7 まさかそんな大事になるなんて
なんだ!?
俺は耳元でバチっという音がして驚いて起きた。
驚きついでに更に驚いた。
魔素が、すっげぇ溢れかえりそうなんですけどおおおおおお?
慌てて魔素をかき集めて押さえ込む。
なんだ? なんでだ? 箱に詰めたやつが出てきたのか!?
急いで箱を調べるが、中には詰め込んだ魔素が入っていた。
てことはまた増えたの!? おいまじかよ。
とにかく、あれだ。詰め込もう。そっから考えればいい。
俺は一つ残らず箱の中に魔素を放り込んだ。
よし、これでひとまず大丈夫だな……。
あれかな……昨日ちょろっと残した魔素が原因だろうか……。
分からんが、とりあえず全部放り込んでるから、後は暫く様子を見るしかないな。
しかし途中で起きたから眠い。
まぁ魔素は全部しまったし、大丈夫、だよな? うん、きっと大丈夫。寝よう! 眠い!
俺は眠さに負けて目を閉じた。
どのくらい寝たのか、何かがパチっとはじける音がして俺は目が覚めた。
ああ、よく寝た……って、ぇぇええええええ!! なんでぇえええ!
魔素が溢れそうううううううううう!
俺は大慌ててで抑え込んで箱に放り込んだ。
これはまずくないか? 原因はなんだ? なんで魔素が増え続ける?
いや、魔素が多いのはいい事だけどさ、限度っつーもんがあるじゃん?
さて困ったぞ。とりあえず暫くは眠くないから観察するしかないな……。
目が覚めてから三十分が経った。
俺の体内にはどこから湧いたのか、魔素が生まれていた。
しかもそこそこな量なんです、これが。
うーん。これ、寝てる間に絶対いつかやらかすぞ。
自分の魔素暴発で爆死とか超嫌なんですけど……。
とにかく箱の改良だ。吸引力に定評のあるアレを真似るか……。
えーと、箱の上部に漏斗みたいなのをつけて、魔素だけを吸引するようにして…………。
おお、完璧じゃん! さすが吸引力に定評のあるアレを真似ただけはある! いや、形全然違うけどさ。
俺の体内にある吸引箱は見事魔素を吸い込んでいる。
新たに生まれた魔素もすぐに吸い込まれた。
よし、無事解決だな!
さて、そうなると暇だな。腹はまだ減ってないし、尿意もまだない。
となると、そうだな。せっかくだし魔法の研究としゃれこもう。
さすがに家の中でファイアボールは危険だしな、ヒールは……ケガしてないと意味なさそうだし、氷の粒も水浸しにしそうだし……、あ、あれにするか。
俺は早速実践する事にした。
まずはやっぱイメージだよな。――光、ライト、明るい、仕組み――仕組みはわからんな!
とにかく、電球だ、電気の明かりのイメージ。
それを少量の魔素に混ぜ込んで、それを指先から放つ!
ほいさー! ライトオオオ!
俺の指先から放たれた魔素は爆発する事なく、俺のイメージ通りの明るい光の玉になった。
おお! キタコレ! 俺、魔法使ってるんですけどおおお! すげーー!
まじで感動……。
次に俺はその浮いてる光の玉を動かしてみようとした。
指を動かすと、俺のイメージ通りに光の玉が動く。超便利!
しかしこれ、光の玉いつ消えるんだろ? どのくらい持つのかね。
ていうか、明かりを電気みたいに消せないのかな。
こう、スイッチを押す感覚で見えない指で玉を押せば……お、消えた。まじで便利じゃね?
明かりを消した後の玉はあれだな、濁った白色? みたいな、まぁ電気ついてない電球の色だな。
満足した俺はむふーと鼻息荒くなってしまう。
そうだ、ママに見せよう! びっくりするかな!
「あー! まんま! ま!」
「はいはい、どうしたのー? お腹空いたのー?」
「まんま! あ!」
俺は空中に浮いてる玉を指さした。
マリーが顔を上げてそれを見てビックリしている。
俺は鼻の穴を広げてむふーと鼻息を出し、そして指でぐるぐる動かして、――最後に見えない指で玉を押して光をつけた。
「きゃっ眩しい!」
マリーの声に俺は慌てて光を消す。
そうか、この薄暗い家がデフォだから電気の明るさは眩しすぎるのか。
マリーは暫くして目を開け恐る恐る玉を見た。
そろそろと俺を抱き上げると、玉を警戒するようにそろそろと動き、部屋から出ると慌てて外へ出た。
俺は意味が分からず首を捻る。
しかしマリーは俺を抱えたままどこかに走って行く。
おー、これはこれで面白いな。楽しくなった俺はキャッキャと声をあげた。
暫く走ったマリーが向かった先にはカンカンと鉄を打つような音がする。
おお、これはもしや鍛冶場という物ではないのか!?
しかしこんな所に何の用があるんだろうか。
そう思っていると鍛冶場の中から野太い男の怒鳴り声がした。
「おいこら! 何やってんだ! そうじゃねぇって教えただろうが!」
うおーこえええ。でもこの声、もしやパパか?
マリーは恐れる事なく鍛冶場の中へ入って行く。
「ウード!」
鍛冶場の中で誰かを怒鳴っていてウードがこちらを振り向いた。
おっそろしい顔をしていたのに、マリーを見た途端驚きとても優しい顔になった。
――物凄い変化の仕方で俺が驚く。
「マリー。どうしたんだ?」
「ウード、邪魔してごめんなさい。でも家に変な物があったの。怖くて、助けて」
「変な物だと!? マリー、怪我はないか? 大丈夫か?」
変な物? そんな物あったか? え? もしかして俺の玉か? まさかな……
「ええ、怪我はないわ。でも、ルカの部屋にあったの。丸い玉みたいなもので、白っぽい色をしていて、急に動き回って、すごい光を放ったの……」
それ、俺ですうううううう! 俺の光の玉ですうううううう! え? なんで? ここは魔法の世界でしょ!?
ライトの魔法とか普通にあるんじゃないの??
俺が混乱してる間に、ウードはマリーと共に家へ戻る事になった。
家についてマリーに外で待ってろと告げ、ウードは中へ入っていった。
俺はもう陸に上がったマグロのようにじっとしているしかなかった。
まさかこんな大事になるなんて思いもしなかったんだよ。
暫くしてウードが家から出て来た。
「マリー、部屋には何もなかった。もう消えたのかもしれん」
「そう、良かったわ。でも、なんだったのかしら……怖い」
「とにかく、今日は俺も一緒にいよう。仕事はもうほとんど終わっていたから大丈夫だ」
「ありがとう、ウード……」
そうして俺とマリーとウードは家へ入って行った。
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