法の狙いは見事だ。フォレストウルフでなければ悪くない』


 ギルドマスターの心の声が駄々洩れで聞こえてくる。


『お、坊主どもと違って、この嬢ちゃんはしっかりしてるな』


 むむっと思ってフィーネを見ると、なるほど確かに俺たちよりもちゃんとしていた。

 フィーネはさっとフォレストウルフを集めると討伐証明部位の切り取り、そしてさらっと解体もしている。

 実に手際がいい。

 最後の一匹はエルナに解体を教えている。


 あのフォレストウルフは胴体に弓と魔法が当たって腹に風穴があいてるやつだ。

 あれだと毛皮の状態が悪いので、解体の練習にはちょうどいいのだろう。


 フィーネは解体を教えつつも、フォレストウルフに魔法を撃つ際は頭部を狙うようにと教えている。

 まぁそうだろう。

 フォレストウルフの価値は毛皮なのだから。

 矢傷程度ならそれほどマイナスにはならないが、魔法で穴を開けてしまうと価値が大きく下がる。


 その後も順調にフィーネたちはフォレストウルフの討伐をすすめた。

 時々、ドキッとする場面はあったが、フィーネが前衛として見事弓刃で対応していたのでエルナには危険はなかった。

 しかしこうなるとやはりエルナにも何か最低限の身を守れる武器なりあるといいかもしれない。

 だがエルナは武器の扱いには慣れていないし、下手に振り回せば自身をも傷つける可能性もある。

 となると盾がいいだろうか。

 盾で身を守りつつ、前衛が助けにくるのを待つか、魔法で攻撃をする。

 これがいいだろう。


 そうなるとどんな盾がいいか。重いのはエルナが取り回しができないので意味がない。

 かといって軽いと強度が下がる。

 俺が想像できるのはライオットシールドくらいだ。

 だが、そんなものはこの世界では作っても使えない。まぁ、魔法でカバーするのがいいだろう。

 木と皮の盾に薄い鉄を張り付け、どうせなら綺麗な模様をいれよう。


 あとはそれに魔法でコーティングすればいいな。

 とはいえ、これは新しい魔法を作らないといけない。


 そんなことを考えつつも、俺もマップに頼らずに敵を見つける訓練を続ける。

 フィーネたちがノルマである三十匹目を倒したあたりで俺もようやく少し見つけれるようになった。

 ミハエルたちが見つける数秒後ではあるが……。


 ここ最近ずっとマップに頼っていたので反省である。


『ふむ、見事だな。文句なしに合格だ。しかし嬢ちゃんはいいが、お嬢ちゃんは嬢ちゃんのおかげで及第点というところだな』


 俺はギルドマスターの駄々洩れに、そうだろうな、と思う。

 フィーネは二年も一人で冒険者をしてきて、エルナはつい数日前に冒険者になったのだから。


 フィーネたちが最後のフォレストウルフの解体を終えた。


「よし、お疲れさん。嬢ちゃんたち」

「はい、お疲れ様です」

「その死体埋めたら野営地に戻るとするか」

「はい!」


 意外とフォレストウルフの分布が広かったのと、俺のマップなしだったので探索に時間がかかり、今はもう昼の三時過ぎだ。

 今回は特に何もなくて良かったと思っている。

 そうそうあんな風にSランクがあちこちにいられても困るけどな。


 こうして何事もなくフィーネたちのCランク試験は終わった。

 黒い森からの帰り道、ギルドマスターはエルナに対して、あれこれと色々レクチャーをしていた。

 エルナも真剣にそれを聞いて学ぼうとしている。


 こうして俺たちは再び馬車でシュルプの街へと帰っていった。

 帰り道も特に何かトラブルもなかった。


 ただ、俺が少し嬉しかったのは、行き道で俺が作った料理の数々をフィーネたちだけで再度作ってごちそうしてくれたことだ。

 やはり自分で作るよりも、母が作るよりも、可愛い女の子に作ってもらうと物凄くおいしく感じる。

 男というのは単純なのだ。実に幸せな帰り道だったといえるだろう。



お読みいただきありがとうございます。

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闇の世界の住人達

前作になります。まだ連載中ですが、すでに最後まで書き終えています。

もし良かったら↑のリンクから見てみて下さい。

小説家になろう 勝手にランキング
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